【後藤さん連載】スマホで素敵な写真を撮りたい【後編】

後藤由紀子さん 専門家の力をお借りします
2022.01.29

インスタグラムに雑誌の掲載用にと、スマホで撮影する機会の多い後藤由紀子さん。「これでいいのかなあ?」と納得いかないまま、シャッターを切ることも少なくなかったようで……。改めてプロに「スマホで写真を上手に撮るコツ」を教わることにしました。

今回の先生は、ライフスタイル誌などで活躍するフォトグラファーの柳原久子さん。【前編】では光の捉え方や、室内照明の下での撮影について学びました。【後編】では、セルフポートレートと、後藤さんがよく撮るという「月」の撮影ポイントについて教わります。



お悩み③

自分のことを上手に撮れない

「おしゃれ上手」として評判の後藤さん。雑誌の企画で「日々のコーディネートの写真を撮って送ってください」という依頼がくることも多いそうです。

後藤さん(以下、後):仲良しのお客さんや家族に撮ってもらうのですが、なかなか思うようにはいかなくて……。人に頼むので、時間やお天気状況などを選べないですし、たくさん撮ってもらうわけにもいきません。たいていの場合、「これぞ」という写真には仕上がらないんです。


柳原さん(以下、柳):
人物もほんの少しの角度の違いで写真が全然変わるので、カメラをバースト(連写)モードに設定し、顔の向きや体の角度を少しずつ変えて撮ってみると、違いが見えて、だんだん自分の好きな角度やポーズがわかってくると思います。またコーディネートを見せる写真の場合は、服のシルエットもとても大事で、特にスカートやブラウスの裾などが軽やかに揺れていると、服のきれいさが引き立ちますし、写真も生き生きとして動きが出ます。脚を斜めにしたり、一歩踏み出したりちょっとずつポーズを変えてみましょう。


撮る側もしゃがんだり、引いたり、動いて、人物がきれいに見える角度やバランスを調整。このときの柳原さんは立て膝で撮影していました。

柳:普通に立って、目の位置でスマホを構えて撮ると、レンズに近い頭のほうが大きく映り、バランスのよくない写真に。室内なら立て膝になるなどして、少し低い位置から撮るといいと思います。そのときにゆがみが強くならないよう、【前編】と同様、ぜひズームを活用してくださいね。また、同じ場所でも季節や天気、時間帯で光の当たり方が変わるので、どのタイミングの光で撮ると好みの写真になるか、いろいろ試してみるのも楽しいですよ。


人に撮ってもらうことが難しいタイミングや状況の場合は、三脚を使った「自撮り」がおすすめ。2千円程度で購入できるので、備えておくと便利です。


後藤さんはこの取材で、三脚を使った自撮りに初挑戦。三脚の高さは、さきほど柳原さんから教わったとおり少し低めに設置。三脚にスマホをセットします。


この三脚はリモコンがついているタイプでしたが、リモコン単体でも購入可。Bluetoothで簡単にスマホと接続できます。


画角を決めたら、いざ、撮影スタート。前を向いたり、横を向いたり、いろいろなポーズをとりながら、リモコンでシャッターを切ります。

後:人に撮ってもらうときは、ちょっと恥ずかしいし、時間をかけてはいけないと、正面の普通のポーズを数枚撮ってもらうだけになってしまっていたのですが、これなら気兼ねなくいろいろなバリエーションが撮影できますね。


こちらが「今日のベストショット」by後藤さんご本人。振り向きざまをパシャリ。Aラインのワンピースの裾が広がって、とてもきれいですね。服が立体的に感じられるので、スタイルもよく見えます。

後:三脚やリモコンの操作、思っていた以上に簡単でした。人の都合に合わせず、自分の空き時間で、自分のペースで撮影できるからいいですね。自分や服がきれいに見えるように動くということも、今まであまりしてこなかったので、今度から試します!

