甘辛タレの江戸好み焼き団子「亀屋大和」
●『江戸買物独案内』で紹介された、下町の老舗菓子屋
問屋街の東神田にある「亀屋大和」。文政7(1824)年刊の江戸のガイド書『江戸買物独案内(えどかいものひとりあんない)』や相撲番付に見立てた江戸の御菓子司番付などにも「亀屋大和掾(かめややまとのじょう)」の名を見ることができる、歴史のある和菓子屋です。屋号の〈大和掾〉は、宮中から授けられる称号であり、老舗に与えられたものだったそう。とはいえ、江戸の大火に震災、戦災と文献は残っておらず、口伝によれば幕末の5代目のころには今の地に店があったと言います。
トロリとタレを絡めた焼き団子(1本100円)。2代、3代と愛される江戸らしい焼き団子。
現在9代目の古島満さんは「今は焼き団子やどら焼きが名物菓子のように言われていますが、7代目の祖父のころは主に上生菓子を作っていました。当時の問屋街には住み込みで働く女の子が多くて、店主も礼儀作法の一環で茶道を習わせていたから、主菓子(おもがし)の依頼が多くてね」、と店の歩みを教えてくれました。
問屋街にひっそりと佇む「亀屋大和」。雰囲気のある木枠の扉は、戦前から使っているもの。
●気風のいい焼き団子と餡にこだわる人気のどら焼き
一日200本は仕込むと言う、名物の焼き団子。もっちりコシのある焼き団子には、トロリと甘辛いタレがたっぷりからめていただきます。「タレは醤油と砂糖とみりんを使い、葛と片栗粉でまとめています。タレの味は、甘いだけではなくて少し辛めですね。江戸らしい味といえば、そうなのかも」と古島さん。タレの味はもちろんですが団子の大きさも、江戸の菓子屋らしい気風のよさ。お客さんからよく「亀屋大和の団子は大きいね」と言われるそうです。
香ばしく焼き目がつくように表裏と炙っていく店主の古島さん。
秘伝のタレをつけて出来上がり。団子は大きめでタレはたっぷり、焼き団子。
また焼き団子に負けず劣らす人気があるどら焼き。北海道産小豆を使った餡は、あずきの粒を残すように焚き上げ、その粒感も楽しめるように仕上げているそう。餡の味を楽しめるようにと、以前はハチミツを加えていた皮は、砂糖だけのシンプルな皮へ。焼き団子やどら焼き、手掛ける菓子すべてにおいて、受け継いできた味を守りつつ、時代にあわせ工夫を凝らしています。「質のいい材料で奇をてらわずに真っ当な菓子をつくるという信条は変わりません。でも時代にあわせたものを手掛けていくことは大事」と、古島さん。
あっさりした皮としっかり甘い餡が魅力のどら焼き(200円)。夏限定の「アイスどら焼き」、梅の甘露煮入りの「梅どら」なども。
●お酒と相性も◎、焼き団子で月見酒を楽しもう
店の工房で菓子をつくる職人店主を支えて、店を切り盛りする女将のひとみさん。嫁ぐ前は、和菓子が苦手だったとか。「うちの菓子を食べて、初めて和菓子っておいしいって思いました。材料にこだわり、きちんと作っている和菓子はおいしい。そのことを伝え続けていきたい」と話します。
焼き団子はお酒との相性もいいので、辛党派の手土産にもいい。
さて「亀屋大和」では、十五夜、十三夜の月見団子は予約注文のみ受け付けているそう。月のうさぎに、亀の団子を供えるとは、なんだかおとぎ話みたい。甘辛の焼き団子は、お酒との相性もいい。焼き団子を片手にお月見酒なんていかがでしょうか。
*商品すべて税込、2019年9月現在のものです。
text&photo:森 有貴子
東京都千代田区東神田1‐14‐10 古島ビル1F
TEL:03‐3866‐3804
営業時間:9:00〜18:00
休日:日曜
http://www.kameyayamato.co.jp/
Profile
森有貴子
編集・執筆業。江戸の老舗をめぐり、道具と現代の暮らしをつないだ『江戸な日用品』を出版、『別冊太陽 銀座をつくるひと。』で日本橋の老舗について執筆(ともに平凡社)。落語、相撲、歌舞伎、寺社仏閣&老舗巡りなど江戸文化と旅が好き。江戸好きが高じて、江戸の暦行事や老舗についてネットラジオで語る番組を2年ほど担当。その時どきで興味がある、ひと・こと・もの、を追求中。江戸的でもないですが、instagram morissy_edo も。
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