管理栄養士に聞いた「60歳からの料理の10か条」【中編】
管理栄養士、医学博士として、食と健康を長年研究してきた本多京子さん。同世代の女性に提案したいのは、毎日の料理に対する考え方をこれまでと少し変えることなんだそう。今回は、栄養バランスのいい料理を楽しく作る、10のコツを教えていただきました。
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3か条
きかせるのは塩ではなく、旨みや香り
味つけが濃くなるのを防止
歳を重ねると、若い頃と比べて味覚が鈍くなったと感じる方が多いようです。それでつい、味つけが濃くなってしまうという悪循環に陥りがち。過度な塩分は腎臓、心臓、胃にも負担が増えるので要注意です。
だしをしっかりとって旨味をきかせたり、酢やかんきつ類などの酸味でアクセントをつけたりと、塩分ではないもので味にメリハリをつけるといいですよ。スパイスやハーブなど、香りを効果的に使うのもおすすめです。味覚は慣れというものもありますから、「少し薄いかな」くらいの味つけを続けていると、それがちょうどいい塩加減に感じられるようになります。素材そのものの味も、よりしっかり味わえるはずです。
4か条
料理は元気な朝のうちに
暗くなってからの支度は、おっくうになりがち
最近、料理をする気力が減ってきたという声はよく聞きます。日が落ちる頃に台所に立ち、ひとりで料理をしていると気が重くなってくるものです。1日の疲れもたまり、頭も体も重い感じに……。
それなら、料理をする時間帯を夜から朝に変えてみてはどうでしょうか? 朝に手間のかかる下ごしらえを済ませ、夜は仕上げ程度に。朝食の後片づけが終わったら、そのまま取りかかれば面倒に感じにくいですよね。
野菜を切っておく、肉の下処理をして下味をつけておく。スープや煮物なら、朝作っておけば、日中に味がじんわり染み込みます。外で予定がある日も、夕飯の準備がしてあれば、心おきなく出かけられそうです。
5か条
シンプルな作りおきを
展開しやすいよう、下ごしらえは
切ったりゆでたりするだけ
作りおきはできるだけシンプルに、が鉄則。料理が違っても、同じ味つけが続くと飽きますからね。野菜は切って塩もみをしておいたり、レンジで加熱しておいたりするだけ。それならサラダにも炒め物にも使えるので、展開の幅が広がります。
また、野菜を買ってきたら、すぐに下ごしらえを済ませるのもおすすめ。たとえばブロッコリーなら、生のまま丸ごと冷蔵庫に入れることはせず、すぐに小房に分けて電子レンジで加熱しておきます。それがあれば、オムレツに刻んで入れようかな、スープに加えたら彩りがよさそう、一品足りないからチーズ焼きを作ろう……などと、食べるチャンスが増えるんです。
6か条
缶詰を非常食ではなく日常食に
魚を手早く食べたければ鮭缶や鯖缶を活用
鮭缶や鯖缶などの缶詰は、保存がきくし、カットしたり味をつけたりする手間の必要がない、とても便利な食材です。鮮度のいい魚が加工され、しかも空気にあまり触れていないので、脳や血管の若返りにつながる栄養成分の酸化が進んでいません。
でも、非常食というイメージが強いようで、棚の奥に置かれたままということも多いもの。保存がきくといっても賞味期限がありますし、もっと日常的に使いたいですね。炒めたりスープに入れたりする際は、漬け汁やオイルもいいだしになるので、捨てずに加えるのがおすすめ。手軽に良質なたんぱく質がとれる缶詰、ぜひ日々の献立で活用してくださいね。
「“これから”の暮らしと食卓」より
illustration:はまだなぎさ text:鈴木麻子
Profile
本多京子
管理栄養士、医学博士。健康や栄養を考えたヘルシーレシピを提案。食育、スポーツ選手への栄養指導など活動は幅広い。著書に『60代からの暮らしはコンパクトがいい』(三笠書房)などがある。
肩の力を抜いた自然体な暮らしや着こなし、ちょっぴり気分が上がるお店や場所、ナチュラルでオーガニックな食やボディケアなど、日々、心地よく暮らすための話をお届けします。このサイトは『ナチュリラ』『大人になったら着たい服』『暮らしのおへそ』の雑誌、ムックを制作する編集部が運営しています。