第19回 ベルギー菓子の定番中の定番「Suikertaart(砂糖タルト)」とナッツのお話

栗山さんのベルギーおいしいもの通信
2021.11.10

こんにちは、料理家の栗山真由美です。
いよいよ今年もあと少し。年末感が漂ってきましたね。ベルギーの冬は、イメージ通りとても寒いです。湿気がなく遮るものがないので、直接肌を刺すような寒さ。

冬の外出には、帽子が欠かせません。私も帽子は好きで、日本にいる頃からいくつか持ってはいたのですが、生ぬるかった。
東京での帽子は、やはりファッション要素が主ですよね。ちょこんと頭にのせるベレー帽的なものでは、ここでは役目を果たしません。

ベルギーの寒さは容赦ないので、耳がしっかり覆えるものが必須です。ニットなら、太めの毛糸でみっちり編み目が詰まっているもの。さらに、内側に布が張られている防寒重視の帽子もあります。ファッションより、生命維持優先です。ベルギーで初めて知った風を通さないズボンとか、防寒アイテムはいろいろあり、当初は驚きました。

でも、冬は寒くて暗いだけではありません。“寒い国は寒い時こそ美しい”と言われるように、アントワープも冬がいちばん美しい季節だと思います。マーケットの国・ベルギーのクリスマスマーケットやイルミネーションは本当に美しく、この時期の景色も独特で、人々の心に明かりを灯します。

季節が深まって、木の実やそれを使ったスイーツがぴったりになりました。少し、こっくりしたメニューをご紹介したいと思い、今回はベルギー菓子の定番中の定番、Suikertaartを選びました。


Suikertaartは、直訳すると「砂糖タルト(ケーキ)」という意味です。シュガータルトと言ったほうが聞こえがいいでしょうか? オランダ語では、タルトもスポンジ生地のケーキもTaartと言います。Suikerは砂糖です。


Suikertaart(砂糖タルト)なんて、ストレートな名前がついていると、さぞかし甘く大量な砂糖を使うのかと思いきや、それほどでもありません。砂糖を数種類入れるのが特徴です。今回はブラウンシュガーとグラニュー糖。アーモンドパウダーもたっぷり入れてサクサクに。


タルト生地も手作りしました。生地にも砂糖は少し入りますので、やはり食べた感想としては甘いのです。手間はかかっても、タルト生地を型に敷いたところがかわいくて、がんばりました。
ホールでのでき上がり写真を撮り忘れ、猛省しております。既にカットした図で、照明も暗いのですが、でき上がりカットです。
粉砂糖をふってお化粧します。ブラウンシュガーのとろりとした食感が残っているのも特徴です。本にはベリー類、桃やメロンのスライスを添えてもよいと書かれていました。私は好きなヨーグルトクリームを添えることが多いです。

さて、今回使ったのはアーモンドパウダーだけですが、ベルギーではナッツを使ったお菓子、スナックがたくさんあります。移民の多いお国柄からか、料理にもよく使いますし、ナッツ由来のオイル、ミルクもあります。

購入は日本と同じく、スーパーでパック詰めのものも買えます。ですが、エコ先進の地の特徴か、目からうろこの方法があります。ナッツだけではないのですが、多くのビオショップ(こだわりのあるスーパー含む)では量り売りがあるのです。これなら使いたい分量で買え、無駄が出ず、過剰な包装もなくエコなので、気に入って使っています。

最後に少し栄養のお話も。ナッツはその種類によって、栄養成分に多少の違いがあるものの、一般にオレイン酸を代表とする不飽和脂肪酸を豊富に含みます。不飽和脂肪酸は悪玉コレステロールを減らし、生活習慣病を防いでくれます。また、老化、免疫機能の低下、がんや動脈硬化などの原因となる物質のはたらきを防ぐビタミンEを含むことも特徴で、積極的にとりたい食材です。

この時期、ベルギーでも栗の木を揺らして栗拾いをしている人々を見かけます。リベラルなイメージのベルギーですが、住んでいる人々は素朴でシンプルなんですよね。栗はお店でも売っていますが、やはりお味は日本の栗のほうがおいしいと思っています。

同じく、この時期のスーパーで栗の隣に並ぶことが多いのがクルミ。私も大好きです。先日、ルクセンブルグの田舎に行ったのですが、こんなふうに売られていて感動しました。かわいいですよね。

 

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Profile

栗山真由美

MAYUMI KURIYAMA

料理家、栄養士。枝元なほみさんのアシスタントを経て独立。ポルトガル料理を中心とした料理教室「Amigos Deliciosos」を12年前から東京で主宰、日本ポルトガル協会の公認講師も7年間務める。2019年より、イギリス人のご主人とベルギー・アントワープに在住。著書に『ポルトガル流 驚きの素材組み合わせ術! 魔法のごはん』(エイ出版)、『「酒粕」で病気知らずになる ゆる粕レシピ』(池田書店)など。
https://ameblo.jp/castanha/ 
Instagram: mamicastanha

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