「精霊という名のシャツ」…おすすめ帖vol.64

おしゃれさんコーディネート
2021.09.11


『ナチュリラ』本誌でも、季節ごとのリアルクローズとそのおしゃれな着こなし方を提案してくださっている人気セレクトショップ「アナベル」。店主の伊佐さんによる「季節のおすすめ帖」連載コラムです。季節ごとのおすすめの品を月に2回、ご紹介しています。

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photo:川本浩太 text:伊佐洋平 model:伊佐奈々

 

この数年、「シャツ」を本当によく着ています。そもそもシャツが大好きではあるのですが、メンズでお仕事をしていた時代とは全く違うデザインや雰囲気のシャツにも多く袖を通し、大人の女性が長く愛用できるシャツの提案ができたらと考えています。今回、いいシャツを作るデザイナーと出会いましたのでご紹介させて頂きます。とはいえ、出会ったのはおよそ2年前のこと。こちらもしっかりとしたご紹介をする機会を逸していたブランドの一つなのです。

 

 

「kläuse(クロイゼ)」という名前のブランドです。

 

 

シャツは、伸縮性のない布地のお洋服では最も肌に近いところで着用するアイテムですので、フィット感のあるデザインでは、「型紙(パターン)」「素材」「縫製」の全てが高いレベルにあることが着心地の良さに繋がります。

 

 

そこで難しいのは、カジュアルな日常着で上質なシャツを提案する際のコストだと思います。贅沢なプロダクトで、ハッとするようなものつくりをする魅力もありますが、一方で多くの人に着ていただける範囲内で、最良のものつくりをする凄さもまた魅力的です。

 

 

「kläuse(クロイゼ)」のデザインはその後者にあたり、着心地がよく、毎日でも、そして室内でも着続けられるリラックス感も備えた着心地の良さを持っているように感じます。

 

 

以前からブログなどでも書いていますが、お洋服を選ぶ際の最大のポイントは、いい加減なようにも聞こえてしまうかもしれませんが、「パッと見の面(つら)」です。そこでの印象には、自身の好みが凝縮されているように感じます。

 

 

アンティークのドレスシャツに見られる襟の仕様を参考にデザインされた印象的なワンピースカラーは、折り返したチビ襟が可愛らしい。

 

 

台襟が高く、カフスが長いと少し偉そうな印象を抱くのですが(僕個人の感想です)このシャツはクラシカルではありながら、台襟もなくカフスは幅が狭い。僕には好印象でした。

 

 

そして身幅や袖付けには少し余裕を持たせながら、袖幅はスリムで女性には嬉しい、ゆったりとすっきりとしたシルエット。

 

 

美しいのはデザインばかりではない。我々が最も注目したのは、縫製仕様とその美しさでした。端コバ(切り替え位置ギリギリの際)を狙った細やかなステッチは、なかなかお目にかかれない美しさ。

 

 

そんなシャツを下に着て、秋は重ね着を楽しみたい。

 

 

クラシックなシャツにクラシカルなアイテムを素直にスタイリングするファッションも大好きではありますが、クラシックなものほど今の空気を入れたがるのがアナベルのスタイルです。もちろん、今の空気感にオーセンティックなクラシックアイテムを放り込むのもまた楽しい。

 

 

ビッグスウェットにオーバーコートを重ねて。

 

 

こちらはまた違ったシャツ。

 

 

前立てが途中でカーブしていますね。昔はシャツが正装に使われることが多く、タックインすることが当然であった時代において、ズボンの中に隠れる裾の部分は、唯一の遊びどころであったそうです。そのために、裾のデザインに個性を求めるテイラーやデザイナーが多くいました。こちらのシャツは、その名残を象徴的にデザインしたのが特徴です。

 

 

そして「kläuse(クロイゼ)」のシャツは横姿と後ろ姿も素敵です。

 

 

シャツ一枚の季節から重ね着を。インナーで少ししか見えていないにせよ、カットソーやニットを着ているのと、シャツをインナーに使うのでは、印象が大きく異なります。その違いを楽しみましょう。

 

 

「kläuse(クロイゼ)」って聞き慣れない言葉ですよね。「kläuse(クロイゼ)」というブランド名は、東スイスの農村で行われる「シルベスタークロイゼ」という行事から名付けたそうです。シルベスタークロイゼでは、「美 «Schöne»」「醜い «Wüeschte»」「自然(または森)« Natur(Wald) » 」といった3種の偶像である精霊が無病息災を祝し、年末に村々を練り歩く行事です。その精霊を「kläuse(クロイゼ)」というのですが、デザイナーの石原さんは、その存在と言葉の響きに強く惹かれ、自らのブランドに冠したそうです。

 

 

「kläuse(クロイゼ)」という偶像が、東スイスの人々の長年の暮らしの中から滲み出た、「希望」であり「情熱」であり「誇り」であるように、自身の情熱を注いだ洋服を作り続けたいという願いが込められているそうです。

 

 

そして我々が「kläuse(クロイゼ)」のシャツを初めて見て、デザイナーの石原さんとお話をする中で最も驚いたのは、ご自身でパターンを引き、ご自身で縫って作っているということでした。確かに…ここまで質の高い縫製がご自身で可能であるとなると、なかなか納得のいく工場も見つからないのかもしれません。今後は、工場の職人さんとのコラボレートも楽しみなブランドとして、ぜひお勧めしたい逸品です。

 

 

ノーカラーシャツ:「kläuse(クロイゼ)」 ¥20,900(税込)

プレインシャツ:「kläuse(クロイゼ)」 ¥23,100(税込)

ベーシックシャツ:「kläuse(クロイゼ)」 ¥24,200(税込)

発売中の『ナチュリラ』夏号vol.54では伊佐さんが選んだ“”涼やか・きれいを叶える6つのアイテムをご紹介していますよ。本誌のほうもぜひご覧になってみてくださいね!

 

←その他の「アナベル」の着こなしはこちらから

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