一日ずつのおへそ ― 竹花いち子さん vol.2

暮らしのおへそ
2019.11.19

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30 代の頃から「ザ・ブルーハーツ」の
甲本ヒロトさんが大好きでした。
彼の歌を聴きながら
私は好きなことにまっすぐ向き合っているか? と
自分に問い直す日々でした。

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2つあったら必ずどちらかに決めることが大事。そして「どうして、あの瞬間よりこっちのほうがうれしかったのかな?」と考えながら寝る。「必ず、なるほどね〜という答えが見つかります。何でもないような日でも何かが見つかる。私の人生のテーマは、自分を知ることですから」と竹花さん。

 

でも、肝心の「本当に好きなこと」が見つかりません。

「片手で収入をキープしながら考えているから見つからないんだ、と考えました。だからまずは仕事を辞めることにしました。そう決心したら、2〜3週間後に『そうだ、料理じゃん!』ってひらめいたんですよ」

レシピを提案する料理家ではなく、レストランを開いたのは、目の前で誰かがおいしいと食べてくれるのを見たかったからなのだとか。そんな竹花さんのいちばん大事なおへそは「朝と夜にお風呂に入る」こと。

「朝は『さあ、やるぞ!』とスイッチを入れるため。夜は、一日にあったイヤなことも全部水に流すつもりで。私は、できれば一日ずつちゃんと幸せに生きていきたいんです」

自分がいちばん好きなことをする。それはとてもシンプルなことなのに、実際にはそれを人生の真ん中に置いて生きていくのは難しいもの。そこへ、少しでも近づくための術(すべ)が「一日ずつちゃんと生きるおへそ」なのかもしれません。

実はつい最近、なんとあの甲本ヒロトさんが、竹花さんの料理を食べにきてくれたのだとか。

「憧れの人を目の前にして、私はちゃんと立っていられたんです。ああ、私は好きなことをやってきたんだなと、自分に少し自信がもてました」

自分に正直に、一日一日を積み重ねれば、人はきっと変わることができる。竹花さんが料理を通じて届けたいのは、そんなまっすぐな生き方そのものなのかもしれません。

料理は計量せず観察する

じっくり観察すると
見えてくること、思いつくことがある。
料理の楽しさは、新しい発見。

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絶妙な加減で塩をふる竹花さん。自然塩は粗塩のままだとさじ加減が難しいので、フライパンで煎(い)ってサラサラに。その手間が面倒な人は、少し高価だが焼き塩を購入しても。「『おいしい』と『すごくおいしい』の差って、ほんのちょっとの塩分の差じゃないかって思うんです」と竹花さん。

 

かつおだしは
あらゆる料理のベースになる

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ホワイトソースは、バターと小麦粉と牛乳でベースを作ったあと、かつおだしを少しずつ加える。酒、薄口しょうゆ、白こしょうで味つけを。マカロニと鶏肉、カリフラワーのグラタンの完成。

 

すべてに下味をつける

「全部入れてから最後に味つけ」ではなく
ひとつひとつの素材に味つけを。
料理はトータルな足し算。

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麺(めん)をカリッと焼き、トマトと卵とあえたサラダ風焼きそば。卵は塩、砂糖、生クリームを加えてスクランブルエッグに。トマトには塩をふり、焼きそばはカリッと焼いてからナンプラーで味つけ。麺をカットして、すべての材料をあえ、最後に海苔をトッピング。パリパリとした食感に箸が止まらない。

 

旨みはナンプラーと黒糖で

竹花さんの料理によく登場するのがナンプラーと黒糖。少し使うだけでコクに違いが出るそう。「使っている」とわからない程度に、でも欠かせない隠し味。

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ハマグリのお吸い物
1 かつおだしにハマグリを加えてひと煮立ちさせ、ハマグリはいったん取り出す。
 酒、塩、黒糖、薄口しょうゆ、ナンプラーで調味して、ハマグリを戻す。
2 生のオクラを小口に切ってトッピング。

 

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じゃがいもの炒め物
1 じゃがいもはせん切りにして水にさらしておく。
 フライパンにピュアオリーブオイルをひいてじゃがいもを炒め、塩、黒糖、ナンプラー、薄口しょうゆで味つけ。
2 最後にルッコラを加え混ぜる。

 

一日の終わりに洗剤ポンプを洗う

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どんなに疲れていても、ガス台まわりからシンクまでさっぱりと拭き上げてから寝る。最後の仕上げは、洗剤を入れているクマちゃんを洗ってあげること。

 

「暮らしのおへそ Vol.28」より
photo:興村憲彦 text :一田憲子


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Profile

竹花いち子

Ichiko Takehana

料理人。料理教室「キッチンボルベール」主宰。武蔵野美術大学卒業後、広告代理店でコピーライターとして活躍。作詞家として数々のミュージシャンに詞を提供。1993年に、東京世田谷にレストラン「タケハーナ」をオープン。2011年に閉店。今は、食べてくれる人のより近くでと、ケータリングや食事会で料理を作る。http://takehanaichiko.com

肩の力を抜いた自然体な暮らしや着こなし、ちょっぴり気分が上がるお店や場所、ナチュラルでオーガニックな食やボディケアなど、日々、心地よく暮らすための話をお届けします。このサイトは『ナチュリラ』『大人になったら着たい服』『暮らしのおへそ』の雑誌、ムックを制作する編集部が運営しています。

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