【花と暮らしの12か月】お皿の上に、小さな庭を
栃木・那須に暮らすクリエイターRARI YOSHIOさんによるマンスリー連載「JALDIN BLANCの庭から ~花と暮らしの12か月~」では、新刊『心をととのえる処方箋——12か月のFlower days』をきっかけに、日々の花と暮らしのことを新たに書き下ろしていただいています。
大地の変化
お皿の上で楽しむ、小さな自然

ダイアーズカモミールのブーケ。
5月の光は、どこかやわらかくて、大地の奥に眠っていたものを、そっと目覚めさせるような気配を帯びています。
春のはじまりの、まだ冷たさを残した空気から、少しずつ温度をまといながら、草や木々は、自分のリズムで息を吹き返していきます。
その変化は、とても静かで、けれど確かに、揺るぎないものです。
ふと足元に目を向ければ、昨日までは気づかなかった小さな葉が開き、見過ごしてしまいそうな花が、ひとつ、またひとつと咲いている。
自然はいつも、大きな声ではなく、ささやくように変化を伝えてきます。
だからこそ、私たちは
「どう感じるか」
がとても大切になります。
何かを“見る”というよりも、何かに“気づく”こと。
その違いはとても繊細で、けれど、暮らしの質を大きく変えていくものです。
そこにある植物を
もう一度見直すように丁寧に
絵を描くように、水に浮かべてみる。
私はこの季節になると、植物や花を「飾る」だけでなく、もっと自由に、もっと近くに感じたくなります。
庭で摘んだ草花を、そのまま小さな器に浮かべてみる。
ガラスの中にそっと入れてみたり、葉の重なりや、花の色の響きを見つめてみたり。
それは、特別なアレンジメントではなく、ただ「そこにあるもの」をもう一度、丁寧に見直すような時間です。

大きなお皿の上に、小さなクラスに草花を添える。
白いお皿の上に並べた小さなグラス。そこに集められた、草や花たち。
それはまるで、ひとつの庭を切り取ったようであり、同時に、世界の縮図のようでもあります。
大きな自然を、手のひらの中に迎え入れるような感覚。
そこには、整えすぎない美しさがあります。
移りゆく時と光の中、
自然からのメッセージ
よもぎのブーケ。
植物や花を楽しむということは、「完成されたもの」を飾ることではなく、変化していく時間を受け取ることなのかもしれません。
朝と夕方で、光の当たり方が変わる。
水の中で、葉の表情がやわらかくなる。
少しずつ、花がひらいたり、閉じたりする。
そのすべてが、自然からの静かなメッセージです。
そしてそのメッセージは、忙しさの中では見過ごしてしまうほど、とても繊細なもの。
だからこそ、こうしてお皿の上に置いてみると、その存在が、ぐっと近くなります。
植物と共に
私たちの感覚も開かれて

ティーカップに葉っぱを添えて。
植物を感じながら暮らすこと――。
それは何かを新しく手に入れることではなく、すでにあるものを、どれだけ深く味わえるか。
庭の片隅に咲く花も、名前も知らない草も、少し視点を変えるだけで、かけがえのない存在として立ち現れてきます。
それは、自然を「所有する」のではなく、自然と「共にある」感覚。
ほんの小さなひと皿の中に、季節があり、光があり、そして大地の記憶が宿っています。
5月は、変化の途中にある季節。
満ちきる前の、やわらかな揺らぎの中で、私たちの感覚もまた、少しずつ開かれていきます。
どう感じるか。どう楽しむか。
その答えは、どこか遠くにあるのではなく、目の前の一枚の葉やひとつの花の中に、すでに用意されているのかもしれません。
お皿の上に、小さな庭を。
そんなささやかな時間が、日々の暮らしに、静かな豊かさを運んでくれます。
「JALDIN BLANCの庭から
~花と暮らしの12か月~」は
月の初めの日曜にお届けする連載です
日々の感覚を整えるための、ささやかなヒントとしての「おしゃれ」や「暮らし」を、那須の四季とともにお届け。ゆっくり一年をかけて、毎月更新していきます。
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Profile
RARI YOSHIO
アートデザインクリエイターとして、イラストや雑貨制作、ショッププランニングなど「JARDIN BLANC」の屋号で幅広く活動。2007年、栃木・那須に移住し、庭のある暮らしを通して、自然と人の感覚を結び直す表現を行っている。デザイン、イラストレーション、文章を横断しながら、日々の中にある小さな美しさや、心と身体のリズムを整える視点を大切にしてきた。四季の移ろいに寄り添いながら、自然とともにある暮らしの在り方や、感覚をひらくためのささやかな工夫を、作品と言葉を通して静かに伝えている。
Instagram:@rariyoshio
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