ライターまさこの「~福岡・糸島~日常三十景」日替わりエッセイまとめました【後編】
ライター・わたなべまさこさんに福岡・糸島の魅力を1か月間綴っていただいたデイリーエッセイ「ライターまさこの ~福岡・糸島~ 日常三十景」。#01~#15の前編に続き、本日は#16~#30までをまとめた後編をお届けします。
#16 梅仕事や らっきょう漬け
これは九州に限らない話ですが、産地の近くでは近所のスーパーに四季折々の地元食材がずらりと並び、自然と目に入るようになるなあと思います。面倒くさがり屋の私は以前まで、梅仕事なんて縁がない人間だったけれど、季節になるとあまりに普通に「食材としての梅やらっきょう」が並ぶので、梅酒や梅干し、らっきょう漬けをつくるようになりました。梅干しは密閉袋を使った楽ちんスタイル。ハードル低く、地元の食材を楽しんでいます。
#17 地元絵本作家さんのサイン会
絵本部仲間がひょんなご縁で地元作家さんと出会い、企画してくれた出版記念サイン会へ。『もようのないキリン』は、きむらみゆきさんが19歳のときに描いた絵本を、43歳で母親の視点から再び練り上げた、渾身のデビュー作。出版秘話や絵本に込めた思いなど、トークからもたくさんの刺激をもらいました。貴重な原画も間近で見せていただき、感激。軽やかに新しいことを始める行動力あふれるミドル世代が多くて、勇気をもらう日々です。
#18 福岡は広し
11月某日、取材で訪れた福津市。同じ“福岡の海辺”だけれど、糸島は山が間近な立地なのに対して、福間海岸は道も海も広々、山も遠くにゆうゆうとしていて、昔住んでいた湘南の海を思い出しました。“九州の湘南”との異名もあるそうで、納得! 写真は取材先の方に連れていっていただいた農園レストランで売っていた間引き人参。見た目のかわいさがたまらず購入。オーブンで丸ごと焼いたらギュッと甘くて、家族で奪い合いになりました(笑)。
#19 コリコリ、生きくらげ
糸島界隈に暮らして、生のきくらげをカジュアルに見かけるようになりました。スーパーの産直コーナーにもさりげなく置かれています。見た目は地味だけど、きくらげの食感ってなんであんな魅惑的なんでしょう。コリコリの魅力を知った子どもも、買い物で生きくらげを見かけるとカゴに入れてきます。我が家では下茹でして、刻んで炒め物や酢の物が定番。シンプルに刺身風、憧れながら実はまだやったことがないので、今度トライしてみようかな。
#20 iimaの音楽
iimaのマキさんとイシイさんは、福岡暮らしを通じて出会い、家族で大好きになったアーティストです。日常にすうっと染み込んでゆく、家事や育児のなかでもずうっと聴いていたくなる、そんな音楽は初めてで。特に0歳児を抱えてオロオロしていたころは、その音色に歌詞に、どれだけ助けられたことでしょう……。赤子の頃からiimaの音楽に触れて育った娘は、いまでは「iimaのライブ行きたい!」と自分からリクエストするようになりました。
#21 魚をもらう
11月某日に糸島の中でも西部、大入(だいにゅう)のほうまで行く機会がありまして。山がそびえて海も近い、自然豊かなディープ糸島。帰り際、その日初めてお会いした方から「魚、持っていきます?」と釣りたての魚をたくさんいただいてしまいました。なんとうれしいハプニング。目が澄んで身の締まった新鮮な魚は三枚におろして一口大にして南蛮漬けに、骨もカリカリに揚げて、家族でおいしくいただきました。ごちそうさまでした!
