無意識を信頼する vol.3 医師・稲葉俊郎さん

暮らしのおへそ
2019.01.16

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自分が生活しているなかで、
何がいちばん心地よくて、ハッピーなのか。

その感覚を大切に、そこをホームポジションとして
常に戻っていけばいい。

健康は、誰かに与えられて決めるものではなく
自分自身が決めるもの。

ひとりひとりがちゃんと主体的に
自分の体と関わっていくことが何より大事です。

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職業とは何か。悩んだ揚げ句
芸術から医療の世界へ

稲葉さんが、医師を志そうと決めたのは、高校3年生のとき。それまでは、芸術系に進みたかったそうです。

「音楽やアートが好きだったので、何か創造的な仕事に就きたいと思っていました。でも、その頃は仕事にするってどういうことなのかがわからなくて、すごく悩みましたね。仕事って何のためにするのか、職業って何なのかということを高校生なりに哲学的に考えて、それが極まったとき、まさに“陰が極まって陽に転ず”という感じで直感的に答えが降りてきた。直感って、何も突然降ってくるものではなく、葛藤や迷いから逃げずに悩み続けた先、暗くて長いトンネルの先にパッと見える風景のようなものだと思うんです。その結果見えたてきたのは、自分は芸術に携わりながら日々を生きていきたいのであって、仕事とは別のものだということ。では、何を職業にするのかとなったとき、子どもの頃、とても体が弱くて医療に助けられたことをすごく感謝していて、その恩返しを仕事にしたいと思ったんです」

心臓の内科的治療をする循環器内科の医師となり、日々患者さんと向き合ううち、西洋医学のアプローチだけでは限界があると感じた稲葉さん。

「医療の現場で日々感じるのは、医療の本質とは何なのかということです。西洋医学においては、まず病気はこういうものだと定義して、それを治すことが目的です。病気は人を脅かす侵略者であり『敵』と捉えるので、心と体は病と闘う戦場。一方の伝統医療は、人間の体を調和的な場であると捉えます。それが崩れたから病気や症状として現れる。なので、もとの調和のある状態に戻していきましょうという考え方。自分にとっての健康や調和の状態を最初に決めて、そこに向かってやっていこうと考えれば、そこに病気や病名という概念は必ずしも必要ない」

人間の体は約60兆個の細胞からできていて、それらが協調し合い、調和することによって私たちは生きています。とはいえ、どうしても偏りが出てバランスが崩れてしまうのが現実。

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「登山という身体行為のなかに、さまざまな心のプロセスも含まれていて、そこに生きることの本質があると思っています」。大学時代から登山にはまり、夏の間は山岳医療にも携わる。

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「能の型には体の動きが簡潔にまとまっていて、いろいろな知恵が詰まっている」と能の稽古も。

 

→vol.4につづきます

暮らしのおへそ Vol.26」より photo:馬場わかな text:和田紀子

Profile

稲葉俊郎

Toshiro Inaba

医師、東京大学医学部付属病院循環器内科助教。医学博士。西洋医学だけでなく、伝統医療、代替医療、民間医療も広く修め、伝統芸能、芸術、民俗学、農業など、あらゆる分野と医療との接点を模索している。著書に『いのちを呼びさますもの ひとのこころとからだ』(アノニマスタジオ)がある。https://www.toshiroinaba.com/

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