第34回 【番外編】香箱ガニ、回転寿司、しょうゆ、麹、昆布ガリ…帰国中の富山で出会ったおいしいご褒美たち
こんにちは、料理家の栗山真由美です。
10月から、2年9か月ぶりに日本に一時帰国することができました。したいことてんこ盛り、会いたい人も多数と、欲張りすぎたかもしれません。しかし、次の帰国もいつになるかわかりませんし、必死で楽しみました。中でも最も重きを置いていたのは「食」。
旅好きで、世界の様々な国に出かけてきましたが、“郷にいれば郷に従え“でいつも現地の食事を楽しめ、興味もムクムクと湧いたものですが、旅と住むのは大違いなのですね。
ベルギーに暮らし始めて約3年半。ベルギー料理への興味はあるものの、恋しくなるのは和食です。これが十分楽しめる日本滞在中、“取りこぼしなく”を念頭に動きました。そして、国内旅行先として選んだのは富山でした。
みなさんは、富山にどんなイメージをお持ちですか?私の北陸デビューは金沢が最初で、数回、数か所に出かけたことがあります。新幹線で行くと通過するのが富山で、いつか寄ってみたいと思っていました。
有名なホタルイカや白エビをはじめとする海産物、魚醤系の加工品も豊富、しょうゆ、みそ、その素となる麹を含めた発酵文化も、特有のものがあります。今回の「ベルギーおいしいもの通信」は許可をいただき、特別編で実際に体験した富山の食まわりについてご紹介します。
富山の食の魅力は、ありすぎてどこからはじめたらいいのか難しいです。富山ビギナーの目線で、まずイメージする海産物にフォーカスしました。
ホタルイカや白エビをはじめ、のどぐろ、桜鱒などなど、海の幸にあふれた富山。カニもその代表格です。射水(いみず)市には「新湊(しんみなと)かに小屋」があり、全国でも珍しいカニの昼セリの見学ができます。「高志の紅ガニ(こしのあかがに)」と呼ばれる紅ズワイガニが食べられるツアーもあります。秋から春にかけて、カニの旬の時期だけの限定です。
11月の中旬に訪れましたが、香箱ガニの解禁とも重なりラッキーでした。
香箱ガニは雌のズワイガニで、雄と比べると半分ぐらいの大きさです。小さいだけに、身が詰まって濃厚な味わいです。外子(そとこ)と呼ばれる粒々の卵と、内子(うちこ)と呼ばれるミソ部分を併せ持っています。香箱ガニは保護のため禁猟期が長く、11月中旬から年末ごろまでが旬になります。
写真はお寿司屋さんでいただいたものですが、様々な飲食店で提供されていて、私も何度か体験することができました。
「富山は回転寿司のレベルも高い」とはよく聞く話で、最初の一軒にしました。富山在住の友人オススメの人気店で、とてもおいしかった。お寿司のおいしさだけでなく、使われていたしょうゆも気になりました。すっきりした味わいのあとにほのかに甘みを感じる、好みのタイプのおしょうゆでした。
畑醸造さんには、手間ひまかけたしょうゆ作りの工程をご説明いただきましたが、下の写真は重要な役割を果たす“麹室”になります。そのたたずまいに、思わず歓声が上がりました。
極寒仕込みしょうゆ「北陸」の仕込みは最も寒く、水と空気がきれいな1〜3月にだけ行われ、3年間の天然熟成を経て完成します。
富山ではしょうゆのほか、みそや発酵食品も盛んに作られています。それらに欠かせないものというと、麹ですよね。
私も発酵食品には興味を持ってきましたが、種麹屋さんを訪ねたのは初めてでした。お店の佇まいそのままに、伝統と歴史を感じる、北陸唯一の種麹屋・石黒種麹店さんを訪ねました。
石黒種麹店で作られる米こうじは、米の一粒一粒に麹菌がしっかりと入り、自然の甘みと白さが特徴です。富山県産のコシヒカリを使用した麹は、一般的なものに比べて酵素量が多く、発酵の力が強いとのこと。買ってきた麹で私もみそを仕込む予定ですが、本当に楽しみです。
昆布などの海藻をよく使うことも、富山の特色だと思います。特に“とろろ昆布”が特徴的。白と黒があるのもおもしろいですし、写真右は“黒とろろおにぎり”ですが、中にはたっぷりの佃煮昆布が入っていて、海藻好きにはたまらなかったです。
お寿司屋さんのガリには、昆布が入っていました。市販もされている“昆布ガリ”は、うまみがポイントの止まらないおいしさでした。
初めての富山は、想像以上に魅力に溢れていて、再訪を心に誓いました。おいしいもの好き、特に魚介好きの方にはオススメです。これから寒くなりますが、富山のおいしさもまた、寒さと共に上昇していくと思います。
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最後に、今回のおいしんぼツアーは、富山在住の友人なくしてはあり得ませんでした。
Thank you sooooooo much!
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Profile
栗山真由美
料理家、栄養士。枝元なほみさんのアシスタントを経て独立。ポルトガル料理を中心とした料理教室「Amigos Deliciosos」を12年前から東京で主宰、日本ポルトガル協会の公認講師も7年間務める。2019年より、イギリス人のご主人とベルギー・アントワープに在住。著書に『ポルトガル流 驚きの素材組み合わせ術! 魔法のごはん』(エイ出版)、『「酒粕」で病気知らずになる ゆる粕レシピ』(池田書店)など。
https://ameblo.jp/castanha/
Instagram: mamicastanha
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