十和田(青森)編vol.3 十和田のたぬきケーキをめぐる旅

地元のおしゃれさんが 案内する 小さな旅
2026.03.21

青森県十和田市は青く澄んだ湖面が美しい「十和田湖」や国の特別名勝および天然記念物に指定されている「奥入瀬渓流」などの雄大な自然に加え、「アートを通した新しい体験を提供する開かれた施設」をコンセプトに開館した十和田市現代美術館を中心に、通りにもアートが溶け込み個性溢れる「アートのまち」としても知られています。
編集者の長嶺李砂さんが2024年に十和田市の商店街にオープンした本屋「TSUNDOKU BOOKS」は毎月1日から15日までの月の半分だけオープンするユニークな本屋として注目を浴びています。そんな長嶺さんに徒歩で周れるコースを教えていただきましたので、ゆっくりと街を散策してみてくださいね。
 


photo&text:長嶺李砂

「たぬきケーキ」は、わたしにとって幼いころの思い出の味です。

父は毎年、何かの会合に出かけるたびに、大きなたぬきケーキを持って帰ってきました。わたしたち兄妹は、それをいつも楽しみにしていたものです。

生クリームではなく、バタークリームで仕上げられたケーキ。正直にいうと、当時のわたしは「生クリームだったらもっといいのになあ」と思っていましたが、大人になった今では、すっかりバタークリームの虜です。

たぬきケーキ研究家・松本よしふみさんの著書『たぬきケーキめぐり』によると、たぬきケーキとは「文字どおり、たぬきをかたどったケーキ」のこと。決まった形があるわけではなく、生息地である各地の和洋菓子店によって、その姿はさまざまなのだそうです。


最盛期は1960年代から80年代ごろ。大流行したというより、子ども向けの定番商品として、ゆっくり、じっくりと全国へ広がっていったようです(詳しくは、ぜひ『たぬきケーキめぐり』を)。

「たぬきケーキって、十和田だけのオリジナルじゃなかったんだ」と知ったのは、ずいぶん後になってからのこと。しかも、老舗のたぬきケーキに出会える店が少しずつ減ってきたこの時代に、十和田市内では今もなお、3つのお店が作り続けているのです。

今回の記事では、十和田でたぬきケーキを作り続ける3つのお店を、順番にご紹介したいと思います。

まずは「菓子工房 京甘堂」さん。

まちなかから北里大学へと続く“大学通り”にある、1972年創業、50年以上続く老舗菓子店です。ここには『ぽん太』という、たぬきケーキが生息しています。


居心地のいいティールームも併設されていて、その場でゆっくり味わうこともできます。カウンター席もあるので、ひとりでも気兼ねなく過ごせるのがうれしいところ。ドリンクとセットでケーキが3割引になるサービスも、ついつい長居したくなってしまう理由のひとつです。

ぽん太の土台は、しっとりとしたショコラ味のロールケーキ。フランボワーズのジャムがサンドされ、香ばしくローストされたスライスアーモンドがアクセントになっています。もちろん、バタークリームです。


京甘堂は現在2代目、工房は兄弟で切り盛りしているそうです。ケーキに和菓子、焼き菓子と、とにかく種類が豊富で、ショーケースの前に立つとつい目移りしてしまう。
「毎日立ち寄ってくださる常連さまもいます。大学生のお客さまも多いので、300円以内で買えるケーキを、必ずひとつは並べておきたいと思って」。そんな言葉どおり、まちに寄り添うやさしい価格と味わい。ぽん太もまた、20年以上作り続けられている一品です。


次にご紹介するのは「つくだ菓子舗」さん。

1971年創業、今年で55年になる老舗菓子店。まちなかからは少し離れていますが、わざわざ足を運びたくなる一軒です。

 


現在、店を切り盛りしているのは、初代の附田哲男さんの孫・斗沢宗弦(とざわ そうげん)さん。

電気工の技術職として働いていた斗沢さんは、若い技能者たちが技を競い合う「技能五輪」に出場するほどの腕前。祖父の跡を継ぐつもりは、当初まったくなかったといいますが、気づけば、その職人気質は菓子づくりへと向かっていました。


