好日用品店

〜「好日用品店／こうじつようひんてん」より　vol.31〜

あの大きな地震に見舞われた元日から始まったこの連載も本日が最後となりました。
事前に原稿をお渡ししていたこともあり、当時の状況と原稿を書いていた時期とのギャップに悩むこともありました。

せっかくいただいたお話をつづけるために毎日ひとしなを選び、コラムを書くことに意味があるのだろうかと。

それはお店を開くと決めた時、たくさんの素敵なお店がある中で自分たちが始めるお店にはどんな意味を持たせるべきかと想いを巡らせていた時と重なるようでした。その中で気づいたのは相手を想い描いてワクワクするような贈り物が並ぶお店でした。

きっかけは自身の結婚が決まり、お祝いをいただいたお返しを選ぶ際、いろいろなモノを見にお店に足を運びました。相手の顔を浮かべながら「お酒が好きな人だからグラスがいいんじゃない？」とか「高齢の叔母にはあたたかな手織りの布物がいいと思う」など品物選びは多岐に渡りました。同じものを選びそれぞれの方にお渡しすることも考えましたが、相手のことを想いモノを選ぶことは贈る側も喜びであるということに気づいてしまいました。

そんなワクワクする物が溢れるお店を作りたいと思い、今のお店が出来上がりました。

今、石川県を含め北陸はコロナ禍の頃のように街は静かです。
私たちのような比較的被害が少ない地域の人もふと気がふさぐことがあります。こんな状況でも生活は続きます。誕生日も、卒業式も、成人式も、結婚式も、就職祝いも、還暦祝いも。日常にはおめでたい日というものがあります。こんな時ですが少しだけ相手を想う時間をこのお店で一緒に過ごせたらと思っています。

今はもしかしたらおでかけできる心境ではないかもしれません、また外に出かける気持ちが芽生えた時はぜひ北陸へどうでしょうか。

たくさんの美味しいものと素敵なものや人に出会えること間違いありません。ぜひ「今日のひとしな」を探しにいらしてください。

好日用品店

廣島友紀

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