食べたときに感情が揺れないものがいい Vol.2 「フードムード」主宰 なかしましほさん

暮らしのおへそ
2017.11.01

 

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Vol.1はこちらから

これを機にオーガニックレストランに転職。
ここで知ったのが、バターの代わりに菜種油を使ったお菓子です。

 

「バターたっぷりのケーキは、食べるのは大好きなですが、
毎日作っていると気分が悪くなることがあって……。
でも、菜種油だとそれがなかったんです。
私は飽きっぽくて、何をやっても長続きしなかったのですが、
これなら作り続けられるかも、と思いました」。

 あちこち回り道をして、なかしまさんがやっと見つけた
「やりたいこと」が、菜種油を使った焼き菓子作りだった
というわけです。こうして、「フードムード」を本格始動。
最初は通販で。6年前にショップをオープンさせました。

 実は、ずっとひとりで続けてきたお菓子作りを、
スタッフに任せるということに、最初は抵抗があったそう。
でも、お客様が増えると、ひとりの手では間に合いません。
少しずつ「誰かに託す」ことを学びました。

 一昨年の4月にカフェを併設した今のショップへ移転したばかり。
新店舗に一歩入ると、凛とした空気が流れています。
ガラスケースの中には、ケーキやクッキーは整然と並び、
スタッフがきびきび働いて……。
作り続けているお菓子は10年前からほとんど変わりません。

「お菓子も、日々の食事も、食べた時に
あまり感情が揺れないものが好きなんです」
となかしまさんは語ります。

「食べることで心がザワザワするよりも、
すっと身体に入っていくものを食べたいし、
作っていきたいですね」。

 私たちは、とかく一口食べて「わあ、おいしい!」
という瞬間的な感動を求めがちです。
でも、おいしさと「驚き」は別物……。
それは、何のために食べるかということとつながっています。

 菜種油を使った素朴な焼き菓子は、
一見地味なものです。
おやつは、暮らしの中のさもない喜びです。
それを「これしかない」とつかまえたのが、
なかしまさんの強さなのかも。
お話を聞いていると、大切なモノやコトは小さな声でしか
語ってくれない、と感じます。
「フードムード」のお菓子をいただきながら、
耳を澄ませてみたくなりました。

text:一田憲子 photo:有賀傑

『暮らしのおへそVol.23』より

フードムード
東京都国立市西2-19-2

営 火曜~土曜 日月休
℡042-573-0244
http://foodmood.jp

Profile

なかしましほ

Nakashima Shiho

レコード会社で洋楽部門を担当。音楽雑誌の出版社を経て、編集プロダクションへ。ベトナム料理店、オーガニックレストランの草分け「キヨズキッチン」を経て、菜種油を使った焼き菓子を販売する「フードムード」を立ち上げる。

2015年カフェを併設する新店舗をオープン。

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