古くて新しい、お灸の魅力を再発見vol.2

からだ修行
2017.01.24

今月の先生・「食とセラピー ていねいに、」福田倫和さん

 

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さていよいよ本題、今回はそのワークショップの目玉である「自宅でできるお灸講座」の内容を教わってきました。そもそも「お灸」とはどんなものなのでしょう?

「ざっくり言うと、よもぎの葉からできたもぐさ(よもぎの葉の裏にある白い綿毛を精製したもの)に火をつけて、つぼに置き、身体を温めて自然治癒力を高める療法のこと。中国最古の医学書『黄帝内経(こうていだいけい)』にも記載されていて2000年以上の歴史があり、日本には奈良時代に仏教と一緒に伝わってきたとされています」

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「つぼ」とは、東洋医学でいうと「経穴(けいけつ)」のこと。鍼灸の世界では全身に361か所あると言われています。「経絡(けいらく)」と呼ばれる、身体上に14本あるとされている「気」(エネルギー)の通り道の上にあるものです。

体の不調は、『つぼ』のコリや冷え、くぼみなどで表われ、そこが治療にとても有効なポイントになるのです。いちばん分かりやすいのがコリで、さわってみて『痛い』とか『気持ちいい』とかを感じられる部分です」

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今まで私は自己流でマッサージをするときも、この「つぼ」の位置が今ひとつよく分からず、「はたしてこの場所で合っているのだろうか?」と悩むこともしばしば。たとえば膝の下に「足三里(あしさんり)」という、「万能養生のつぼ」と呼ばれる有名なつぼがありますが、その位置も長年はかりかねておりました。

「教科書的に言いますと、『膝のお皿の下のくぼみから、指4本分下がった、むこうずねの外側にある』とされています。でも実際は鍼灸師の世界でも、つぼは触って決めるものなんです。『このあたりかな』というあたりを付けたら、指先を左右に動かしてみてください。そうすると、痛気持ちよく感じられるポイントがありませんか?」

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おおお! 確かに! 私が「このあたりかな」と思っていた場所より、ほんの少し内側にずれた部分に、コリっぽいような場所がありました。私の「足三里」はここだったんだーー!  さわって決める。そのひと言で、何だかずいぶんスッキリしました。

ちなみにこの「足三里」、病気予防、体力増強、足の疲れやむくみに効果があり、何より胃腸全般の不調にも効くというつぼ。江戸時代に全国を旅してまわった松尾芭蕉も、ここにお灸をすえていた……というエピソードが有名です。

ようやく「足三里」の位置が分かったところで、そこにソフトタイプのお灸をのせて、火を点けます。福田さんは仏壇用の小さなチャッカマンが使いやすく、愛用しているそう。細い煙が上がってきてからおよそ5分弱ほど。じんわり熱く……あれ? 何だかあまり温かさを感じないけれど、果たしてこれで効いているの??

「お灸の両脇をさわってみてください。熱くありませんか?」

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あれ? お灸自体を触ってみると、確かに熱い。なのに、肌には熱さを感じません。

「それは残念ながら、田中さんの脚が冷えている証拠です。お灸は熱ければ効くというわけではありませんが、『温かくて気持ちいい』くらいがひとつの目安です。田中さんの場合、もう少し強いものをのせてみたほうがよさそうですね。最近のお灸は、熱さの感じ方がソフトなものから強めなもの、煙があるもの出ないもの、お香のように香りがついているものなど、たくさんの種類が販売されています。講座ではいくつかのつぼとお灸を試してもらって、自分の好みのものを見つけてもらうようにしています」

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が、が、がーーーーん。私の脚ってば、そんなに冷えているのか……。ちょっとショックでしたが、それを実感できたのもよかったかもしれません。「お灸は冷え症回復に効果があるので、続けてみると改善されていくと思いますよ」と福田さん。

さてその次は、消化器・肝臓・腎臓などの働きを助けるとともに、婦人科系の悩みには欠かせないつぼ「三陰交(さんいんこう)」。助産院などで妊婦さんにお灸をすすめられることも多いというつぼ。こちらは、足のくるぶしから指4本分くらい上の、すねの骨の内側のくぼみにあるつぼです。
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こちらにはアドバイス通り、ワンランク熱めのお灸をチョイス。じわ~っと温かさが伝わり、何ともいい気持ち。ほんの5分程度のことなので、「もうちょっと長くてもいいのに……」という名残惜しさも残りつつ、逆にこの手軽さだからこそ、いいのかもしれません。

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もうひとつ教わったのは「合谷(ごうこく)」という手のつぼ。親指と人差し指の骨が合流するあたりの、やや人差し指側にあり、頭痛、肩こり、風邪、のどの痛み、下痢や便秘などにも効くと言われる、やはり万能なつぼです。

「まずは一日一回、3か所くらいから。慣れていったら場所を増やしていっても大丈夫です。特に決まった時間帯はありませんが、リラックスできる、夜に寝る前に行うのが効果的です。入浴の30分前後や飲酒時、発熱時は避けたほうがいいでしょう」

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この他のつぼは、初心者にもお灸が分かりやすく解説されているこちらの本、『お灸のすすめ』(池田書店)などを参考にして、自分の不調に合わせた場所を選び、続けていくといいのだそう。

お灸の優れている点は、自分で気軽にできること、そして温かいので、治療されているのに気持ちがいいこと。気持ちがいいと心身がリラックスしますよね。気持ちがいいことが僕は好きだし、身体にとってもいいことだと思うんです」

さて、お次はその「お灸でリラックス」の究極版、「ていねいに、」のセラピーで行っている「びわの葉温灸」を体験してみました!

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photo:砂原 文 text:田中のり子

 

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食とセラピー ていねいに、
東京都杉並区西荻南1-18-11

TEL:090-3452-3354
営業時間:【食】火18:00~21:00(LO)、水~金9:00~14:00(LO)、18:00~21:00(LO)、土・日12:00~16:00(LO) 【セラピー】10:00~21:00
定休日:月曜 
http://teineini.com/

Profile

福田倫和

Tomokazu Fukuda

会社員を経て、2006年東洋鍼灸専門学校卒業、2006~2011年長野の「穂高養生園」にて勤務。地域の方々の健康と暮らしをサポートしたいという思いから、生まれ育った東京・西荻窪にて2012年「食とセラピー ていねいに、」をスタートする。趣味は温泉と合気道。

田中のり子

noriko tanaka

衣食住、暮らしまわりをテーマに、雑誌のライターや書籍の編集を行う。『ナチュリラ』(主婦と生活社)は創刊当初からのスタッフ。構成・執筆をした『これからの暮らし方2』(エクスナレッジ)が好評発売中。

肩の力を抜いた自然体な暮らしや着こなし、ちょっぴり気分が上がるお店や場所、ナチュラルでオーガニックな食やボディケアなど、日々、心地よく暮らすための話をお届けします。このサイトは『ナチュリラ』『大人になったら着たい服』『暮らしのおへそ』の雑誌、ムックを制作する編集部が運営しています。

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