血液検査で分かること vol.3
今月の先生:山崎まいこ先生(まいこホリスティックスキンクリニック院長)
今まで私は「すぐ眠くなるのは、私の意思が弱いからであろうか」「疲れやすいのは気力が足りないのだろうか」などなど、精神論で自分の体調不良を責めることも多かったのでしたが、それらの不調にはすべて、栄養不足という数字の裏付けがあったのでした。な~んだ、そうだったのか……。ほっとしたような、いやいやだからって、何の解決にもなってないぞと自分をツッコミたくなるような、複雑な気分であります。
けれどもまいこ先生は、ここから目指すべき方向を、食事や生活習慣などにからめて、やさしく指し示してくださいました。
「まず先ほどの血糖値スパイクの件ですが、とにかく空腹時のどか食いは絶対に止めましょう。お腹がすきすぎないように、ひと口ふた口、こまめに食べるというのもいいですよ。私もよく干しいもを食べているんですが、GI値(グリセミック指数。血糖値の上昇具合を表す数値)も低いし、食物繊維も多くて満足度も高いし、おすすめです」
さらに食べる順番。最近は「ベジファースト」という言葉もポピュラーになりましたが、食事を採るときごはんやパンなどの糖質からではなく、野菜から食べ始めることで、血糖値の上昇をゆるやかにするのを徹底させると、血糖値を調整する働きのあるホルモン・インスリンの分泌も抑制されるのだそう。
そして問題となった鉄分。「やはりレバーを始めとした動物性たんぱく質をしっかり採りましょう。『肉をあんまり食べてないな』という自覚がある人は、絶対に食べたほうがいいですね。田中さんは胃酸の分泌も少ないので、消化を促すサプリメントを取り入れたり、単純にかたまり肉よりはひき肉にしてみたり、レバーペーストのような消化しやすい状態の素材を取り入れるのもおすすめです。あと本当に基本的なことですが、よく嚙むというのも、あなどれない効果があるんですよ」
単純に胃腸をいたわることも、消化能力を上げることにつながるので、胃を冷やすものを食べない、腹巻きなどで温める、スープなど胃にやさしい料理を頻繁に食べるのもおすすめだそう。これらのことは一般的に「身体にいいよ」と言われていることばかりですが、自分の弱点を数値でしっかり自覚すると、意識的に取りかかれそうです。
ただそのようなアドバイスをしてくれつつも、「あんまりストイックな指導は、私も苦手なんですよ~」と、まいこ先生。
「その人のモチベーションになるのであれば、ストイックな方法もいいんですけれど、仕事や育児に忙しい人には、厳しい指導は逆にストレスになる人もいる。私自身、ズボラだし、楽しみながら暮らしたいタイプなので(笑)、その人ごとのライフスタイルに合わせて、時にはラクチンなサプリメントに頼ったりしながら、適度に意識するくらいでもいいと思うんです」
ただ、今まで際限なくずぶずぶにしていたところを、「3回に1回は甘いものを我慢してみよう」とか、「外食のメニューでレバーを見かけたら、オーダーするようにしてみよう」とか、ちょっとした気遣いを続けることで、体調が変わったりする。体調の改善を実感すると、モチベーションも上がるものなので、さらに「やってみよう」「頑張ってみよう」と、よい循環ができるのが理想です。
ちなみに私にすすめていただいたサプリメント類はこちら。懸案となっていた鉄分とビタミンDを補給するものと、消化酵素のサプリメントです。お肉を食べても、調子が今ひとつな日は、胃の中に3~4時間ほどゴロゴロ残っているような気がする田中にとっては、消化の負担を減らすのに大変役立つのだとか。
これまで化学合成されたサプリメントはあまり飲んできませんでしたが、先生のアドバイスにも納得したので、今回は挑戦してみることにしました。飲み続けてみて、体調がどんな風に変化するかが楽しみです。
診断結果はテストの成績表のようなもので、現時点での健康状態の良し悪しを量るだけのものと思っていたのですが、日が経つにつれ、自分の身体の変化をよりていねいに感じ取り、毎日の食事の素材選びにもより気配りをする習慣がつくようになった気がします。漠然と「身体にいいことしよう」と思うより、「自分のこの弱点を補おう」と考えるほうが手段も具体的になり、健康へのモチベーションが高まるのだと実感しました。具体性って、やっぱりとても大切なのです。
「今は『予防医学の時代』と言われていて、寿命は延びているけれど、その中で健康寿命をどれだけ伸ばせるか、『未病』の段階でいかに体調を改善していくかが、鍵となっています。病気を抱えながら長生きするのと、健康のまま長生きするのでは、幸福度がまったく違う。今回の検査のように、現在の身体の状況を把握して、少しずつ工夫していくことは、これからの時代ますます重要になっていくと思います」
調子が悪くなってから病院に行くのではなく、自分の弱点を知り、先まわりして病気になりにくい身体をつくり上げる。理想通りには、なかなか難しいことですが、こうした検査もひとつのきっかけになりそうです。また、むやみに自分を責めることなく、「今日やる気が出ないのは体調のせいなんだな」「また鉄分が不足しているんだな」と、やわらかく考えられるようになったのもちょっとした進歩でした。
「健康って何だろう? と考えるときに、私は柔軟性と寛容性を兼ね備えることが、本当の健やかさと美しさにつながっているんじゃないかと思っているんです。それらを伴って心身ともに健やかになると、自分に自信が持てて、人と比べない健康や美にフォーカスできるようになる。たとえ何か病気や不調があったとしても、それと共存しながら、健やかさや美しさを目指すことができる。私の医院で伝えていきたいことは、そういうことだと考えています」
photo:砂原 文 text:田中のり子
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https://mhs-cl.com/
Profile
山崎まいこ
滋賀医科大学卒業後、大阪市立総合医療センターで臨床研修を行う。大阪市立大学附属病院形成外科、大阪市内の皮膚科常勤医師、大阪市内の美容皮膚科院長を経て、2013年東京・代官山に「まいこホリスティックスキンクリニック」を開院。初の著書『美しい肌が生まれるところ』(ワニブックス)が好評発売中。
田中のり子
衣食住、暮らしまわりをテーマに、雑誌のライターや書籍の編集を行う。『ナチュリラ』(主婦と生活社)は創刊当初からのスタッフ。構成・執筆をした『これからの暮らし方2』(エクスナレッジ)が好評発売中。
肩の力を抜いた自然体な暮らしや着こなし、ちょっぴり気分が上がるお店や場所、ナチュラルでオーガニックな食やボディケアなど、日々、心地よく暮らすための話をお届けします。このサイトは『ナチュリラ』『大人になったら着たい服』『暮らしのおへそ』の雑誌、ムックを制作する編集部が運営しています。