【金子敦子さん連載】vol.11 めざせ! 憧れの木曽駒ヶ岳【前編】
山登りの楽しさってなんだろう?
頂上なんて目指さなくていいのです。
自然のなかで深呼吸するだけ、
ただ歩くだけ。
そのなんと豊かなこと!
さあ、山へ行こう!
金子敦子さんとともにお届けする連載、「大人のソトアソビ。」。今回は、vol.5でご紹介した、金子さんが登山を始めるきっかけになった本『山登りはじめました』(鈴木とも子著/角川メディアファクトリー刊)を読んで以来、ずっと憧れていたという木曽駒ヶ岳へ。長野県上松町と木曽町、宮田町の境に位置する山で、中央アルプス(木曽山脈)の最高峰です。とはいえ私たちが歩くのは、ロープウェイを利用して千畳敷から山頂へ向かう、初心者向けの往復4時間コース。 これまでより高度が高いうえ、夏山シーズンピークのなので、ゆとりを持って計画を立てて、ゆっくりペースで歩くことにしました。
木曽駒ヶ岳(標高2956m)
難易度☆☆☆★★
今回の行程
【1日目】
15:05 バスタ新宿発
18:35 「駒ヶ根IC」バス停着
18:45 明治亭 駒ヶ根本店
20:45 駒ヶ根ユースホステル
【 2日目】
05:45 駒ヶ根ユースホステル出発
06:12 伊那バス「駒が池」バス停発
06:45 伊那バス「しらび平」バス停着
07:00 中央アルプス駒ケ岳ロープウェイ「しらび平」駅発
07:07 中央アルプス駒ケ岳ロープウェイ「千畳敷」駅着
08:00 朝食
09:30 乗越浄土
10:00 中岳山頂
11:00 木曽駒ヶ岳山頂
11:15 下山開始
12:30 宝剣山荘で昼食
13:00 下山開始
14:30 ホテル千畳敷
15:00 中央アルプス駒ケ岳ロープウェイ「千畳敷」駅発
15:07 中央アルプス駒ケ岳ロープウェイ「しらび平」駅到着
15:20 伊那バス「しらび平」バス停発
16:06 伊那バス「すずらん通り」バス停着
16:30 Sink
18:00 「駒ヶ根バスターミナル」発
21:35 バスタ新宿着
本日の集合場所は、バスタ新宿。長野までは高速バスで向かいます。高速バスに乗るのは、vol.3の金時山の回で箱根に行ったとき以来。「念願だった中央アルプス一泊二日の山旅。楽しみすぎて浮かれ気分!」と金子さん。
今回、使ったのは「駒ヶ岳千畳敷カールきっぷ」(大人11,500円)。高速バス往復乗車券(バスタ新宿↔︎駒ヶ根エリア)と路線バス往復乗車券(駒ヶ根駅↔︎しらび平)に、ロープウェイ往復乗車券と周辺施設での割引特典がついたお得なチケットです。
バスに乗り込んで山の話をしていると、「鈴木ともこさんの漫画『 山登りはじめました』の中で、木曽駒ヶ岳の山頂で“登山者と山の神様にしか見ることができない壮大な景色”と涙をこらえるシーンがあって。私も見てみたい! と登山を始めたの」と金子さん、熱い気持ちがあふれます。目的地に近づくにつれ、期待が高まります。約3時間半のバス旅は、おしゃべりして、少し寝たら、あっという間でした。
バスを降りると驚くほど涼しくて、気持ちのいい風が吹いていました。猛暑の東京とは別世界!
夕食は駒ヶ根名物、ソースかつ丼。ソースかつ丼の店といえば、地元の方が必ず名前を挙げるという「明治亭」へ。駒ヶ根市内では、ソースかつ丼は昭和のはじめから食べられていたそうです。
ヒレソースかつ丼が登場! 一般的な卵でとじたかつ丼ではなく、ごはんの上にせん切りキャベツがのっていて、その上に秘伝のソースにくぐらせたかつがドドン! とのっています。かつは4枚。迫力!
