宝探しのようなラインナップにワクワク「plain clothes shifuku~プレインクローズ シフク~(略称シフク)」
【5日間特集】「アナベル」伊佐さんの、たまプラーザお店リレーvol.2
昨日から5日間特集でご紹介しているのは、本Web連載「おすすめ帖」でおなじみの「アナベル」伊佐洋平さんによる、ご近所で親交のある素敵なショップのご紹介。緊急事態宣言を受けて短縮営業をしているお店ばかりですが、オンラインショップなどの営業でも頑張っておられます。そこで「コロナに負けるな!」の気持ちを込めて5つのお店をWebを通して応援するこのコラム、ぜひご覧ください。
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photo:川本浩太 text:伊佐洋平
2日目の今日はコレクトショップというに相応しい、「plainclothes shifuku(シフク)」のご紹介です。
アナベルのホームページで「safuji(サフジ)」さんのバッグをご紹介した際にも、強烈なインパクトを残してくれたこちらのご夫婦が経営するショップ「shifuku(シフク)」さんは、2019年12月にオープンしたばかり。オープン前からうわさを耳にしていた私は、その情報をもとに様々な想像を膨らませ、伺うのを心待ちにしていたお店でもありました。
オープンして間もなく伺ったのですが、第一印象は「うらやましい!」というのが正直な感想でした。店構え、店内の空気、什器、そこに並べられた一見不均一な者たちの数々。そしてその中に何の違和感もなく立つお二人。
「二人の部屋にお邪魔した」という感想が最もふさわしいのかもしれません。
だってそこには、無国籍で多種多様な者たちが、そこの主(あるじ)の「感覚」という一点のみに支えられて、空間の中でじつに生き生きとしているのですから。
同じお店を営む一人の人間として、見た瞬間に彼らの中にある「覚悟」のようなものを感じられるお店でした。
しかしお話をしていると、一見そんなことを全く感じさせないから不思議です。それは誰しもができることではなく、彼らご夫婦の絶妙な関係が成せる業なのかもしれません。底抜けに明るく、それでいて肝の据わった奥様と、とても繊細で思慮深いご主人。二人のバランスがとても面白い。
誰もが知る大手アパレルの要職についていたお二人が、なぜここまで振り切ることができたのか? 私は気になって仕方ありませんでした。通常、大手のアパレルで求められるのは数字です。それがすべてを支配している世界にいた方たちが、それに対する反発心はあったにせよ、長年染みついていた習性や思考を取り払うことにどれだけの時間と努力を費やしてきたか? 容易にあれこれと想像できるほど興味深いお店だったのです。
それを率直に聞いてみたところ、やはり相当な時間をかけて自分たちのお店について考えていたことがわかります。「こうしたら正解なんだろうな…」という染みついたロジックをいったんゼロにすることに苦労したという。
本当に多様な商品を目の前にしながら、最初の疑問についてたくさんの質問を浴びせる中でたどり着いた一つのターニングポイントがありました。それは大手アパレルに勤務していた時代の話題から発した「売れなくなった時の要因は何だったと思いますか?」というわたくしの質問に、即答で返ってきた「自分たちがワクワクしていなかった。」という答えでした。
そのときの経験から、自分たちで立ち上げるお店は、まず自分たちがワクワクしているかを絶対的な基準にしてセレクトしたいというものがあったそうだ。だから、まずは自分たちが反応したすべてのモノを詰め込むことにしたと。
きっとわたくしが羨ましいと感じたのはその点なのだろうと思うのです。気に入ったものをセレクトするというところは同じですが、そのすべてが詰め込まれたところに羨ましさを感じてしまう。だってそうでしょう。スニーカーが並べられた隣にマッチが並び、その正面にはウェスタンブーツが並んでいて、ナイキの古着のTシャツがあったかと思えば、初めて見る福岡発の「CATTA(カッタ)」というブランドがセレクトされている。カウンター周りに集中する器も、古いものから作家物までが同列に並べられている。前述したとおり、そこを支配しているのは、彼らの感覚ただ一つなのです。
「トレンドとは?」という質問にも即答してくれた。「単なる現象としか見ていない」「たまたま一致することもあればそうでないこともある。ただそれだけ」
最後にわたくしが最も疑問に感じていたことを聞いてみた。それはなぜ店名に「plain clothes」というワードが入っているのか? お店の様子からは不自然にも感じられるワードだったからです。しかしそこにも彼らなりの思いが込められていました。
それは、ファッションを扱う上で絶対に欠かせない、「Work」「Military」「uniform」といった洋服のルーツになる要素を大切にしたいという思いから生まれたワードでした。あくまでも基本を理解した上での自由な発想を展開したいと。「至福」と「私服」、駄洒落ですね?という質問には、「ファッションから洒落がなくなったらいけません」という明快な答えが返ってきた。今後も変化を恐れず、常に自分たちの感覚に正直に反応できるお店を続けていきたいと語るお二人。まだできたばかりのお店ですが、今後の変貌が楽しみで仕方ない。足し算、掛け算でスタートした彼らが引き算を始めた時、いったいどんな風景が出来上がるのだろう? 楽しみで仕方ない。
横浜市青葉区美しが丘1-10-8 みなもとビル1F 1-l
https://plainclothes-shifuku.com/
Instagram:@plainclothes_shifuku
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