第5回 クリスマスケーキからバレンタインのチョコまで。「ベルギーの甘いもの」ストーリー

栗山さんのベルギーおいしいもの通信
2021.02.05

こんにちは、料理家の栗山真由美です。新型コロナウイルスが発生して1年、ベルギーではロックダウンが続き不安も募りますが、少しでも楽しく過ごしたいですね。

さて、ベルギーといえばチョコレートの国。バレンタインもあることですし、チョコレートのお話は必須ですよね。先月はベルギーのクリスマスをお伝えしましたが、補足も兼ねて、今回はクリスマスからバレンタインまでの甘いものストーリーをお届けします。

まずは、クリスマスケーキ。ベルギーにも多種多様なケーキがあります。中でも、伝統的にクリスマスに食べられてきたのがChristmas log 、オランダ語でKerststronkです。日本では「ブッシュ・ド・ノエル」として耳なじみのある、切り株のケーキです。


切り株のケーキといえば、内側はロールケーキで、ぐるぐると巻いた層を切り株の年輪に見立てたのが始まりです。ですが、ベルギーでは巻いてはいないけれど、生地やクリームを重ねて、外側をコーティングという手法がよく見られます。これは進化したモダン系。私はもっともプレーンでベルギーらしい、チョコレートをふんだんに使ったケーキを選びました。


ベルギーらしいといえば、スペキュロスクリームもあります。スペキュロス(スパイス)クッキーを砕いてクリームに混ぜたものになりますが、りんごや洋梨などフルーツ、ナッツなどを加えた豪華版もあっておいしいです。

12月25日を過ぎても、まだクリスマスムードは続きます。1月6日に「Three Kings’ Day(Epiphany)」があるからです。フランスには新年を祝うケーキ「ガレット・デ・ロワ」がありますが、ベルギーにも同様のEpiphany Cake、オランダ語で Driekoningentaartがあります。これを食べて、11月末からの一連のクリスマス行事の終了です。



タルトにはフェーブという陶器の飾りが入っていて、それを引き当てた人はその日の王様になれるとされています。これ、国によってずいぶん違いがあっておもしろい。フランスではフェーブを当てた人は「その年が幸せな年になる」という運試しの意味もありますよね。

ポルトガルでは王様ケーキ、Bolo Reiというものがありますが、フェーブは2種類。陶器は同じですが、乾燥空豆も入っていて、空豆を引き当てたら、次のBolo Reiを買う係になるのです。ポルトガルの場合は12月から1月6日のEpiphanyまで食べ続ける習慣があるので、これを期間中くり返します。

スペインにはRoscón de Reyesがあり、フェーブについてはポルトガルに近い解釈ですね。さらにアイルランドでは、Epiphanyを祝うとか、そのためのケーキという習慣はないそう。1月6日は「Little women’s day」と呼ばれていて、クリスマスから忙しくしてきた主婦たちを家から解放する日なのだそうです。主婦たちが集まってお茶を楽しんだりするそう。

Epiphanyはカソリックの国の習慣で、同じキリスト教でもプロテスタントは違います。以前ブログにDriekoningentaartについて書いたところ、オランダに暮らす日本人の方々からコメントがありました。

Driekoningentaartはベルギーではこの時期、スーパーでも入手できるほどメジャーなものですが、オランダではベーカリーやお菓子屋さんに必ずしもあるものではないそう。普段は国内のフランス語圏よりも身近に感じているオランダですが、プロテスタントなのでこの習慣はないのです。イギリスも同じです。
欧州圏内、どこも近くて似かよったことも多いながら、違いもさまざまで興味深いです。

最後に変わり種を1つご紹介します。ベルギーのガレット・デ・ロワ=Driekoningentaartは、フランジパンとカスタードクリームをパイに包んだものが一般的です。フランジパンはアーモンドパウダーの入ったフィリングで、ベルギーではよく使われます。

下の写真、老舗のGoossensというお店のショーウインドーなのですが、写真の下段にも上段にもある、王冠のついたケーキがこのお店のDriekoningentaartです。こちらではパイなし、フランジパンのみで形成されているとのこと。様子が全然違います。このように、各お店で個性が違うので、食べ比べの楽しみもあります。

さてさて、チョコレートのお話に移りましょう。ベルギーを代表するものとして、ベルギーチョコレートは日本でも定着していますよね。ショコラティエの個性が確立していて、全工程をそれぞれのお店がしていると思っていました。

実は最近知ったのですが、ベルギーチョコレートの本体を製造しているのは大手2社で、各ショコラティエはそこから買ったチョコレートを成形・加工をし、販売しているのだそうです。製造元はBARRY CALLEBAUT社とBelcolade社で、プロ向けに販売。一般人は買えません。驚きました。

ベルギーでは競争があるからこそでしょうか、レベルが高く、おいしいチョコレートがどこでも入手できます。あとは配合、フレーバー、デザインなど好みで選びます。スーパーで売っているチョコレートなども、侮れないほどおいしいのもがあります。


上の写真は、アントワープでいちばんおいしいと思っているショコラティエ、Chocolaterie Sweertvaegherのチョコレートたち。


バレンタインパッケージのチョコレート(Sweertvaegher)


ロックダウンで外食ができない今、ショコラティエのケーキをお家で楽しむ方も増えていて人気があります(DelRey)

チョコレートの国のバレンタインはどんなふうかというと、2月14日は愛情を伝える「恋人たちの日」です。具体的には男性が女性に愛を伝え、プレゼントをします。プレゼントはチョコレートとは限らず、むしろお花を贈る男性が多いと思います。チョコレートは普段から贈ったり贈られたりしますが、バレンタインはもう少し特別な位置づけ。レストランを予約して、愛する人とゆっくり時間を楽しみ、愛を深める…といった感じがベルギー流です。

クリスマスからバレンタインの甘いものストーリー、いかがでしたか?

最後の写真は甘いお話ではないのですが、期間がかぶり、興味深い内容なのでご紹介します。


ベルギー、おそらくアントワープを含むフランダース地区だけだと思うのですが、Verloren maandag(失われた月曜日)という日があり、ソーセージの入ったパンと、りんごのパイを食べる習慣があります。1月6日のEpiphany後の最初の月曜日で、今年は1月11日でした。

諸説ありますが、こんな物語が伝えられています。
昔、低賃金労働者たちはクリスマスから続くパーティでお金を使い果たし、Epiphany後の日曜日には無一文になる人が多かった。翌月曜日、彼らはパン屋に行き、物乞いをした。パン屋は肉屋から提供された安いソーセージを入れたパンを焼き、彼らにふるまったそうです。この慈悲深いお話と習慣が、今も残っているのです。パン屋さんはこの日大変忙しくなるけれど、お金にはならなかったので、「失われた月曜日」と名付けられたそうです。
結果、今でもこの習慣が続き、「いちばん稼げる日」とも言われています。先人に感謝ですね。

 

*写真の無断転載はご遠慮ください*

【栗山さんのベルギーおいしいもの通信④】はこちら

 

Profile

栗山真由美
Mayumi Kuriyama


料理家、栄養士。枝元なほみさんのアシスタントを経て独立。ポルトガル料理を中心とした料理教室「Amigos Deliciosos」を12年前から東京で主宰、日本ポルトガル協会の公認講師も7年間務める。2019年より、イギリス人のご主人とベルギー・アントワープに在住。著書に『ポルトガル流 驚きの素材組み合わせ術! 魔法のごはん』(エイ出版)、『「酒粕」で病気知らずになる ゆる粕レシピ』(池田書店)など。
https://ameblo.jp/castanha/  Instagram  mamicastanha

 

 

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