植物の育ちは土で決まる! 土と肥料選びの基本【園芸デザイナー・三上真史さんに教わる「春の庭づくり」vol.5】

特集:園芸デザイナー三上真史さんに教わる「春の庭づくり」
2024.03.15

草花が芽吹き、樹木の緑が少しずつ深まり、植物があわただしく活動をはじめる春は、ガーデナーにとって1年でいちばんワクワクする季節。園芸店にはさまざま植物が並び、どれを植えようかと選ぶのも楽しい時間ですね。けれど、「可愛いから」とつい見た目だけで選んでしまうことはありませんか? 植物には合う合わないがあるので、庭の環境や手入れ方法に適したものを選びたいところ。そこで、NHK「趣味の園芸」の講師としても活躍している園芸デザイナー・三上真史さんに、たくさんの苗や土、肥料などガーデニンググッズが揃う「ジョイフル本田」にて、ガーデニング初心者が知っておきたい「土と肥料選びの基本」を教えていただきました。

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迷ったら、あらかじめブレンドされた「培養土」がおすすめ

植物にとって土は人間にとっての家のようなもの。快適な住環境が必須です。根は呼吸もしているので、通気性の良い粒々の土でないと植物の育ちも悪くなってしまうそう。「植物がうまく育つかどうかは土で決まると言っても過言ではありません。園芸店に行くと『バラ専用の土』『観葉植物の土』などさまざまな土が売られていますよね。それらはその植物が育つために最適な土や肥料がブレンドされていて、ph値(酸度)もその植物に合ったものに調整されています。ですがその意味を知れば、必ずしも特定の植物専用の土を買う必要はありません。まず共通する良い土の必須ポイントは、しっかり根が呼吸できるかどうか、つまり土の通気性なんです。『植物を育てるには粒状の土やふかふかの土がいい』と耳にしたことがあるかもしれませんが、通気性のない泥のような土では根が呼吸できず、根腐れしてしまい、植物は育たなくなってしまうんです」

三上さんが、ガーデニング初心者におすすめしたいのが、花野菜用の培養土。培養土とは、植物が育ちやすいようあらかじめ数種類の土や肥料などがあらかじめブレンドされている土のこと。パッケージを見てみると何が入っているか書いてあるので、まずは確認してください。

 

熟成された腐葉土が入っていると◎



「しっかりと発酵された堆肥や腐葉土が含まれた培養土を選んでもらうとよいですね。堆肥や腐葉土は有機物ですので、それを餌とする微生物が増えてくれます。その微生物が出すのり状の分泌物が土を丸く粒々にしてくれるんです。これにより、理想的な通気性と水はけの良い粒状の土となってくれます。微生物が植物が良く育つ土を作ってくれる、まさに“生きた土”になります。

 

培養土+赤玉土でオールラウンダーな土に



「土選びに迷ったらほとんどの植物で使えるオススメの配合があります。熟成した堆肥や腐葉土が入っている培養土を選んでもらい、そこへさらに通気性と水はけを確保するために『赤玉土』を半分ほど混ぜます。この赤玉土は既に粒々とした土なので水はけや通気性を高めてくれ、かつ水持ちも良いので培養土には欠かせない土なんです」

培養土にはあらかじめ赤玉土も入っているものもありますが、その量を増やすことで、初めから多くの植物にとって育ちやすい万能な培養土にすることができます。「赤玉土は粒のサイズで大中小に分けられて販売されていますが、僕は基本的に中粒を使っています」

それでも水はけが悪いようなら、パーライトを混ぜ込むのも手。見た目はプラスチックのようにも見えますが、実は天然鉱石を高温で焼いたもの。「発泡スチロールのようにたくさんの空気穴ができていて、すごく軽いんです。このパーライトを土に混ぜてあげると、今まで土が固くなってしまってあまり植物が育たなかった土も、ふかふかの水はけのよい土に変わりますよ」

 

年に1回は耕してふかふかに

あとは、耕すことがとても大事。「はじめはふかふかな土でもだんだんと土は固くなってしまうので、1年に1回は耕してあげるとよいでしょう。さらに長年植物を育てているとどうしても土の中に雑菌などが増えて、植物がうまく育たなくなってしまう連作障害というものが起きてきます。そこで土の消毒も兼ねて真夏か真冬が耕す絶好のタイミング。その時期に思い切って植物を抜いて土の天地を返してあげると、真夏なら日光消毒になり、真冬なら冷凍消毒にもなって、土の再生になるんです」。その際に腐葉土ないし堆肥と、パーライトという天然鉱石を高温で焼いたものを混ぜるのもおすすめだそう。「パーライトはたくさんの空気穴ができていて粒々なので、通気性抜群で水はけも良く、すごく軽いんです。赤玉土のように土に混ぜてあげると、植物の育つふかふかの土に変わりますよ」

土は植物にとって生きるための大事なおうち。ぜひ土に目を向けて植物を育ててくださいね。

 

肥料の三大成分
「窒素、リン酸、カリウム」の働きを知る
覚え方は”母なる根”


土をふかふかにするよう心がけていても、庭や鉢植えの場合は自然界と違って養分が循環しづらく、生育が悪い場合は肥料で養分を補ってあげる必要が。肥料も「観葉植物用肥料」など専用の肥料が販売されていますが、こちらも必ずしも専用のものを買う必要はないとのこと。「肥料の三大要素は『N(窒素)』『P(リン酸)』『K(カリウム)』の3つ。Nは葉や茎、Pは花や実、Kは根の成長を助けてくれる成分です。この3つの成分が100gあたりどれくらい入っているかの比率が、NPKの順番で肥料のパッケージに記載されているのでまずは確認してみてください。丈夫に育てたいものはカリウムが多めのもの、花をたくさん咲かせたい場合はリン酸が多めのものを選ぶとか、観葉植物など葉や茎に栄養を与えたいものには窒素が少し多めなものなど、育てたい植物に合った配分の肥料を選んであげるとよいですね。それぞれの成分がどこに効くかについてさえ分かれば、肥料選びが簡単になりますよ。覚え方は、僕の自己流ですが、窒素・リン酸・カリウムの順番で『母なる根=は(葉)はな(花)る根』という風に覚えました。ぜひみなさんもお店で思い出してみてくださいね」

text:大勝きみこ photo:松村隆史

 

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Profile

三上真史

Masashi Mikami

1983年、新潟県生まれ。2011年から2021年3月までEテレ「趣味の園芸」ナビゲーターを務め、同年4月より講師として「三上真史ニッポン花づくし」を、2023年4月より「三上真史ニッポン実りのわざ」を担当。また、16年からtvk「猫のひたいほどワイド」水曜MCを務める。16年3月「第33回全国都市緑化よこはまフェア広報親善大使」、18年より「横浜の花と緑をPRするアンバサダー」に就任。21年6月よりGreenSnapのオフィシャルアンバサダーに就任。ガーデンコーディネーターや1級FP技能士、簿記等の資格を持ち、園芸や経済に関する講演会・イベントなど多方面で活躍中。Youtube「三上真史の趣味は園芸チャンネル」にて植物の育て方や楽しみ方を配信中。

blog:Mikami garden
Instagram:@engeiouji
X(twitter):@engeiouji

 


 


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