ボーダーの本数の‟秘密”とは?「KANELL(カネル)」のカットソー

今日のひとしな
2022.03.29

~「berkarte」より vol.29 ~

人生一度は袖を通すボーダーのカットソー。

様々なスタイルが存在する中、いつまでも着たいと思うデザインと、いつまでも着られる丈夫さを兼ねたおすすめの一枚を、今日はご紹介したいと思います。


フランス北西部に位置するブルターニュの港町で創業した、「KANELL(カネル)」。

創業者であるピエール・ブレストは、複数のアパレルメーカーのセールスマンを続ける傍ら、カネル・インダストリアルという個人会社を立ち上げ、古い編み機を買い取るところからマリンウエアの製造をはじめました。1923年に自身のブランドとして「KANELL」をスタート。後にフィルーズ・ダルボーという名前で、フランス軍にユニフォームを提供するまでに成長し、時を経て、2020年、ピエールの思い描いたマリンウエアを具現化するべく再始動しました。


「KANELL」を代表する‟ボナパルト”は、クルーネックに近い首の詰まった作りのオーソドックスな形で、スカートにもパンツにも合わせのしやすい定番のモデル。


素材はコットン100%。編んで作られるニットと、縫製されたカットソーを合わせた‟ニットソー”と呼ばれるもので、薄手のニットのような素材感。横編み機を使って編み込まれた生地は、しっかりと安心感のある丈夫な仕上がり。伸縮する生地が着易く、ツヤのある表情が上品です。また、洗えば洗うほど網み目が詰まり、さらりとした着心地に変化していく、エイジングも楽しめます。


嬉しい作りは細部にも。肩や脇の部分に生地を重ねて縫製することで補強され、伸びにくくなっていること。ネックの広がりや、生地への負担が少なく、長持ちするポイントと言えそうです。


作り以外にも興味深いマニアックなポイントは、ボーダーの本数に意味と制約があること。

聖地フランスの数ある文献を紐解いていくと、近代戦術の基礎を作り上げたナポレオンの戦勝数、「36」にまつわるもの。古くから船乗りのユニフォームとして愛されてきたマリンボーダーを1858年にフランス軍が公式に下級兵の制服として採用した際、ナポレオンの記録に敬意を表し、ボディに21本、袖に15本のボーダーを配置したものが正式なマリンボーダーであると規定されたのだそうです。

ただ、それには生産者も苦労が伴うもので、サイズそれぞれに合わせてボーダーの幅を調整しなければならない、という多大な労力を必要とするもので実際には36本を統一させるには難しく、限られたサイズにおいて若干の数だけ生産することにとどまったそうです。


現行の「KANELL」は従来通りの36本のボーダーでの生産が可能となっていますが、ボーダーの本数にそんな手間と経緯があると知ると、また違った目線の愛着が湧いてきます。


長く愛用できる確かな一枚、是非一度手に取ってもらいたいカットソーです。

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