さて、お次は顔写真。【前編】で勉強したように、こちらも光の当たり方で、写り方が劇的に変化します。


左から、横からの「サイド光」、正面に光を受ける「順光」、背後に光を受ける「逆光」で撮った写真。横や上から強い光があたると、陰影がつきすぎて、ほうれい線やシワが目立ってしまうことも。そのため、シワをカバーしながら顔写真を撮るときは、全体に光がフラットに当たる「順光」や「逆光」で撮るのがおすすめなのだそう。


柳:
白いバスタオルやクロス、大きな紙などがあれば、胸のあたりで広げて撮影してみましょう。白いものは光を反射して影を弱めてくれるので、シワが目立たなくなる効果がありますよ。


白布を使って撮った写真がこちら。左が「サイド光」、右が「逆光」ですが、どちらも影がやわらかくなった分、全体的にふんわりとやさしい雰囲気になります。

後:普通に家にあるものでもレフ板効果が得られるんですね。裏技の伝授、ありがたいです。

柳:ちなみに、よくweb会議やネット配信で使われるリングライトは、レンズのまわりを囲むように設置することで光を均等に当て、顔に影が出ないようにするアイテム。カメラの横に置いてしまうと、その効果を最大限に生かせないので要注意ですよ。

お悩み④
三日月が満月になっちゃう

最後のお悩みは、「月の撮り方」について。「夜が一番元気」という後藤さんは、夜空を眺め、月の写真を撮ることが多いのだそう。インスタグラムでも度々登場していますね。

後:でも、どうしてもぼわっとにじんだようになって、三日月が満月みたいに撮れてしまうんですよね。どうしたらきれいに撮れるのでしょうか?


柳:
実はスマホカメラでは、遠くの月を撮るのは難しいんです。うまくいかないのは、①暗い夜空に対して月が明るすぎるので、露出オーバーになってしまう ②ピントが合わせにくい ③手ブレ。この3つが主な原因です。それをクリアする方法は……

① まずスマホカメラの露出の設定を下げましょう。iPhoneの場合、ピント(フォーカス)を合わせたい部分をタップすると、黄色の四角い枠が表示されます。その枠の隣にある太陽マークを指で押さえながら上下にスライドさせると写真の明るさを変えられますよ。

② 遠いところにある屋根や電柱など、目視でもわかりやすいはっきりしたものに一度ピントを合わせましょう。その後に月にレンズを向けると、かなり遠めにピントが合っていることになります。

③ 手すりなどしっかりしたものにひじをのせたり壁にもたれたりして、体の揺れがカメラに伝わり手ブレしてしまわないように撮影してみましょう。


……というわけで、「スマホで素敵な写真を撮るコツ」のレッスン、これにて終了~。後藤さん、いかがでしたか?

後:せっかくスマホに賢い機能がいろいろと備わっていたのに、使わないのはもったいなかったなと思いました。また、自分が動いてベストな光や角度を見つけるというアドバイスも伺えて、今回も大収穫です。

柳:光の方向を意識するとか、ズームを使って歪みを減らすとか、ほんの少しのことで印象が変わるはずです。でも、一番大事なのは「何を素敵だと思って撮ったか」ということ。後藤さんの写真は、元々それがすごく感じられるので、それをベースにしていただければ、バッチリだと思います。


一通りレッスンを終えて、話題は柳原さんが運営する「なたね写真館」のことに。成人式などのお祝いの写真やメモリアルフォトのほか、婚活写真の需要も多いのだそう。


柳:
実は、はじめたきっかけは友人の婚活写真なんです。自然な雰囲気でポートレートを撮ってあげたら、その写真をきっかけにすごくモテだしたんですって! すぐに結婚が決まって、もうお子さんがいます。かしこまったタイプの写真だと表情がかたかったり、真面目すぎて見えたりしがちですが、プロにナチュラルなヘアメイクをしてもらい、自然光の中でリラックスした雰囲気で撮影した写真なら、より「その人らしさ」が伝わりやすいんじゃないかなと思うんです。

後:わー! モテ写真、すごい!! 人生も変えられてしまうなんて、一枚の写真のパワーは計り知れませんね。


柳原さん、丁寧なレクチャーをありがとうございました。今回のレッスンの成果は……、後藤さんのインスタグラムにてお楽しみくださいね。

text:鈴木麻子

 

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Profile

柳原久子

Hisako Yanagihara

フォトグラファー。もの・人・料理・旅などをテーマに、女性誌や書籍などを中心に活躍。月に2回、都内にある自身のスタジオを「なたね写真館」としてオープン。プロのヘアメイクつきのナチュラルなポートレートを撮影している。
https://water-fish.co.jp/

 

後藤由紀子

Yukiko Goto

静岡県・沼津で器と雑貨の店「ハル」を営む。最近は「出張hal」として日本各地で期間限定の出店も。二人の子供は社会人となり、子育てもひと段落。暮らしの工夫や気づきを綴った飾らないエッセイも好評。近著に『気持ちを伝える贈りもの』(大和書房)。
Instagram「@gotoyukikodesu
YouTube「後藤由紀子と申します

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