#22 スパイスカレーな昼下がり
棚オーナーをしている本屋の裏路地にある「しま香」さん。先日も絵本部の帰りにメンバーと昼食へ。店主の島内さんが「ミドル世代の女性である自分が、毎日食べてもいいと思えるものを」と思いを込めて作るカレーは、スパイスを効かせつつもどこか優しさを感じる味わい。バスマティライスと日本米をブレンドし、アーモンドや昆布と炊くというこだわりご飯との相性が抜群で、一度食べるとつい定期的に食べたく……おなかがすきました(笑)。
#23 まちと自然と温泉と
私が暮らすのは、福岡市と糸島市のちょうど境目あたりのまち。福岡はコンパクトシティとよくいうけれど、ここに住んで、都会と自然の距離が本当に近い、と感じることが増えました。例えば午前中に都会の美術展に行って、午後は海や山で遊んでそのまま温泉へ、みたいな1日の過ごし方もわりとできてしまう。お出かけの途中に「今日温泉も行きたい〜!」と、当然のような顔で言い出す娘をみて、その育ち方うらやましいわ、と思う母なのでした。
#24 ゴミ出しが夜
これは福岡市の話なのですが、「ゴミ出しが夜」も当初はびっくりでした。日没から夜の12時までが、ゴミ出しの時間帯。もともとは朝の交通渋滞を避けるため、深夜のゴミ収集が導入されたのだそう。真夜中の作業には頭が下がるかぎりですが、防犯に役立っているという声もあるとか。余裕のある日は、夕飯後にゴミ出しついでに子どもと近所の川までミニ散歩をしたりすることも。朝バタバタな我が家にとっては、とてもありがたかったりします。
#25 うどん愛
福岡へ越した当初、「福岡の人はうどんへの愛と信頼がすごい」と感じたのを覚えています。博多ラーメンやモツ鍋が有名だけれど、地元の人はむしろ、うどんがソウルフードと思っている印象があって。讃岐うどんのコシとはまた違う、柔らかいのにもちっと噛みごたえのある独特の麺、初めて食べたとき新鮮でした。今ではすっかり慣れ、たまに無性に食べたくなります。オーダーは「やわ麺」派。ぷるっと、もちっと。ああ、食べたくなってきました。
#26 森を感じるオーガニックカフェ
自宅から海へ向かう途中の一角にこの夏オープンしたオーガニックカフェ、ウインドファームさん。店主・藤井さんの話を聞いて、森とのつながりを大事にしているお店だと知りました。糸島の耕作放棄地を再生しながら育てた甘夏を使ったメニューも展開。店内の床や椅子は、藤井さんが間伐した材を使い、自分たちで作り上げたそう。靴を脱いで上がるのも納得の空間です。木の温もりを感じつつ、人と自然に優しいコーヒーを楽しむひとときを。
#27 餃子にも柚子胡椒
九州発祥、いまや全国区の調味料といえば、柚子胡椒。私も関東にいるころから好きだったのですが、福岡へ越してみるとさすが九州、外食店でも卓上に柚子胡椒が常備されているお店が多いなあ、と思いました。なかでも個人的に新鮮だったのは、餃子店の卓上にも当然のように柚子胡椒の瓶が置かれていたこと。餃子はラー油+柚子胡椒、おでんは辛子よりも柚子胡椒。そんな夫を見ていると、たしかに九州発祥なんだな〜、なんて思います。
#28 佐賀の恵みも
福岡は佐賀のお隣ですが、引っ越してくるまであまり意識していませんでした。でも日帰りで遊びに行けるし、スーパーには佐賀産のものもたくさん。なかでも佐賀の特産品のひとつであるれんこんは、季節になると産直コーナーの一角にどっさりと並び、しかも安くて美味しいです。佐賀平野や白石平野の重粘土質が、高品質なものを育てるのだとか。移住を検討するときは、お隣県の名産品や名所もチェックしてみるといいかも……?しれません。
#29 遺跡が遊び場
古墳が多い!しかも遊び場!も、福岡に越して衝撃だったことのひとつです。大きい古墳は公園として保存されていて、一部ではその上を駆け回ったりもできます。遺跡でもっと驚いたのは、歴史の教科書上でしか知らなかった佐賀の吉野ヶ里遺跡が「吉野ヶ里歴史公園」として現代遊具と遺跡を備え、子連れで1日遊べる巨大パークだったことです。写真はこの秋、近所の古墳公園であった灯明祭り。夜の公園で遊べる特別感に、子も大喜びでした。
#30 茹でたけのこ
春になると、家から歩いて8分くらいの産直店で筍が並び始めます。何が嬉しいって、「掘りたて筍を湯がいたもの」がビニール袋に入れられて売っているところ! 掘りたての筍、食べるの大好きだけれどそもそも湯がくのが大変だし、ちょっとでも鮮度が落ちるとエグみが出るし……というハードルを一気に解決して、新鮮な美味しさだけを買える贅沢。ズボラ母にとっては実にありがたいお話です。地元のお母さん方、来年もお世話になります。
【~福岡・糸島~ 日常三十景】
福岡の街と糸島のあいだあたりに越してきて、数年が経ちます。この連載では、関東出身の筆者が移住して初めて知ったこと、日々の暮らしの中でおもしろいと思うことなど、観光とはちょっと違う“ふだん着の福岡・糸島暮らし”の一部を、日常三十景としてお届けします。
Profile
わたなべ まさこ
千葉、東京、フィジー、オーストラリア、湘南暮らしなどを経て2016年より福岡へ。現在は福岡・糸島界隈を拠点にフリーライターとして活動。企業案件からエッセイ・短歌・絵本まで。「糸島の顔がみえる本屋さん」棚オーナー。海辺と本とおいしい野菜が好き。
Instagram:もぐもぐエッセイ(@mogu2bun)はじめました
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