【フランスのパンと粉もののお話③】〜フランス北部・ブルターニュ地方発祥のそば粉の「ガレット」

池田愛実さんのフランス滞在記
2021.10.20

湘南でパン教室クラムを主宰しています、池田愛実です。
フランスのパンと粉もののお話、第3回はガレットについてです。

私にとって、フランスの思い出の味のひとつがガレットです。
ガレットとはフランス語で「丸く焼いた料理」全般を指しますが、今回はフランス北部・ブルターニュ地方発祥のそば粉を使ったガレットのお話です。

ハムや卵、チーズを入れた「ガレット コンプレット(完璧な・全部入ったという意味)」が定番ですが、ほかにもソーセージ、きのこ、トマトが入っているもの、サラダが添えてあるものなど、お店によって豊富なバリエーションがあります。

粉もの好きの私は、とにかくこのガレットが大好きでして、値段もレストランに比べたら気軽に食べられるので(ひと皿1000円前後)、フランスのパン屋で修業していたお金があまりない時でも、あちこち食べ歩いていました。


ガレットを食べ歩き。同じくブルターニュ産のシードル(りんごの蒸留酒)を合わせるのが鉄板です。

カフェのランチメニューに載ることもありますが、やはり専門店(クレープとともにメニューに並ぶので「クレープリー」と呼びます)がおすすめです。
小ぢんまりしていて、ブルターニュ地方独特の内装や食器を使ったところが多く、かわいらしいお店が多いのです。

忘れられないのは、週末にブルターニュ地方を一人旅した時のことです。
まず訪れたのは、サンマロという町。海に囲まれ、城壁の中には旧市街が広がり、まるでロールプレイングゲームの中のような世界。


サンマロの海に囲まれた城壁。この中に町があります。

そして、ところどころに小さなガレット屋さんがありました。サンマロで一泊した翌日は、雰囲気がよくて人がたくさん入っているクレープリーを選んで、朝ごはんにガレットを食べました。

サンマロで入ったクレープリーの外観。


サンマロのクレープリー。手前の台はガレットを焼くところ。


サンマロのクレープリーのガレット。おいしいバターがたっぷり!


サンマロのお菓子屋さんには、クイニーアマンやガレットブルトンヌと並んで、ガレットとクレープの生地も売られていました。

そこからバスに乗って30分、牡蠣の名所として有名なカンカルへ。

カンカル。たくさんの牡蠣の屋台が並んでいます

屋台で牡蠣を食べた後、お昼ごはんにまたガレットを食べようとおしゃれなクレープリーに入ったら、なんだか見覚えがある…。しかも、店員さんがカタコトの日本語で話しかけてきてくれるではありませんか。
ショップカードのお店一覧を見ていると、なんと日本で訪れていた「ブレッツカフェ」の本店だったのです。こんな遠くに来て、日本と同じお店に入るなんて!とビックリしつつも、日本を懐かしく思ったのでした。

そんな遠くまで食べに行けない…という方、クレープリーはパリにもたくさんあるのでご安心を。

ブルターニュからの列車が到着するモンパルナス駅周辺には、鉄道開通後ブルターニュ人が移り住んだため、クレープリーが多くあります。特にモンパルナス通りは「クレープ通り」と呼ばれ、ガレット好きには夢のような通りです。

中でも「ラ・クレープリー・ド・ジョスラン」は、ランチタイムには行列ができる人気店。ブルターニュ出身の店主が焼いてくれるガレットはボリュームたっぷりで、「パリでいちばんおいしい」と言われることもあるそうですよ。

ラ・クレープリー・ド・ジョスランのガレット。

ラ・クレープリー・ド・ジョスランのクレープ。クレープリーに来たら、食事にガレット、デザートにクレープと2皿頼みたい。

では、最後にガレット・コンプレットのレシピをご紹介します。
ガレットは難しいようで、実は意外と簡単にお家でも作ることができます。そば粉は成城石井などのスーパーマーケットや富澤商店などで購入可能です。朝食や昼食に、気軽に作ってみてくださいね。

【ガレット・コンプレット】

【材料(直径26cmのフライパン1枚分)】
そば粉…25g
水…80g
塩…ひとつまみ
サラダ油…少々
〈トッピング〉
卵…1個
ロースハム…2枚(半分に切る)
シュレッドチーズ…25g

【作り方】
ボウルにそば粉と塩を入れ、水を3回に分けて加えて泡立て器で混ぜ、室温で10分以上休ませる(前日に作って冷蔵室に入れておいてもいい)。
直径26cmのフライパンに弱火でサラダ油を熱し、生地を一気に流し入れ、フライパンを傾けて全体に広げる。
まん中に卵をそっと割り入れ、まわりにハム、シュレッドチーズをのせる。ふたをして中火にし、卵が半熟状になるまで加熱する。

ふたをとり、フライ返しで四辺を折りたたむ。底に焼き色がつくまで焼いたら完成。

フランスのパンと粉もののお話②〜フランスのパン屋さんで必ず売っている「シューケット」について】はこちら

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Profile

池田愛実

MANAMI IKEDA

1988年、神奈川県藤沢市生まれ。5歳と3歳の子ども2人のママ。 慶應義塾大学文学部で食育をテーマに学び、大学在学中にル・コルドン・ブルー代官山校パン科に通い始め、卒業後は同校のアシスタントを務める。26歳の時に渡仏し、現地のM.O.F.(フランス国家最優秀職人賞)のブーランジェリー2軒で経験を積み、帰国後は都内レストランのパンのレシピ監修・製造・販売に携わる。2017年から地元・湘南でフランスパンと暮らす教室「crumb-クラム」を主宰。初心者から学べるフランスパンとフレンチ惣菜を教えている。著書に『こねずにできる ふんわりもちもちフォカッチャ』(家の光協会)、『レーズン酵母で作るプチパンとお菓子』(文化出版局)、『ストウブでパンを焼く』(誠文堂新光社)。
https://www.ikeda-manami.com/
Instagram:crumb.pain

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