食で「からだにいい」を少しずつ口から取り入れるvol.2
アーユルヴェーダは風・火・水(土)の要素を組み合わせたエネルギー「ヴァータ」「ピッタ」「カパ」の3つの要素で、体質や体調を診ます。これらの要素のうち、ひとつが増えすぎたり、バランスを崩したりすると、不調の原因に。三原さんが主宰している教室では、アーユルヴェーダの理論に基づいて、その季節の体の調子を補う食材、それも日本人が普段食べなれている、スーパーで買える食材や和食に近い調理法を使った料理と、暮らし方を教えるものだとか。カレーばっかりというわけではないのですね~。
「例えば私は、地方出張に出かけて帰ってくると、やたらとラーメンを食べたくなっちゃうんです(笑)。それは、移動したり、人とたくさん会ったりすると『風』の要素が乱れるからで、動物性油脂の入った温かい汁ものを食べると、その乱れを補ってくれるんですね。アーユルヴェーダを勉強するとそんな風に、自分が『食べたいな』と思うものが、実は自分の体の乱れを見事に補ってくれるものだった……ということが、だんだん理解できるようになっていきました」
三原さんが主宰するアーユルヴェーダの教室でも、参加する生徒さんたちに、普段の食事を記録してもらい、お互いにシェアすることを続けているそう。すると不思議なことに、暑かったり寒かったり、乾燥したり湿気が多かったり……その時季や自分の体質、また仕事や暮らしの状況に合わせ、誰もがそれぞれに、自然と「必要なもの」を手に取っていることが分かってきたそう。
「そして、さらにアーユルヴェーダの理論を頭に入れて実践するようになると、例えばひどい花粉症に悩まされていた方がすっかり治ったり、気持ちがふさぎがちだった人が驚くほど明るくなったり、1年のクラスで、体調にものすごい変化があったんです。改めて、食べ物って本当に大事だし、頭で考えた欲望ではなく、体が『食べたい!』と感じているものを、きちんと感じ取って、日々食べていくことが、本当に大切だと感じたんです」
「アルケー」の食堂で提供する料理も、そんなアーユルヴェーダや薬膳の理論を取り入れたメニューになっています。お客さまがそれぞれ、「今日はこの料理が食べたいな」と選んだものが、実は体にもこんないい効果がある。おいしくごはんを食べながら、その関係性を知り、自分の体調を考えるきっかけになれれば……と、考えているそう。
「人って、『体にいいから、これを食べるべき』と頭で考えてもなかなか続かないし、そんな風に食べても、あまり効果が出なかったりするような気がします(笑)。それよりも、『今、自分は何を食べたいか』にフォーカスして、そこからできることを考えたほうが健康にいいし、結果的に長く続くと思うんです」
この日、私たちがいただいた定食メニューは「太刀魚と夏野菜の紙包み豆鼓蒸し」。胃・肝・腎に滋養を与えてくれる太刀魚を、消化を促進し、「気」と「血」の巡りをよくしてくれる豆鼓と合わせて蒸したメニューです。太刀魚はほろっとしてやわらかく、夏野菜もジューシー。小鉢2品にごはん、お味噌汁もついて(お茶は別料金)、おなかも大満足な充実セットです。
そのほか、定番メニューでは、「豚の薬膳煮込み」(体を潤す効果がある豚肉を、棗・朝鮮人参・枸杞などの漢方とじっくり煮たもの)、「4種の豆のペルシャ風煮込み」(夏の暑さを取り除き、潤いを与える緑豆と、胃や腎の働きを正常化するいんげん豆など、4つの豆の煮込み)、「ひじきと鮭のしんじょ蒸し 生姜あんかけ」(血行をよくし、水分代謝をよくするひじきと、胃を温める鮭を蒸したもの)などがラインナップされています。
photo:砂原 文 text:田中のり子
東京都江東区新木場1-4-6 CASICA内
TEL:アポセカリー03-6457-0826 キッチン03-6457-0827
営業時間:11:00~18:00(ラストオーダー17:30)
定休日:月曜
https://arkhe.jp
Profile
三原寛子
料理ユニット「南風食堂」主宰。雑誌やWEBでの料理制作、アーユルヴェーダの料理教室「マハト・チューニング」の料理講師、店舗の料理監修や商品開発など幅広く活躍。共著に『わたしのとっておき麺』(家の光協会)など。
https://www.nanpushokudo.com/
田中のり子
衣食住、暮らしまわりをテーマに、雑誌のライターや書籍の編集を行う。『ナチュリラ』(主婦と生活社)は創刊当初からのスタッフ。構成・執筆をした『これからの暮らし方2』『こころとからだを整える』(ともにエクスナレッジ)が好評発売中。
肩の力を抜いた自然体な暮らしや着こなし、ちょっぴり気分が上がるお店や場所、ナチュラルでオーガニックな食やボディケアなど、日々、心地よく暮らすための話をお届けします。このサイトは『ナチュリラ』『大人になったら着たい服』『暮らしのおへそ』の雑誌、ムックを制作する編集部が運営しています。