厳しい自然と対峙してきた遊牧民ルル族の、色彩豊かなラグ

今日のひとしな
2021.10.29

~ 「エイトデイズ」より vol.29 ~

イラン西部からイラク国境にかけて連なるザクロス山脈を中心に遊牧を続けるのが、ルル族(ロリ族やルリ族などとも呼ばれます)です。カシュガイ族の暮らすエリアの北西になります。現在のイランではルルというと「山の人」という印象があるようですが、かつてはイラン全土に住んでいた部族であり、誇り高いイラン人の母語であるペルシア語の原型に近いルル語やラキ語を話す人々です。

野生味あふれる力強い動物の頭モチーフ(アニマルヘッドコラム)と、トライバルラグの醍醐味を感じるメリハリのある色彩が特徴です。今回のラグもルル族らしいブルーと中央に並ぶ菱形紋様のものですが、フィールドの茜色とのバランスも個性的です。

結び目は比較的大きめです。歪みもありますが、ハムセやカシュガイなどにも通じるこの地域独特の風合いが魅力です。

このラグはタテ糸が少し独特です。原毛色のような濃茶や、赤っぽい色なども見受けられます。化学染料が退色していく過程で色移りしていくものは時々見られますが、どうもそのような感じではないですね。染められた糸も使われているのでしょうか? タテ糸はフリンジ部分以外は見えないですが、絨毯全体の風合いに影響します。トライバルラグを選ぶときは、是非ここにも注目してみてください。

イラン西部において、標高4000メートル級のザクロス山脈を超える遊牧は大変過酷です。同じエリアを遊牧するバフティヤリー族の記録映画を、「tribe」榊さんに見せてもらったことがあるのですが、想像を絶するものでした。1930年代にアメリカ人によって撮られたもので、当時すでにバフティヤリー族は「幻の遊牧民」と言われていたようです。ルル族は移動のための荷物を減らすため、夏の野営地ではテントを使わず厚手のラグなどを敷いていたそうで、それが現在のギャベの原型です。このラグもそのように使われていたのかもしれませんね。そうやって当時の暮らしを想像してみることも、トライバルラグの楽しみのひとつです。厳しい自然と向き合ってきたルル族の力強さを、特に感じることができるラグだと思います。

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