「残さない」「増やさない」 Vol.1 エッセイスト・平松洋子さん
今の自分に何が必要なのかは、
体や仕事、暮らしの状況によって変わっていくもの。
自分が何に違和感を感じるのか。
それを見逃さないことが大事です。
『暮らしのおへそ』の創刊号で、平松洋子さんにお話をうかがったとき、平松さんは毎朝4時~5時に起き、10時~11時頃には寝るという朝型生活を送っていました。きっかけは、40歳を過ぎた頃、無理がきかなくなったなと、体の変化を実感したことでした。あれから13年。平松さんの暮らしはどのように変化したのでしょう? 新たな「おへそ=習慣」を伺おうとご自宅を訪ねると、玄関には色違いのカッコいいブーツが3足並んでいました。
自分に合う靴は色違いで買う
「買って、履いて、歩いてみて、自分に合うと思ったら、色違いを買います」。同じ3足買うなら、そのほうが他を探す手間、失敗する無駄もなくて済む。「大人買いとは意味がまた違います」
「私、靴は『これだ!』と思うものを見つけたら、無条件に色違いを買うんです。この年になれば、何を身につけていたら自分が落ち着くか、自分らしくいられるかということはわかってきますよね。ふだんから地下鉄3駅くらいは平気で歩くので、私には、こういう歩きやすくて駆け出しやすい靴がいちばん。自分に合った快適な靴が何足かあれば、もうそんなにたくさんの靴はいらないと思い、履かないヒールは全部処分しました」
着なくなった洋服も娘さんに、売るほど持っていた器も大切に使ってくれそうな知人に譲り、今持っているものは減らしながら、ものを「残さない」、新たに「増やさない」ことを意識するようになったそうです。
text:和田紀子 photo:日置武晴
Vol.2に続く
Profile
平松洋子
エッセイスト。岡山県倉敷市生まれ。東京女子大学文理学部社会学科卒業。食文化と暮らしをテーマに執筆活動を行う。『買えない味』で第16回Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞、『野蛮な読書』で第28回講談社エッセイ賞受賞。著書多数。近著は『肉まんを新大阪で』(文春文庫)。
肩の力を抜いた自然体な暮らしや着こなし、ちょっぴり気分が上がるお店や場所、ナチュラルでオーガニックな食やボディケアなど、日々、心地よく暮らすための話をお届けします。このサイトは『ナチュリラ』『大人になったら着たい服』『暮らしのおへそ』の雑誌、ムックを制作する編集部が運営しています。