湯沢薫さん【前編】「1枚の写真を撮るためのスタッフの熱量が尋常じゃなかった」

”オリーブ少女”の先輩に会いに行く
2016.05.23


そばかすがチャームポイントになることも、かごのかわいさも、公園で食べるサンドイッチのおいしさも。大事なことはみんなオリーブに教わった。80年代、90年代、少女たちに熱狂的に支持された雑誌『オリーブ』。その熱狂をつくり出していた、素敵な先輩を訪ねます。

text:鈴木麻子

 

『オリーブ』は10代の頃の楽しみの大部分を占めていました。3日と18日(発売日)が待ち遠しくて、手に入れたものは何度も何度も、飽きることなくページをめくり、文章を暗記してしまうくらい読んだものです。海辺で笑う少女、街角を歩く女の子。いまでも、ふわっと思い出せるシーンがいくらでもある。そのなかのひとつに、青々とした緑の中に佇む3人の女の子の1カットがあります(※1992年 3/18号)。皆、インディゴの服で身を包み、生き生きとしたオーラを発して笑っている。登場するのはモデルのスエちゃん、ミカミ、そして湯沢京さん。私の頭の中に、くっきりはっきりと刻まれているのです。

「オリーブで忘れられない仕事がふたつあります。そのひとつはグアムにロケに行ったときのこと。その時のカメラマンが鷺坂隆さん、ヘアメイクが柘植伊佐夫さん、スタイリストが近田まりこさん。一緒のモデルが、三上純子ちゃんとスエちゃん。あの撮影は本当にすごかった。みんなが一丸となって、1ページをつくるのにものすごい情熱をかけたんです。1枚の写真を撮るための熱量が尋常じゃなかった」

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↑ いまは、モデルを引退し美術家として活躍。10代の頃と変わらぬイノセントな雰囲気が漂う。繊細な見かけとはうらはらに、ご本人はとても気さくで飾らない性格。


湯沢京さん(現在は薫さんに改名)。ショートカットに大きな瞳、すっと通った鼻筋につるんと広い額……。柔らかな雰囲気、聡明な佇まい。頭のてっぺんからつま先までおしゃれでクリエイティブな空気に満ちていて、その存在感は『オリーブ』そのものでした。そんな彼女が「忘れられない仕事」と挙げてくれたのが、冒頭のインディゴ服の撮影。20年以上を経たいまでも、読者(私)の頭に残っている1シーンは、やはり魂を削るようにして生まれた1枚なのでした。

「すごいなと思える撮影は、撮られているときのカメラマンさんが発するオーラが違うんです。ものすごい強度で、私に迫ってくるというか。いまの撮影現場とはちょっと雰囲気が違うかもしれませんね。いいものをつくろう、いいページを作ろうという意識がことさら高かったので、『オリーブ』の撮影のお仕事が入るとうれしかった。そして、撮影を通していろいろいなことを教わった気がしますね」

さて、湯沢さんが忘れられないというお仕事のもうひとつは……。
「モデル数名が、好きな人に会いに行って話を聞くという企画があったんです。私は美術家の金子國義さんに会いに行きました。おうちがとにかく素敵だったことを覚えています。並んでいるものすべて、たとえばリボンの置き方とか、すべてが金子さんの世界、アートで、夢のような空間だったんです」


<『オリーブ』時代の思い出のアイテム>

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↑ 金子國義さんに譲ってもらったという画集。収められた絵や文章からは、独特の世界観が漂っている。湯沢さんが人生で影響を受けたアーティストのうちの一人。


ティーン誌に現代美術家が登場する。それはきっと、珍しいことだったこのではないでしょうか。その企画にて、金子國義さんという人を初めて知る少女はいっぱいいて、もしかしたらそのうちの数人は現代美術に目覚め、その道を歩むことになった人もいたかもしれません。そんな風に、少女たちの興味をあちこちの世界へいざない、可能性の扉を開けてくれたのが『オリーブ』。湯沢さんはその中心で、「自分らしく生きる」「好きなことを突き詰める」ことを体現し、少女たちの憧れの的でした。そんな彼女は、いつしかモデルという枠を飛び出し、アートの世界で自分を表現することに夢中になっていきました。

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↑ 昨年、上梓した写真集『幻夢 Day Dream』。頭の中に飛来した映像をかたちにするためあちこちを歩き風景を切り取り、それをより自分のイメージに近づけるために、写真を追求して現れた美しい幻想的な世界。


【後編】へ続きます

 

第1回 大橋利枝子さんはこちらから

第2回 堀井和子さんはこちらから

第3回 山下りかさんはこちらから

第5回 大森仔佑子さんはこちらから

Profile

湯沢薫

Kaori Yuzawa

『olive』や『cutie』などの雑誌でモデルとして活躍後、1997年渡米。サンフランシスコのアートスクールにて、アートを学ぶ。帰国後は、国内外の展覧会に参加し、写真、立体、絵画、音楽など、さまざまな表現活動を行う。2015年には初の写真集『幻夢 Day Dream』(HeHe)を出版。ファッションブランド『ao daikanyama』や『garment reproduction of workers 』にて洋服のデザインも行う。 今夏以降には、パナソニック「汐留ミュージアム」のミュージアムショップにて、作品のポストカードやカレンダーを販売予定。活動についてはfacebookにて。https://www.facebook.com/kaoriyuzawaoplace

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