名古屋編vol.12~平日はランチ、土曜日はカフェ。素敵な母娘が営む「mrs.kitchen(ミセスキッチン)」
photo&text:こんどうみき
初めて訪れたのは、もう15年以上前。まだ20代前半だった私は、緑色のドアを開けた瞬間、物語の中へ迷い込んだような空間にカルチャーショックのごとく衝撃を受け、深く魅了されました。そして今もなお、訪れるたびに気持ちを高揚させてくれる大好きな場所は、住宅街でブドウの蔦に覆われて佇んでいます。
「mrs.kitchen(ミセスキッチン)」のはじまりは1991年。山本由江さんがカレー屋さんとして始めたお店です。年齢や体調を考慮しながら少しずつ形態を変えて、4年前から娘の奈緒さんとふたりで食事やケーキを作って訪れる人をもてなしています。
写真は玄関からカフェへと通じる空間。毎回うっとりしながら、左手奥にあるドアをそっと開けます。
DIYが得意な由江さんがコツコツと作り上げた店内は、凛とした美しさと素朴なあたたかさが同居して、なんとも心地いいのです。「ペンキを塗ったり金槌を叩いたりする母の背中を見て育ちました」と笑う奈緒さん。日差しを調整できる室内窓まで由江さんのお手製だそう。
小さなキャンドルが灯り、風合いのいいリネンが敷かれた席でゆっくりと味わいたいのは「ぱんのセット」。水~金曜のみのランチメニューで、野菜やキノコがふんだんに入ったグラタンと、トマトベースの野菜シチューの2種類。小さなジュース、パン、サラダが付きます。
丁寧な仕事ぶりを感じる味と見た目で、メインのグラタンやシチューはもちろん、奈緒さんが自家製天然酵母で毎朝焼くという丸パンも、様々な食感が楽しいボリューム満点のサラダも、滋味深くてどこかホッとするおいしさです。
陶芸家の坂上のり子さんに作ってもらったというシチューやサラダの器をはじめ、カトラリーやお手拭きなども抜かりなく素敵で嬉しくなります。
季節のデザートは3種類。この日はフルーツのトライフルをいただきました。ブラマンジェやアイスクリームも入っていて、暑い季節にぴったり。ショートケーキやタルトも可愛らしくておいしいんですよ。土曜日はデザートとドリンクのみのカフェとして営業しています。
そして、食前や食後に店内奥の半地下の空間“コヤ”をのんびりと眺めるのも楽しみのひとつなのです。
遠い国の雑貨好きの少女が暮らしているかのようなディスプレイで、いつも隅々まで見てまわってしまいます。購入できるものもあるので、気に入ったら相談を。
窓辺に並ぶ小さな小さなてるてるぼうずに、思わずにっこり。やさしさを感じる由江さんのインテリアのセンスが大好きです。
母娘ともに裁縫や刺繍が趣味で、乙女心をくすぐられる作品があちらこちらに潜んでいます。写真はリネンの端切れで作ったという小さな小さな袋。ときどき作品展が開かれることも。
好みも趣味も共通する仲良し親子の姿も、ここの魅力だなぁと感じます。「一緒に働くことになったとき、“毎日を楽しく!”ということだけ約束したんです。無理しすぎず、流されず、自分たちらしく営もうねって」と笑い合うふたり。素晴らしいセンスと穏やかな人柄に触れられて、お店を出るときはいつも心がほこほこに……。遠方からの友人にも決まって紹介する、名古屋の自慢すべき一軒です。
愛知県名古屋市千種区城山新町2-44
TEL:052-762-6772
営業時間:水~金曜は11:00~14:00(ランチのみ)
土曜は13:00~17:00(カフェのみ)
定休日:日~火曜
※現在は夏季休業中で9月中旬より再開予定
http://www.mrs-kitchen.com
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