変わり続ける器

今日のひとしな
2026.05.06

〜「OCUYUKI」より〜 vol.6


田村一さんとの出会いは、おそらく15年ほど前。
私がインテリアショップのスタッフとして働いていたお店で開催していた個展の在店中にガンダムの話で盛り上がったのが最初でした。大きな身体に、もじゃもじゃのヘアスタイルに、真っ赤なスニーカー。
そのいで立ちを今でもよく覚えています。

少し厳つい印象からは想像できない、繊細かつ大胆な仕事。向こう側の光が透けるほど、薄く挽かれた土。マットな白い肌にしっとりと溜まった薄水色の釉薬。そのギャップにすっかり魅了されてしまったのです。


その後、プライベートで、少しずつ
小鉢や皿や湯呑み、そして酒器と、田村さんの器を買い足していきました。

私がショップをやめた後も、細く長くご縁が続き、OCUYUKIを始めるとき、田村さんに相談したところOPEN直後の1月に個展を開いていただくことになりました。
予定していた在店日、コロナ禍の余韻も残るなか、追い討ちをかけるように秋田は大雪に。残念ながら、在店は叶いませんでしたが、
代わりにインスタライブで作陶の実演をしてもらうことになりました。


思っていた以上に手が早く、無駄のない動き。
あの器は、こんなリズムで生まれているのか。
(※OCUYUKIのInstagramにアーカイブがありますので、気になる方はぜひ)

田村さんは、早稲田大学の陶芸部で作陶をはじめ、卒業後は、東京から益子、そして現在は秋田に拠点を移し、制作を続けています。
田村さんの作品で多く見られるのが「しのぎ」という技法です。
器の表面をヘラやカンナで削り、凹凸をつける装飾のこと。
「鎬を削る」という言葉でも知られていますが、もともとは日本刀の稜線を指す言葉だそう。

今回ご紹介するカップとソーサーにも、この「しのぎ」が施されています。さらにしのぎに痕をつけることで貝殻のような表情が、田村一らしい表現のひとつ。

ソーサーには、カップ用の凹みがないため、プレートとして使うことも可能です。
カップにはお手持ちのコースターを合わせて、ソーサーにはお菓子を。
そんな自由な使い方で、お茶の時間を楽しむのもおすすめです。


もうひとつの田村さんの作品の特徴が、とにかく変化に富んでいるということ。
同じものを作り続ける、というよりも、その時々の環境や気持ち、さまざまな出会いによって、表現の方法が変わっていくタイプなのだと思います。
同じ形の皿でも、きれいに揃えるのではなく、それぞれに、ちゃんと個性がある。
かつての鮮やかなコバルト色の作品も、今では懐かしい作品。
最近では、秋田の素材を使った釉薬で仕上げることも増えてきました。

変わらずに、変わっていく。田村さんの器には、そんな彼自身の在り方が、静かに表れています。
一期一会の、作家ものの器との出会いは、
その個性を吟味し、迷っている時間ごと、楽しいものなのです。

田村一【Mag D】
田村一【Saucer】



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OCUYUKI

東京都国分寺市日吉町2-33-20 シャルムビル102
営業時間:水-金11:00〜18:00
     火/土12:30〜18:00
定休日:第一土・日・月・祝祭日
https://ocuyuki.jp/
Instagram:@ocuyuki

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