歳をとることは、努力をするということ 川邉サチコさん Vol.1
ヘアメイクアップアーティストとして、世界の一流デザイナーとともに働いてきた川邉さん。仕事はいつも「初めて」の繰り返し。興味があればなんでもやってみたい! そんな思いが、いつしか実力となって蓄えられました。頭で考えるより、やってみて、知らなかったことを知っていく過程が楽しい! 「歳をとって、怠け者になっちゃダメ」と川邉さんはいいます。いつも、自分の心がドキドキとときめくように……。そんなおしゃれの更新の仕方をうかがいました。
撮影の日。「よろしくね」と現れた川邉サチコさんは、キリッとした白シャツ姿。襟の形がほれぼれするほど美しいこのシャツは「サンローラン」のものだそう。合わせたデニムはなんと「ユニクロ」!
「あれこれ試してみて、私の体型にいちばん合うのが『ユニクロ』だったんです。日本人に合わせてデザインされているのでしょうね」
いつも洋服選びはこんなふう。ブランド名に惑わされることなく、「これが好き」と、直感で選びます。
川邉さんが、ヘアメイクの仕事を始めたのは、たまたま嫁ぎ先の家業が美容家だったから。
「結婚したら、専業主婦になるつもりで、働く気なんてなかったんですよ」と聞いてびっくり!
ところが、結婚してすぐに、研修のためにパリに出かけるお義母さまに同行した際、そこで見聞きしたものにすっかり夢中になりました。
「義母が研修を受けている間に、私は、通訳つきで、パリのメイクアップスクールに送り込まれたんです。そこで学んだことがおもしろくて」
帰国後すぐに仕事を開始。「クリスチャン・ディオール」「イヴ サンローラン」「ニナ リッチ」など、海外メゾンが日本でオートクチュールを発表する際に、ヘアメイクを担当するようになりました。
当時から、ご自身のおしゃれに関しては、好き嫌いがはっきりしていたのだとか。
「デザイナーによく叱られました。彼らは自分のイメージどおりに着てほしいんですよね。でも、私は好きなように着ていいじゃないって思っていたから」と笑います。
ショーでの仕事に加えて、日本の女優やモデルのヘアメイクも担当。37歳で離婚後は、ご自身で美容室を持ち、娘のちがやさんを育てながら仕事を続けました。
人生の舵をぐいと切ったのは、50代になったころ。お母さまの介護のために仕事をセーブし、一般のお客様を美しくするためのプライベートサロン「KAWABE LAB」をオープンしたのです。
「年齢を重ねる中で、自分に自信をなくして、迷ったり、おしゃれを諦めてしまったり。そんな方たちのお役に立てたらと思ったんです」と語ります。今は、ちがやさんと一緒にサロンを運営。
「いいたいことをポンポン言い合うから親子漫才みたいっていわれるんですよ」と笑います。
photo:回里純子 text:一田憲子
どこの洋服? など、もっと詳しい内容は、ただいま発売中の
『大人になったら、着たい服 2020 春夏』でご紹介しています。
ご覧になってみてくださいね。
Profile
川邉サチコ
1938年生まれ。女子美術大学卒業。23歳で渡仏し、パリのメイクアップスクールで学ぶ。1960年代、「クリスチャン・ディオール」のオートクチュールコレクション、三宅一生氏、芦田淳氏などのコレクションのヘアメイクを担当。1970年代から広告、テレビ、雑誌などで女優、タレント、モデル、またデヴィッド・ボウイなど海外アーティストのイメージメイキングを手がける。1994年、大人のトータルビューティサロン「川邉サチコ美容研究所」(現「KAWABE LAB」)を開設。現在は娘で美容家の美木ちがやさんとともに同サロンを運営。9月11日に待望の新刊『あの人が着ると、パーカーがなぜおしゃれに見えるのか』(主婦と生活社)が発売されたばかり。
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