【松本市の旅】山からの恵みを存分に味わえる美味しい定食「山山食堂」
城下町として400年の歴史を誇る長野県松本市。国宝松本城をはじめ、松本美術館や上高地など歴史文化自然を楽しめるスポットが数多くあります。
松本というと毎年5月末に開催される「クラフトフェアまつもと」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。日本のクラフトフェアの先駆けとして1985年に始まり、現在では全国から多くの人が集まる大人気イベントとなっています。
2013年に喫茶併設の本屋「栞日」、2022年に継承した百年以上の歴史を誇る銭湯「菊の湯」を営む菊地さんに松本市のおすすめのお店を教えていただきました。是非次の旅の計画を立ててみてくださいね。
こんにちは。長野県松本市で、喫茶併設の書店「栞日」と銭湯「菊の湯」を営んでいる、菊地徹です。連載3回目は、松本市街の南を流れる薄川(すすきがわ)から、市街中心部を流れる女鳥羽川(めとばがわ)に場所を移して、この土地の水と食の恵みを味わう食堂にご案内します。

松本城下が湧水に恵まれた街であることは、連載初回の冒頭にも触れましたが、それは市街の東側の山々から流れる2本の川(薄川と女鳥羽川)の豊富な伏流水に由来します。女鳥羽川は、北から南に向かって市街に流れ込みますが、途中、清水橋を過ぎたあたりで、大きく西に曲がり、東から西に流れの向きを変えます。その大曲がりの少し先、清水橋のひとつ川下の念来寺橋で、南から北に川を渡ると、餌差町に突き当たります。餌差町は、城下の東の出入口にあたり、ここに藩主の鷹の餌となる小鳥を差し出す役目である「餌差」を置いたことが、町名の由来です。この通りには、酒蔵〈善哉(よいかな)酒造〉があり、その軒先には酒造りの仕込み水でもある湧水〈女鳥羽の泉〉が湧いています。

今回の目的地は、その〈女鳥羽の泉〉の西隣りにあるテナントハウス〈List(リスト)〉の1階に入居する〈山山(さんさん)食堂〉。朝7時から白米と味噌汁の定食を堪能できる、松本でも貴重な存在です。

〈山山食堂〉のオープンは、〈List〉全体のオープンと同じ、2019年の初夏。オープン当初、このテナントハウスの2階には、〈栞日〉が運営するギャラリー〈栞日分室〉が入居していて(2021年10月閉店。現在は〈List〉直営の〈List Gallery〉として運営)、1階奥のスペースには、オープン年から〈古道具燕(つばくろ)〉のアンテナショップが入居しています。私を含め、各テナントのオーナーが〈List〉全体のオーナーである、設計事務所〈リスと設計室〉主宰の横山奈津子(よこやま・なつこ)さんと友人であり、横山さんが契約したこの建物のリノベーション・プロジェクトに一緒に取り組んだことから、このテナント構成が実現しました。

〈山山食堂〉店主の高橋英紀(たかはし・ひでき)さんは、大阪の出身。地元のカフェでの仕事を通じて、将来自身で飲食店を開業することを志し始める一方、幼少期に両親や祖母が山登りに連れて行ってくれた体験を思い出したことをきっかけに、30歳を過ぎた頃から、山登りを始めます。家族と繰り返し訪れた立山の山小屋で働き始め、10年ほど経過した頃、その山小屋でお世話になった支配人が移住していた信州を訪ね、街と山がつながっている感覚を覚え、その距離感に惹かれたと言います。
より山が近いところで暮らしたい、と信州への移住を考えるなかで松本にも訪れ、〈栞日〉に立ち寄った際に案内された〈古道具燕〉の当時の店舗へ。店主の北谷英章(きたや・ひであき)さんと出会い、立ち話を続けるうちに、燕を手伝わないか、と誘われたことがきっかけとなって、2017年、高橋さんは松本に移り住みます。

移住から2年後、巡ってきた〈List〉オープンの好機を捉え、念願の食堂を開業した高橋さん。自身の店を持ったことで、山に登る機会が減ったのでは、と思い伺ったところ、むしろその回数は増えていて、いまも月2回ほどの山行は欠かせない、との回答。山に行くと、心身ともにすっきりして、晴れやかな気持ちになる。山がますます好きになっていく。とのことで、健やかに店を営み続けるためのリセットとリフレッシュも兼ねている様子でした。

〈山山食堂〉を営み始めて7年。松本での暮らしについて伺うと、自分は最初から最後まで山だから、この街での暮らしは申し分ない、との答えが返ってきました。高橋さんは続けます。料理に欠かせない水が美味しい。米と野菜がここまで美味しいことは、松本に暮らし始めてから気づいた。訪ね合える距離に、信頼できる農家が多くいる。山好きの高橋さんにとっても、料理人の高橋さんにとっても、この街がいかに魅力的か、言葉の端々から伝わってきました。

この日の定食にも地元農家の野菜がふんだんに使われていました。人参、茄子、トマトは〈ふぁーむしかない〉。しろうま胡瓜、青丸紅芯大根は〈SASAKI SEEDS〉。米は〈ほたか農園〉。いずれも松本の頼れる農家たちです。
山からの恵みを存分に受けるこの土地の水と食を、定食という小宇宙を通じて味わい、体感することが叶う〈山山食堂〉。松本を訪ねた際には、ぜひ訪れていただきたい、この街の食堂です。
長野県松本市大手5-4-25 List
TEL:0263-75-3508
営業時間:7:00〜16:00
定休日:月曜日・火曜日
Instagram:@33shokudo
MAP:C
日本、〒390-0815 長野県松本市深志3丁目7−8
日本、〒390-0874 長野県松本市大手5丁目4−25 list
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