再起動のおへそ ―「フルーツ オブ ライフ」大橋利枝子さん vol.2

暮らしのおへそ
2019.09.24

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大人のおしゃれを知る

肌に心地よく、薄手で繊細な素材を
丁寧に着こなす。
洋服を選ぶことは、自分の姿勢を決めること。

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スタイリストという仕事柄、アイロンが大好き。クロゼットから出した服には、不自然なシワがついていることがあるので、身支度を整える前に、軽くスチームアイロンを。スタイリストに愛用者が多い米国「ジフィー社」のハンドスチーマーで。

 

3年間ほど働いて独立。ファッションはもちろん、ソーイングや料理など、数々の雑誌や書籍でスタイリングを手がけました。2012年からは、リネンブランド「フォグリネンワーク」でリネンの洋服ブランドもスタート。

「私は、スタイリストになりたいという強い意志があって仕事を始めたわけじゃなかったんです。なんとなくアシスタントになって、なんとなく好きな仕事ができるようになって……」

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体形をカバーしてくれるローブは大人の女性におすすめのアイテム。丈が長く、歩くたびに揺れるのでニュアンスが生まれる。

 

そんな大橋さんが、初めて自分の意志で始めたのが「フルーツ オブ ライフ」でした。

「友達が大病をしたことがきっかけでした。去年亡くなってしまったのですが、3年間そばについて看病やお手伝いをしたんです。そのときに『人生には限りがあるんだ』ということを実感しました。これまでずっと『やってみたら?』と言われても『私には絶対無理!』と尻込みしてきました。でも、元気なうちに、命があるうちに、やりたいことをやろうと思うようになったんです」

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左/一度身につけると手放せなくなるカシミヤは「スピネン」のもの。デイリーにどんどん着て、自宅で手洗いするそう。 右/薄手のシルクなどを着るときは、下着のラインが二重、三重にならないように気をつける。これは「オーラリー」のノースリーブニット。

 

ゼロからブランドを立ち上げるので、何もかも初めての体験ばかり。

「『自分が作りたい服を作る』というテーマで、ブランドをスタートしたものの、立ち上げ当初は、ブランディングの意味すらもわかっていませんでした。1年たってやっと、いろいろ考えるようになりました。今までの人生で、私はずっと『自分で決める』ということを避けてきました。50歳を過ぎた今、ようやくその練習をしている感じですね」

今は、友人が生地屋さんを紹介してくれたり、値段のつけ方をアドバイスしてくれたり。これまでの出会いや経験すべてが、新しいスタートを支える体力となっているよう。大橋さんの「再起動のおへそ」は、人生後半だからこそ手に入れることができた、天国にいる友人からのプレゼントだったように思えます。

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サテンなどのデリケートな素材にアイロンをかけるときは、薄い紙を一枚当てる。ハンカチなどの布より薄いので、シワを伸ばしやすい。

 

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リネンの自然な風合いを生かすには、アイロンではなく霧吹きをかけてしばらく置いておくのが一番。急いでいるときはドライヤーで乾かすことも。

 

「暮らしのおへそ Vol.28」より
photo:馬場わかな text :一田憲子

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Profile

大橋利枝子

Rieko Ohashi

雑誌『オリーブ』でスタイリストの仕事を始める。シンプルで清潔感のあるスタイリングやソーイングの提案で、雑誌、書籍、広告などで活躍。2012年「フォグリネンワーク」でリネンの洋服ブランド「FLW」をスタート。2018年より自身のブランド「fruits of life(フルーツ オブ ライフ)」を立ち上げる。著書に『おしゃれっていいもの』(文化出版局)がある。

肩の力を抜いた自然体な暮らしや着こなし、ちょっぴり気分が上がるお店や場所、ナチュラルでオーガニックな食やボディケアなど、日々、心地よく暮らすための話をお届けします。このサイトは『ナチュリラ』『大人になったら着たい服』『暮らしのおへそ』の雑誌、ムックを制作する編集部が運営しています。

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