第3回 ベルギーのクリスマスに欠かせないスパイスクッキー「スペキュロス」
こんにちは、料理家の栗山真由美です。みなさんの好きな季節はいつですか? 私は日本にいた頃は春でした。ベルギーは…選ぶのが難しいですね。
寒がりの私には、長く厳しい冬はいちばんにはずすところですが、一方で間違いなく特別な時期でもあります。1年でいちばん輝く季節と言っても過言ではないでしょう。キリスト教のカソリックの国に暮らす醍醐味を、いちばん感じる時期でもあります。
ベルギーといえば、チョコレートなど甘いものを想像される人も多いかと思います。今回はベルギーのクリスマスと、密接な関係にあるお菓子のお話です。
ベルギーのクリスマスは、一足早くやってきます。12月6日に「聖ニコラス(英:Saint Nicolas,蘭:Sinterklaas)の日」があって、良い子はシンタクラースからプレゼントがもらえるのです。通常は11月末から各地で、シンタクラースを迎えるイベントなどが行われ、一気にクリスマスムードになります。
チョコレート、プラリネ、マジパン、クッキー(ビスケット)は、この時期不可欠です。ベルギーの定番お菓子なので、通年送ったり送られたりしますが、特にこの時期は、シンタクラースやクリスマスのモチーフをかたどった特別なデザインのものが出回ります。
写真の右上のチョコレート、赤い帽子をかぶっているのがシンタクラースです。隣は、ピートというお手伝いの少年です。シンタクラースのモデルとなったのは、現在のトルコで生まれた300年頃の聖人ニコラスです。実際に貧しい子供達を救う活動をしていた、聖人ニコラスの命日である12月6日を「聖ニコラスの日」として祝うようになり、今もその風習が残っています。
伝統的なパンとしてひとつご紹介したいのが、写真左下の“Cougnou”。現在は数限りなく種類があり、この写真もほんの一例です。はじまりは、赤ちゃんだったキリストがおくるみに包まれてるデザインだったそう。そう見えますかね? 調べてみると、本当にいろんな種類があって、中にはホットドックパンのようなシンプルなパンに、シュガークラフトで作った赤ちゃん(らしき?)ものがのせられている物もありました。
さて、私はベルギー菓子の基本中の基本、「スペキュロス」というスパイスクッキーを作ってみました。材料はスパイスとブラウンシュガーが特徴で、あとは特殊なものはありません。
粉とスパイス、バターと砂糖などを別々に混ぜてから、全部を合わせて生地は完成です。
いつかアンティークの大きいのを買ってみたいと思っているんですが、今持っているのはこの型です。けっこう可愛い。
木型に粉をふって、だいたいの分量の生地を型に合わせて伸ばしていきます。コツをつかみました!ひっくり返して、型から出します。
この状態ですごくかわいいですよね。
オーディション通過組です↑全量でこの倍できました。お店で売っているスペキュロスより、スパイスもマイルドでおいしかったです。贈り物にラッピングを工夫したりしても良さそうです。今後の野望にとっておきましょう。型が無ければ、生地を伸ばしてカットして焼いてもできます。もっと気軽になりますね。
ところで、一般的なサンタクロースの来るクリスマスは?と思いますよね。こちらもあります。やはりいちばんのメインは12月24日の夜と25日になり、カソリックの国らしく、家族で過ごすのが一般的です。つまり、ベルギーの良い子達は2度プレゼントをもらうチャンスがあるということです。
チョコレート大国、スウィーツ大国のベルギーでは、クリスマスに向けてたくさんのケーキが用意され、モダンなデザインも人気があります。でも、昔から伝統的なクリスマスらしいケーキというと「Kerststronk 」が定番です。切り株のケーキ、ブッシュドノエルのベルギー版ですね。
そして、25日を過ぎても、1月6日の「Three Kings’ Day(Epiphany)」までお祝いは続きます。
フランスに新年を祝うケーキ、ガレット・デ・ロワがありますが、ベルギーにも同様のEpiphany Cake、オランダ語で Driekoningentaartがあります。これを食べて、11月末からの一連のクリスマス行事の終了です。
例年ならば、アントワープも1年でいちばん輝く時期ですが、新型コロナウィルスの影響で、今年はロックダウンが続いています。クリスマスマーケットなど、ほとんど全てのイベントが中止です。ライトアップだけは見られましたので、写真を添えます。雰囲気だけでも伝わりますように。
最後にクリスマスプレゼントとして、スペキュロスのレシピをおつけしますね。
SPECULOOS(スペキュロス)
【材料(5×6cmくらいのもの20〜25枚分)】
A・薄力粉 250g
・ベーキングパウダー 小さじ1/2
・シナモンパウダー 小さじ1と1/2
・ジンジャー、アニス(ともにパウダー) 各小さじ1/2
・白こしょう、ナツメグ、クローブ、カルダモン(すべてパウダー) 各小さじ1/4
・塩 ひとつまみ
卵 1/2個分(25g)
ブラウンシュガー 150g
バター(食塩不使用) 75g
牛乳 50ml
打ち粉(薄力粉) 適量
【下準備】
・卵とバターは室温に戻す。
・天板にオーブンシートを敷く。
・オーブンを170℃(ガスオーブンの場合は160℃)に温める。
【作り方】
1 ボウルにAをふるい入れ、泡立て器でよく混ぜる。
2 別のボウルに卵、ブラウンシュガーを入れて泡立て器ですり混ぜ、バターを加えて全体にざっとすり混ぜ、牛乳を数回に分けて加えて均一に混ぜる。
3 1の粉類を数回に分けて加え、ゴムベラでさっくりと混ぜ、粉っぽさがなくなったらひとまとめにしてラップで包み、冷蔵室で3時間〜ひと晩休ませる。
4 打ち粉をふった台に取り出し、打ち粉をふっためん棒で5mm厚さにのばし、5×6cmにナイフでカットする(木型を使う場合は、型の大きさに合わせて生地をちぎり、ざっとこねてなめらかにして5mm厚さにのばし、打ち粉をふって軽くたたいて粉を落とした型にのせてのばします)。
5 天板に並べ、170℃のオーブンで12〜 15分焼く(10分くらいで色が濃くなってくるので、気になる場合はアルミホイルをかぶせて)。ケーキクーラーなどにのせて冷ます。
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Profile
栗山真由美
Mayumi Kuriyama
料理家、栄養士。枝元なほみさんのアシスタントを経て独立。ポルトガル料理を中心とした料理教室「Amigos Deliciosos」を12年前から東京で主宰、日本ポルトガル協会の公認講師も7年間務める。2019年より、イギリス人のご主人とベルギー・アントワープに在住。著書に『ポルトガル流 驚きの素材組み合わせ術! 魔法のごはん』(エイ出版)、『「酒粕」で病気知らずになる ゆる粕レシピ』(池田書店)など。
https://ameblo.jp/castanha/ Instagram mamicastanha
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