わが道のおへそ ― 家政婦・タサン志麻さん Vol.1
トングでなく、菜箸があればいい。
料理家より、家政婦でいたい。
何が幸せかは、自分の心に聞けばいい。
高校時代には坂本龍馬が大好きで、手作りのチョコレートをお墓のある京都霊山 護国神社に、手紙と一緒に送ったことも。マイケル・ジャクソンが亡くなったときは、1年間毎晩泣き尽くした。「好き」を見つけると一直線。フランス料理のために、フランス語から映画、小説など、フランスの文化を学び尽くした。
依頼主の家で、冷蔵庫をチェックしたら、テキパキと料理を作り出し、でき上がったおかずは十数品! そんな家政婦のタサン志麻さんの仕事ぶりを、テレビで見たことがある人も多いのではないでしょうか?
私生活ではフランス人の夫ロマンさんと3歳の長男、1歳の次男と4人暮らし。自宅は、家賃5万7000円という築60年の一軒家です。
「住みながらコツコツと手を加えています。19歳で上京したひとり暮らしの頃から、ずっとぼろアパート住まいだったんです」と教えてくれました。
山口県出身の志麻さん。母の影響で、幼い頃から料理好きだったそうです。
「母は、看護師で忙しかったのですが、いつも楽しそうに台所に立っていました。だから、『母のこの味を覚えている』というより、楽しく料理をしている姿が印象に残っていますね」
高校卒業後、大阪の調理師学校へ進学。学校の授業でフランス料理を食べ、そのおいしさと美しさに衝撃を受け、すぐにフランスへ留学することを決意したそう。
「こうと思ったら一直線なんです」と笑います。
帰国後、東京のフランス料理店で働きながら、食べ歩きをしたり、映画を見たり、フランス文学の本を読んだり。
「家賃と生活費を除いた残りすべてを、勉強のために使っていました。不器用で才能がない分、努力をしないと人と同じようにはできない、といつも肝に銘じていましたから」とその一途な集中力には驚くばかり。
キッチンをシンプル化する
家政婦の仕事で大事なのは
洗い物をできるだけ少なくすること。
だから専用の道具はなくていい。
サラダスピナーの代わりにざる+ボウルを
葉野菜でサラダを作るときは、洗ったあとざるに入れ、ボウルでふたをして上下に振る。これだけでしっかり水きりができてしゃっきり!
水きりかごは置かない
自宅のシンクや調理台があまり広くないので、シンク横にキッチンクロスを敷いたり、ざるを置いて水きりし、洗い物をためることなく早めに拭く。
まな板を小さくする
素材を切ったら、まな板ごと持ち上げてフライパンや鍋に投入。そんな身軽さのためには、25センチほどの小さいまな板が便利。洗うのもラクチン。
切る作業の9割はペティナイフで
野菜や肉を切るのも、玉ねぎの皮をむくのも、使うのはほぼペティナイフだけ。手にほどよく収まって小回りがきき、作業がしやすい。
photo:枦木 功 text:一田憲子
『暮らしのおへそ Vol.31』より
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Profile
タサン志麻
大阪あべの・辻調理師専門学校、同グループ・フランス校を卒業。ミシュランの三ツ星レストランでの研修を経て帰国。老舗フレンチレストランなどに15年勤務。2015年にフリーランスの家政婦として独立。各家庭に合わせた料理が評判を呼び「伝説の家政婦」として注目される。フランスを通じて学んだ食卓の温かさを忙しい日本の家庭に届けたいと日々料理と向き合っている。https://shima.themedia.jp
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