食べてみると、熱々のかつとシャキシャキのキャベツ、自家製の甘めであっさりしたソースの組み合わせがくせになるおいしさ。「ソースがしみたやわらかなかつは、ボリュームのわりに食べやすいです。信州名物の馬刺しとビールも最高!」
駒ヶ根高原の大沼湖畔にある「駒ヶ根ユースホステル」までは、駒ヶ根IC近くの女体入口バス停からまで路線バスで行けます。でも、最終バスは16時台。今回はタクシーで向かいました。
「駒ヶ根ユースホステル」は1966年にオープンした駒ヶ根市が所有する公営ユースホステル。建物は古いけれど、幾度も改修を重ねているそうで、中は清潔感があります。
泊まるのは2段ベッドが4台備えられた部屋。この日は空いていたので、金子さん、増田、カメラマンの黒川さん、編集部の木村さんの4人で貸切です。
基本はB&B(ベッド&ブレックファースト)スタイル。宿泊料はひとり4300円。+300円で朝食のパンが付けられます。食堂談話室には水道のほか、電子レンジや調理道具もあるため、自炊も可能。
到着がチェックインの時間ぎりぎりになってしまいましたが、明るくてやさしいオーナーご夫妻が迎えてくださいました。
金子さんとお風呂へ。ふたりとも着替えを入れていたのが「グラナイトギア」の“エアジップサック”でした。シルナイロンコーデュラという素材を使ったポーチは軽く、少しなら濡れたものを入れてもOK。私は15年以上使っていますが、薄手なのに破れたりすることがなく、丈夫なところも気に入っています。
「ふたりとも反対の手には手ぬぐい。旅は手ぬぐい1本でまかないます。濡れてもすぐ乾くから便利ですよ。普段も手ぬぐい派です」と金子さん。
朝は5時起床。涼しい風が吹いていて、さわやかな朝。宿の前で写真を撮ったら出発です。
歩いて7〜8分で「駒が池」バス停着。ロープウェイ乗り場がある「しらび平」駅まで路線バスで向かいます。「平日の朝一番のバスなのに、夏休みだからすごい人……! 休日や紅葉時期はさらに大混雑で、2時間待ちになることもあるそうなので、要注意!」
30分ほどで「しらび平」駅到着。ここからロープウェイで一気に標高2612mまで登ります。乗車時間は約8分。途中で下ってくるロープウェイとすれ違いました。思いのほかスピードが速い! 白い霧でところどころ隠れていましたが、窓から見える山々がきれいでした。
日本一高いところにある駅、「千畳敷」駅につきました。気温16度。もう目の前は千畳敷カールです。
カールとは、約2万年前の氷河期に氷で削りとられたお椀型の地形のこと。畳1000枚ほどの広さがあることから、“千畳敷カール”と呼ばれるようになったそう。高山帯の岩肌の真下に広がる千畳敷カールは、高山植物の宝庫として知られています。
「今回歩くのは、初心者向けの半日コース。でも今までにない高度で私にとっては大冒険!」と金子さん。
出発前に「千畳敷」駅に併設された「ホテル千畳敷」のロッカーに、余分な荷物を預けます。少しでもリュックを軽くすると登山がラクになるのでおすすめ。万が一の時のために登山届を提出するのも忘れずに。「ホテル千畳敷」を出たら、駒ヶ岳神社で山行の無事を祈ります。
いきなり歩くと体に負担がかかるので、高度に慣れるため、山並みを眺めながら、宿で持たせてもらったパンで朝食。時折、霧が晴れると壮大な景色が広がって、遥か遠くに登山者の姿が見えます。「私もあそこを登るのか〜! と気合いが入ります」
歩き始めると、青紫色のサクライウズや黄色い小さな花を咲かせるミヤマアキノキリンソウ 、傘状に花をつけるミヤマシシウドなど、そこらじゅうに可憐な高山植物が。高山帯の花の季節は短く、さまざまな植物がいっせいに咲くので、鮮やかなお花畑になるそう。
乗越浄土(のっこしじょうど)までの道は急坂。整備された階段状の道もありますが、岩がゴロゴロしているところもあるので、登山靴は必須です。
「高山で酸素が薄いので、いつもより息が上がります。正直きつかったけれど、振り返るとカールの景色が見事! 荒々しい宝剣岳が迫る感じも迫力満点で、がんばれました」
乗越浄土に到着。天気がよければ、眼下に千畳敷カールが広がり、遠くに中央アルプスや南アルプスの山々が望め、雲の上の絶景が楽しめる……はずが、今日は霧で真っ白!
後編へ続きます!
text:増田綾子
photo:黒川ひろみ
Profile
金子敦子
主婦。夫と娘との3人暮らし。看護師を経て日々の着こなしを自撮りで紹介するブログ『命短し恋せよ乙女★50代の毎日コーデ』をスタート。「あっこたん」の愛称で親しまれる人気ブロガーに。著書に『新 大人の普段着』(主婦と生活社)『お母さん、その服なんとかしよ!毒舌ムスメのファッションチェック』(飛鳥新社)がある。
Instagram:@55akotan
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