陶芸家・岡澤悦子さん(後編) ~暮らしというキャンバスに色を添える器を

”つくる人”を訪ねて
2016.03.17

陶芸家・岡澤悦子さん

暮しに寄り添う日常の器のおはなし、つづきです。

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Photo:有賀 傑 text:田中のり子 撮影協力:ギャラリーfève

 

 

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本人も「思い入れのある作品」として挙げてくれた、代表作でもある「ピッチャー」。スタイリストの伊藤まさこさんが愛用していることでも知られているアイテムです。コーヒーのサーバーにしたり、水やお茶を入れてテーブルに置いたり、花器としても活躍しそう。岡澤さんも毎日のようにコーヒーをサーブする器として使っており、内側の貫入には、少しずつ色が入ってきていました。ボディと持ち手のバランス、注ぎ口のキレの良さなどがしっかり計算されつつも、手仕事ならではの手なじみのよさが感じられて。そして使い手に「ピッチャーがある風景」を、いろいろと想像させてくれる懐の広さが魅力です。

 

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陶芸家として独立して数年は、毎年のように「松本クラフトフェア」に出場していたという岡澤さん。それより前の時期、クラフトフェアの機関誌として発行されていた『MANO』は、木工デザイナーの三谷龍二さんが編集長を務めていました(1995~2004年)。毎回5人の作家が登場し、本人の言葉で長めの文章が掲載されています。手を動かしてものを作る人々が、何を見て、どう考えているか。技術はもちろんのこと「思い」のベースをどこに置くか。「ものを作るのは、どういうことか」を、この雑誌から深く考えさせられたと岡澤さんは言います。

「工芸は選ばれた一部の人のためだけではなく、日々子育てや仕事に追われているような本当に普通の人々のためにこそ必要で、どんな人でも工夫しながら暮らしを楽しむことができる。そして作り手も、自分自身の生活に根差したもの作りをしていくべきだという考えに、とても共感しました」。

 

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「人の暮らしのそばにあるものが好き」。そういう意味で、たとえば文芸作品などでも、「この人はきちんと自分でも料理をし、生活道具を選び、暮らしをしっかり楽しんでいるんだろうな」と感じられ、その土台から人間の奥深さを掘り下げている作家さんにシンパシーを感じると言います。愛読書として挙げてくださった村上春樹さん、吉本ばななさんの作品に惹かれるのは、そんなところにも理由があるのかも。

 

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岡澤さんに、暮らしまわりのお気に入りの品を見せていただきました。

仕事のお供である「カンロ飴」は、ふるさと松本にも工場があり、子どもの頃からのおなじみ。「仕事をしているときは空腹のほうが冴えるけど、集中すると頭は糖分を欲しがるので、そういうときにはこの飴が定番です」

伊藤まさこさんが「ほぼ日刊イトイ新聞」とコラボして作った「白い革のバッグ」は、出張や打ち合わせ仕事などに欠かせない一品。しなやかな革と、マチたっぷりの大容量。スパッとした潔い直線的なラインも、格好いい雰囲気です。

運動不足解消と身体のメンテナンスのために最近始めた「バレエ」。「身体の構造、筋肉のつき方などから教えてくれるので、興味深いんです」。道具一式をかごに入れて、通っていいるそうです。

 

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ところで、岡澤さんが陶芸を学んだのは、色絵の磁器で知られる九谷焼の研究所。華やかな絵付けで知られる産地ですが、自分の作品として選んだのはまっさらな無地でした。

「それは人からもよく聞かれるのですが、『お茶碗に絵を描くよりも、空間に絵を描くほうがおもしろいから』と、答えています(笑)」

美術館や真っ白なギャラリーに置かれているものと違い、暮らしの道具は単独で成り立つものはなく、まわりに置かれているものとの調和が大切です。器も、テーブルやカトラリー、料理などといつも隣合わせで、部屋空間の中のひとつの要素として存在します。そんな風に、空間全体の絵を描くときの、「色」のひとつとして成り立つ器を、生み出したいと考えているそうです。

「そしてどうせなら、それがあることで空間がちょっと上質なものになったり、まわりのものも引き立ってくる。そういうものを作れたら最高だなあと、いつも考えているんです」

 

 

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Profile

岡澤悦子

etsuko okazawa

長野県松本市生まれ。2006年より独立。現在安曇野市在住。年に数回、アトリエをオープンし、ものづくりの現場にふれてもらう機会を設けている。

http://okazawa-etsuko.jimdo.com/

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