遊牧民ならではの織物、美しい食卓布

今日のひとしな
2021.10.25

~ 「エイトデイズ」より vol.25 ~

今日はソフレと呼ばれる食卓布のご紹介です。テーブルの上に敷くのですか?とよく訊かれますが、そもそも遊牧民はテーブルを持ちませんので、テーブル代わりになる布という意味です。一般的には細長いキリムを用いますが、ここでご紹介するのは正方形の「ナンソフレ」で、その名の通り遊牧民の主食となるナンを保管するためのキリムです。焼きたてのナンを包んで保温しておき、食事の時に広げるという使い方もするそうです。遊牧民ならではの織物ですね。

1枚目はイラン南部のアフシャール族のソフレです。大胆なデザインとメリハリの利いた幾何学文様が特徴です。

およそ120cm四方ほどの大きさで、フリンジとして見られるタテ糸が織り込まれ、風呂敷のような形状になっています。とてもシンプルな柄で中央はほぼ無地ですが、周り縁には紋織で可愛らしい小紋のようなモチーフが印象的です。白さが際立つ木綿の糸で織り込まれており、アフシャール族のお洒落心とセンスを感じるソフレです。


もう1枚はバルーチ族のナンソフレです。

トルコ語ではソフラとも呼ばれるナン包みは限られた部族にしか織られないようで、アフシャール族とバルーチ族にその多くが見られます。バルーチ族の婚礼の際の嫁入り道具としても欠かせないナンソフレは、気持ちのこもった丁寧な仕事のものが多く、さまざまな技法を用いて織られています。今回のソフレも緻密な織技法による紋織と綴織の組み合わせになっています。バルーチらしいシックな色彩とも相まって完成度の高い毛織物です。濃紺や燕脂色の濃いめの色彩の中に、織り込まれた白とオレンジがアクセントになっています。


バルーチ族やアフシャール族の織物は日本の家との相性がよく、特にキリムは和室にも良く似合います。少し渋いかなと思われるかもしれませんが、長く使っていくほどにその良さが感じられるでしょう。

アフシャール族 イラン南部・シルジャーン地方 ナン用ソフレ 
綴織 羊毛 122x128cm 20世紀中頃

バルーチ族 アフガニスタン西部・アドラスカン地方 ナン包用ソフレ
綴織+紋織 羊毛 140x130cm 20世紀中頃

 

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