【自分を癒す家づくりvol.4】風景と繋がる住まい

大人の住まい替え
2019.10.04

連載「大人の住まい替え」では、これからの暮らしを見つめ直した先輩方の住まいをご紹介します。今週お届けするテーマは「自分を癒す家づくり」。お気に入りの景色をいつでも眺められる場所をつくったり、家族それぞれの時間を大事にできる工夫があったり。“自分たちにとって最高に心地いい”をとことん考えて完成した住まいには、その人ならではの暮らしのこだわりがたっぷり詰まっていました。

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Sさん夫妻の場合
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本日は「風景と繋がる住まい」をご紹介します。春になると見事な桜並木が続く景観が気に入り、土地を購入したSさん夫妻。「この景色をいつでも楽しみたい」という想いから家づくりが始まりました。壁一面の本棚に大きく開けられた窓から見える桜は、まるで絵画が飾ってあるよう。Sさん夫妻の一番のお気に入りスペースです。

目の前の桜に一目惚れして
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目の前の見事な桜並木に魅了され、土地を購入したSさん夫妻。ご主人は大工、奥様はインテリアコーディネーターをしていて、将来は自分たちの手で理想の家を建てたいという思いがありました。2人とも家づくりは日ごろから仕事で携わっていますが、実際に自分の家となるとデザインや設計を具体的にどうするか悩んでいたそう。そんな時、たまたま目に留まったのがイノウエヨシムラスタジオの建築デッサンでした。

「建築デッサンを見て、住み心地がよさそうで、高いデザイン性に心惹かれました。イノウエヨシムラスタジオであれば、自分たちの理想の家をデザインしてくれると感じ、設計をお願いしました」


公園の景色を家の中で楽しむための工夫
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「土地購入の決め手となった公園の景色や雰囲気を、家の中にいながら楽しみたいという想いが一番強かったですね」とSさん夫妻は話します。その希望を叶えるために取り入れられたのが、3.4mの天井高をもつ大きなリビング空間とランダムに配置された大小の窓、そして玄関からリビングまで続く土間です。

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大きさや高さが違う複数の窓があることで、ソファー部分の土間は色々な方向の景色が一度に見わたせ、他の家では味わえない公園の延長のような開放的な空間を楽しむことができます。

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また、土間には木漏れ陽がたっぷり降り注ぐため、インナーテラスとしても楽しむことも。リビングは立つ位置や座る位置、向きや時間によって様々な陰影がつくり出され、色々な表情が垣間見えるそう。

本棚に開けられた窓で、公園の風景と繋がる
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高い天井まである壁一面の本棚は、まるでヨーロッパの古書店のよう。本棚には大きく開けられた窓があり、ここに腰掛けて本を読みつつゆっくり外の風景を眺めていると、家の中にいるのに公園の中にいるような感覚にもなります。
「春に見える景色は、まるで本棚に桜の絵が飾られているようなんです。夏には月、秋には落葉、冬には雪、と季節ごとの空気を感じることで、家の中も四季折々の風景と一体化しているようで楽しいです」


開放感とおこもり感、どちらも実現したスキップフロア
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家づくりのコンセプトを考える際に最も頭を悩ませたのが、Sさん夫妻の好みの違いでした。家のテイストについて、おこもり感のある雰囲気が好きなご主人と開放的な感じが好きな奥さん。二人の希望は相反するものでした。土地は道路から一段上がったひな壇状だったので、窓を大きくつくることで見晴らしのいい開放感のある建物に仕上がりますが、それでは一方のご主人の希望を叶えられない……。

そこで建築家が提案したのが、建物2階の床を1m上げてリビングの天井高を3.4mと高くし、スキップフロアで中2階、2階へと徐々にスケールダウンしていくプランでした。開放感のある公園の延長のような1階とおこもり感のある2階をつくり、完全に分離させることなくシームレスにつなげ、景色を眺めるだけではなく、外の景色を家の中に取り込むような工夫をしています。

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階段を上った中2階には、踊り場を有効活用したワーキングスペースが。壁に造り付けた机で作業をするときは、リビングに背を向けるため集中することができます。リビングとひと続きの空間となっているので、開放感もしっかり兼ね備えられています。

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2階は洗面や風呂場などの水回りと寝室スペース。寝室にある階段を上った先には、まるで秘密基地のようなロフトがあります。ご主人が希望していた“おこもり空間”が実現されました。

風景の延長のような開放的なスペースと、ほっと安心できるおこもり感のあるスペース。それらをつなげるリズミカルなフロアの構成のよって、相反していた2人の想いを見事にどちらも叶え、Sさん夫妻の大満足する家が完成したのでした。

■間取り図
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1F


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中2F


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2F


居住者構成:夫婦
敷地面積:約140㎡
延床面積:約106㎡

 

意匠設計:Inoue Yoshimura studio 株式会社
構造設計:川田知典構造設計
施工:株式会社坂牧工務店
撮影:渡邊 聖爾


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出典:KLASIC

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