『時間を、整える』特集② 映画監督 河瀨直美さん

『時間を、整える』特集
2018.06.05

時間は過ぎ行くもの。

でも、決してなくならないもの。

 

バスケットボールの国体メンバーに選ばれて
高校最後の試合に出場していました。
残り時間がどんどんゼロに近づいていくコートで、
常ではない時間を感じて
涙が止まらなくなりました。
あの気持ちはなんだったのでしょう?
その半年後にハチミリフィルムカメラに出会いました。
道端に咲くチューリップにピントを合わせたとき、
うお~っ!と思ったんです。
あの、高校最後の試合で
無常に過ぎ去った時間をこれで記録できる。
私にとって映画はタイムマシーン。
時間を止めて、記録して、未来に運ぶことができるものです。

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映画を作る時には、
俳優さんたちに、まずはそこで暮らしてもらいます。
山の暮らしをしてもらわなければ、
薪の割り方からくべ方、山道の歩き方など
山の所作はわかりません。
そこで費やした時間は、必ず映像に映ります。

 

「萌の朱雀」でカンヌ国際映画祭カメラ・ドール(新人監督賞)を
史上最年少で受賞したのは27歳の時。
その10年後には「殯の森」でグランプリを受賞。
以降、ずっと世界を舞台に活躍を続けて来られた河瀬直美さん。
その最新作「Vision 」は、ご自身が暮らす奈良の森が舞台です。
フランスの女性エッセイスト(ジュリエット・ビノシュ)が、
薬草の一種「Vison」を探しにやってきます。現地で出会った、
山守(永瀬正敏)と出会い、言葉や文化の壁を超えて心を通わせていく……。そ
こには、様々な「時間」が描かれていました。

「ジュリエットの台詞に、『今がここなのか、過去なのかわからない』
という一節があるのですが、森にいると時空を超えていくような感覚になるんです。
森には、千年以上生きている木々がたくさんあります。
何百年も、人々の人生を見つめ続け、
雪にも、夏の日差しに耐え、そこに存在している…。
そんな時間の流れ方に私はすごく安心感を抱くんです。
今の時間を生き、今の豊かさだけを追求するのではなくて、
彼らの千年単位の時間を私も次の千年に届けたい……。
そう思いますね」。

 

text/一田憲子 photo/中川正子

※この記事は暮らしのおへそ実用シリーズ『時間を、整える』より
一部抜粋したものです。

 

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Vision

6月8日(金)全国ロードショー配給:LDH PICTURES 監督、脚本/河瀬直美 出演/ジュリエット・ビノシェ、永瀬正敏、岩田剛典 美波、森山未來、田中泯 夏木マリ フランスの女性エッセイスト、ジャンヌが薬草の一種”Vision”を探して奈良の森へやってきた。森を知り尽くす無口な男、智と出会い、やがて心を通わせていく。

Profile

河瀨直美

KAWASE NAOMI

生まれ育った奈良を拠点に映画を創り続ける。一貫した「リアリティ」の追求はドキュメンタリーフィクションの域を越えて、カンヌ国際映画祭をはじめ、世界各国の映画祭での受賞多数。最新作『Vision』(主演:ジュリエット・ビノシュ、永瀬正敏)は6月8日より全国公開。
世界に表現活動の場を広げながらも故郷奈良にて、2010年から「なら国際映画祭」を立ち上げ、後進の育成にも力を入れる。9月20日〜9月24日に第5回目を開催。また、11月23日よりパリ・ポンピドゥセンターにて、大々的な河瀬直美展が開催される。

公式サイト www.kawasenaomi.com

公式ツイッターアカウント @KawaseNAOMI

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