「お菓子の作り方は、すべて祖父から引き継いでいます。わたしが戻ってきたときは、たぬきケーキをお休みしていたのですが、今はまた作りはじめています。祖父も、引き継いでほしかったようでしっかり伝授してくれました」

バレンタインやホワイトデーにはカラフルなたぬきケーキが登場したり、デコレーション仕様が並んだりと、斗沢さんの感性が光るアレンジも豊富。祖父から孫へと受け継がれた確かな味に、自由な発想が重なっていく。これからの展開がますます楽しみなお店です。


最後は、1968年創業の「大竹菓子舗」さん。

十和田市内に2店舗、スイーツ工房本店と十和田通り店があり、どちらも中心街に近く、まちなか散策の途中に立ち寄れるのもうれしいところです。


こちらのたぬきケーキは、創業当時から作り続けられてきたもの。そう、昔、わたしがよく食べていたのも、このお店のたぬきケーキでした。

けれど、そのディテールは、時代にあわせて少しずつ変化しています。いまはバタークリームではなく、生クリーム仕立てに。スポンジ生地の中には、青森県産の米粉が使われた濃厚なカスタードクリームがさりげなく入っていて、おいしさにますます磨きがかかっていました。


どのたぬきケーキも、ひとつひとつ表情が違って、とても愛くるしい。味わいもそれぞれに個性があり、まったく同じものはありません。たぬきケーキは、どこか懐かしくて、ふと会いたくなるケーキなのです。

つくだ菓子舗や大竹菓子舗のほかにも、十和田には「菓子舗」の名を掲げるお店がいくつもあります。アップルパイで人気の相馬菓子舗さん、レトロであたたかい商店街のふくだ菓子舗さん、創業160年を数える和菓子の中島菓子舗さん。菓子舗って、昔ながらの老舗によく似合う名前ですよね。

菓子舗に限らず、このまちにはたくさんのケーキ屋さんや和菓子屋さんがあります。十和田は、スイーツのまちと言っても過言ではない、そんなふうに思っています。かくいうわたしも、じつは社会人として最初に就いた職業はパティシエ。おいしいお菓子に囲まれて育ったことと、無関係ではなさそうです。



たぬきケーキはもちろんのこと、このまちで生まれるお菓子を、これからも暮らしのささやかな楽しみとして味わっていきたいと思っているところ。みなさんも十和田にお越しの際は、ぜひ、たぬきケーキめぐりや菓子屋さんめぐりをどうぞ。vol.4へ。

 

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菓子工房 京甘堂
青森県十和田市東十二番町20-25
TEL:0176-22-0976
営業時間:9:00〜21:00
定休日:年中無休
Instagram:@kyoukandou

 

つくだ菓子舗
青森県十和田市西五番町18-19
TEL:0176-22-1491
営業時間:8:30〜18:00
定休日:水曜日、ほか不定休
Instagram:@tsukuda_kashiho

 

大竹菓子舗 スイーツ工房本店
青森県十和田市東一番町7-28
TEL:0120-39-4715
営業時間:8:00~18:30
定休日:年中無休
Instagram:@ootakekashiho

 

大竹菓子舗 十和田通り店
青森県十和田市西1番町17-6
TEL:0176-23-5144
営業時間:8:30~19:00
定休日:年中無休
Instagram:@ootakekashiho

 

 MAP:F・H・I・J

日本、〒034-0011 青森県十和田市稲生町14−52

日本、〒034-0011 青森県十和田市稲生町16−19

日本、〒034-0011 青森県十和田市稲生町18−33

日本、〒034-0081 青森県十和田市西十三番町2−18

日本、〒034-0082 青森県十和田市西二番町10−9

日本、〒034-0016 青森県十和田市東十二番町20−25

日本、〒034-0085 青森県十和田市西五番町18−19

日本、〒034-0012 青森県十和田市東一番町7−28

日本、〒034-0092 青森県十和田市西一番町17−6 大竹貸店舗

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