第20回 ベルギーの定番おやつ・厚みがあってもちもちのクレープ風「Pannenkoeken(パンネクッケン)」
こんにちは、料理家の栗山真由美です。
ついに師走ですね。今年は寒くなるのが早く、真冬は極寒になるのではと恐れているアントワープからお届けします。
ベルギーの新型コロナウイルス環境は、始まって以来の悪い状況が続
そして残念ながら、今年もアントワープのクリスマスマーケットは中止が決まりました。寒いながらも、ホットワインで温まりながら回るマーケットや、市内中心部のイルミネーションは、本場のクリスマスを実感できる美しい体験。毎年、この体験を積み重ねられると思っていたのですが、残念です。
さて、今日はベルギーの定番スイーツ、Pannenkoeken(パンネクッケン)を紹介します。
ベルギーの定番菓子といえばワッフルが有名ですが、Pannenkoeken(パンネクッケン)も現地では負けず劣らず人気があります。ベルギー版パンケーキで、特別な器具がいらないので、より市民に親しまれているお菓子だと思います。
発音のし方ですが、パンネクッケンの“ッ”はほとんど聞こえず詰まった音で、「パンネクケン」のように聞こえることも多いです。一方で、パンネクーケンと言う人もおり、ネイティブのオランダ語話者でない私にはなかなか難しいです。さらにPannenkoekenは複数形で、単数形のPannenkoek(パンネクック)と呼ぶ人もいますね。
材料はこれだけ。もちろん、長い歴史のある定番菓子だけに、数限りないレシピがあります。私がバイブルとしている本などは生酵母を使うレシピになっており…でも、そもそも気軽なおやつ風情なんですよ。もっと簡単にできるはず!と、試行錯誤してみました。
生地は粉類をふるってボウルに入れ、くぼませた中心部に卵を入れて、徐々に混ぜます。あとは、牛乳を加えてのばして完成。
油やバターを敷いて熱したフライパンで、この生地を両面焼きます。生地がなくなるまで繰り返し、焼いたものは重ねておきます(冒頭の写真)。
ところで、日本人の私たちにとって、パンケーキと聞いて想像するのは、もっと厚みのあるものですよね。あれは、こちらでは“アメリカンパンケーキ”と言うそうです。
一方で、「クレープとは違うの?」と思いますよね。そうなんです、薄くて繊細なクレープとは違い、厚みがあって食感も若干もちもちします。腹持ちのいい感じ。どこをとっても中途半端で、私も魅力を感じられずにいましたが、なかなか奥が深いものだと最近思うようになりました。
さて、基本の食べ方をご紹介します。
焼いたパンネクックをお皿に取り、砂糖をかけます。砂糖はパウダーシュガー、てんさい糖、ブラウンシュガーの3種が基本で、好みのものを選びます。
砂糖をのせたら、端から巻いて、食べやすく切っていただきます。これが最も一般的な食べ方。屋台などで買って、その場で食べる時もこのスタイルが多いです。
その他、はちみつやシロップ類、ジャムやチョコレートソースなどをかけたり、生クリーム・アイスクリーム、フルーツやナッツとトッピングはお好み次第です。
私は、ベルギーらしいスペキュロス風味の洋梨のコンフィチュールを作ったので、煮詰める前にそっと鍋から取り出してフルーツソースのようにかけてみました。手前味噌ですが、とーってもおいしかったです。
パンネクックですが、やっぱり私が作ったのは少し薄め。薄いクレープっておいしいですもんね〜。こんなふうに好みの厚みに変えられちゃうのも、家庭で作る利点ですよね。
ベルギーは子どもを産み育てる環境が整っている印象で、子どもの数も多く、共働きが普通です。そんな忙しいお父さん、お母さんも作りやすいおやつとして、Pannenkoekenは生活に浸透しているのだと、作ってみて実感しました。Pannenkoeken ミックスのような商品もあり、子どもにも大人にも愛されています。
最後の写真は2枚。
各地のマーケットやイベント時には、Pannenkoeken屋台やフードトラックが出ていることが多いです。こちらは、ニューポートで出会ったおいしいお店。
Pannenkoeken、私の感覚では、おやつとして食べるにはボリュームがありすぎて重い。時折、ランチなど食事代わりに食べられないかなと思ってました。が、食事メニューのあるお店では案外難しい。ランチとディナーの時間を外した、例えば「14-17時だけオーダー可能」といったお店が多い。
また、クレープからの発想で、ガレットのように甘くないトッピングを選んで食事として食べられないものかな?とも。
そんな折、アントワープにPannenkoeken専門店を見つけました。スイーツから食事まで多彩なバリエーションのPannenkoekenがいただけます。
写真は「Paris」と名のついた、ブリーチーズ、ベーコン、くるみにはちみつがけの、甘塩っぱいPannenkoeken。「Greece」だったらフェタチーズといった具合に、その国を代表する食べ物がトッピングされます。
*写真の無断転載はご遠慮ください*
【栗山さんのベルギーおいしいもの通信⑲】はこちら
Profile
栗山真由美
料理家、栄養士。枝元なほみさんのアシスタントを経て独立。ポルトガル料理を中心とした料理教室「Amigos Deliciosos」を12年前から東京で主宰、日本ポルトガル協会の公認講師も7年間務める。2019年より、イギリス人のご主人とベルギー・アントワープに在住。著書に『ポルトガル流 驚きの素材組み合わせ術! 魔法のごはん』(エイ出版)、『「酒粕」で病気知らずになる ゆる粕レシピ』(池田書店)など。
https://ameblo.jp/castanha/
Instagram: mamicastanha
肩の力を抜いた自然体な暮らしや着こなし、ちょっぴり気分が上がるお店や場所、ナチュラルでオーガニックな食やボディケアなど、日々、心地よく暮らすための話をお届けします。このサイトは『ナチュリラ』『大人になったら着たい服』『暮らしのおへそ』の雑誌、ムックを制作する編集部が運営しています。