第15回 『僕の献立 本日もお疲れ様でした』について

京都「本と野菜OyOy」から
2021.06.29

『僕の献立 本日もお疲れ様でした』(光文社)。ファッション展示会や撮影現場に届けるお弁当や、人気アーティストのライブのケイタリングなどが、人気の麻生要一郎さん初のレシピ本。

 

 

こんにちは。 OyOyの佐藤です。

今回、ご紹介する1冊は、麻生要一郎さんの『僕の献立 本日もお疲れ様でした』です。

この本を読んで、良いこともそうでないことも容赦なしにやってくる毎日に、ごはんくらい楽しんで作って、大切な人たちと楽しく食べなきゃなぁ。「本日もお疲れ様でした」と、それだけでいいんだなぁ、とあらためて思えました。

 

私の母は、昔からなんでも作る人でした。子どもの頃は、簡単に食べられるものがどんどん発売された時代だったから、インスタント袋麺なども、もちろん食べてはいたんですが、基本的には、なんでも手作りしてくれました。

おやつには、ドーナツやりんごのケーキ、プリン。お祝いの日の中華ちまきやばら寿司。クリスマスはローストチキンやローストビーフ。朝は、起きたらちゃんと朝ごはんも並んでいました。

小さい頃は、喜んで食べていたけれど、ある程度大きくなると、もうそれは、ただ重くて。朝ごはんも食べず、作ってくれたお弁当もワザと忘れて行ったりして。
あなたのために」という、母の気持ちの重さから、逃げていたのでしょうね。

それから数十年経ち、私も母親になって、毎日ごはんを作りまくる生活になりました。
ここ10年くらい、ずっと忙しいままなのに(家で座って食べることがほぼない)、息子は成長して、ますます食べるという状態(大学でアメフトしてるし)。

料理の楽しさを本や野菜で伝える仕事をしているのに、自分自身は、楽しんでごはんを作っていなかった気がします。さらに、あれほどウザいと思っていた私の母のように「あなたのために」と気持ちだけが、突っ走っている状態になっていたのかも、と気づかされました。

ごはんを作り続ける中で、いちばんに思うのは「ただ食べるだけではなく、どう食べるか」。
どれだけバランスのとれたごはんでも、スマホを見ながらだったり、イヤホンを付けながらだと、食べた情景や味すらわからないし、記憶に残らない。

台所に漂うにおいや、ひと口食べただけで、その時に観た番組がおもしろかったなとか、お母さん機嫌悪かったよね、という思い出が意識せずともあふれてくるような……。そういう時間や体験がとても大切なんだなと、この歳になって思います。

本には、著者の麻生さんの人柄が伝わるエッセイはもちろん、毎日の食卓に活用できるおいしいレシピもたくさん掲載されています。
料理が盛られている器も、写真の後ろに見えるお部屋のしつらいもとてもすてき。
麻生さんと直接お会いしたことはないのですが、なぜか、昔から知っているような、不思議な感覚になりました。

 

「本と野菜OyOy」が入っている新風館の中庭。ますます緑が鮮やかに。

梅雨の晴れ間。うれしいけれど京都は30度超えます。

本と野菜OyOy
京都市中京区烏丸通姉⼩路下ル場之町586-2 京都市営地下鉄「烏丸御池」駅直結 新⾵館1階

営業時間 11:00〜22:00
TEL 075-744-1727
https://oyoy.kyoto/

Profile

佐藤夕伽子

YUKAKO SATOU

京都「本と野菜OyOy」にて本の選書・売り場作り、運営を担当。
子供の頃から本はもちろん料理書が好きで、編集・メーカー企画販促・カフェ・雑貨店・書店などで勤務。ずっと本と食に関する仕事に携わる。大阪府出身で大阪と京都を行ったり来たり。社会人と大学生の息子ふたりと三人暮らし+ねこ。

肩の力を抜いた自然体な暮らしや着こなし、ちょっぴり気分が上がるお店や場所、ナチュラルでオーガニックな食やボディケアなど、日々、心地よく暮らすための話をお届けします。このサイトは『ナチュリラ』『大人になったら着たい服』『暮らしのおへそ』の雑誌、ムックを制作する編集部が運営しています。

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