元編集長・遠山こずえさん【後編】「一番大事なのは、愛と笑いなんじゃないかな?」

”オリーブ少女”の先輩に会いに行く
2016.11.29

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遠山さんが“むき出し”の情熱を注いでつくっていた『オリーブ』。いまは、もうないけれど、同じくらいの熱を込めて向かっているのがフラです。
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↑ 発表会で踊る遠山さん。発表会は「ALOHA! Day」と題して、2年に1回のペースで行う。

「フラとの出会いは、マガジンハウス時代。会社の会議室に先生を呼んでレッスンを受けられる機会があって、フラの教室に参加してみたのです。最初はなんとなく関わっていましたが、あるとき古典のフラ(※現在、私たちが目にするのは華やかな現代フラ=アウアナで、古典フラ=カヒコは神や王族に捧げるために踊られていたもの)を見る機会があって、その厳かな雰囲気に一気に心を奪われてしまったんです」

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↑ カヒコを踊るときは音楽ではなく、打楽器のリズムを伴奏にする。写真上からイプヘケ、イプ、ウリウリ。イプヘケとイプは瓢箪でできている。ウリウリは複数の石をカチカチと打ち鳴らしリズムを刻む。下の写真はフラの歴史を紹介する本と、レイの写真集。

もともと、“アツい”性格の遠山さん。フラの豊かで深い世界にぐんぐんとのめりこんでいきました。ところが、家族の仕事の関係で山形・鶴岡への移住が決まり、通っていた教室から離れることに。フラは続けられないかなと、いったん諦めたのだといいます。

「鶴岡に越してきて、娘のPTAの集まりで、東京ではフラをやっていましたって自己紹介をして。よかったら、今度やりませんか? って気軽にいったら、そのお母さんたちのノリがよかったのね。メンバーがあっという間に10人くらいになっちゃって」

そこから、カルチャーセンターで教えるようになり、フラの熱は鶴岡の地にジワジワと伝わっていきました。2007年、遠山さんは東京のフラスクール『ナー キエレ オ カ ラニ』の山形教室「山形 ハレ キエレ」をスタートさせます。
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↑ 教室の看板は遠山さんの手作り。イラストも上手。下の「ALOHA! Day」の刺繍は、生徒さんたちみんなが少しずつ刺して仕上げてくれたもの。「サプライズのプレゼントだったの。上手な人、へたっぴな人、ひと針ひと針、個性があっていいんです」

「オリーブ編集部もそうだったけれど、ここも、おもしろい人材の宝庫。いろいろな才能がある人が集まっているんです。だから、私がフラを教えるだけじゃなくて、お料理が上手な人、裁縫が得意な人、韓国語が話せる人とかそういう人に、いろいろ教えてもらって、みんなでシェアして、すごく濃い関係を築いています。ハワイではフラを一緒にやる人たちを“家族(※ハワイ語でオハナ)”って考えるのね。それを押しつけるわけではないけれど、やっているうちにだんだんとそういう気持ちになってくるんだよね。お互いのいいところも悪いところも見て、大変なこともたくさんあるんだけれど、同じ曲を踊り、練習しているうちに、だんだんと“家族”になっていくという感じかな」
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↑ フラの華やかな衣装は、手作りしたり、スクールの誰かから譲ってもらったり。

「昔、ネスカフェの宣伝で『違いがわかる』ってあったけれど、違いがわかるだけじゃだめだったのよね。あるときに宣伝文句が『違いが楽しめる』って変わって、コレだ! って思いました。違いって人種差別になることもあるでしょ? 違うからって、いじめたり遠ざけたりするのは最低よね。でもその違いを楽しめたらすごいこと。それができたら、大げさだけど戦争はなくなるんじゃないかなって思うんです。違うことで、自分が知らなかったことを知ることができる。違いを楽しむ。私の努力目標なんです」

それは、個性的な面々と船をこいでいた、オリーブ時代があったからこそ、と遠山さんは振り返ります。

「編集長になりたての頃に気づいたことがあって。すごく優秀なスタッフが1人いて、その人が10人いたら雑誌を作るのがスムーズだろうなって思ったの。だけど、ちょっとやってみて、考えがガラッと変わりました。『優秀な人を10人……? いらない、いらない、それだと困る!』って。いろんな人がいてくれないと、おもしろい雑誌にならないのよ。少し手間はかかるかもしれないけれど、年代も、趣味も、性格もバラバラな人が集まってつくるほうが絶対におもしろいよね。私が編集長になってよかったのは、それに気づけたことかもしれません」
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↑ ハワイ柄のトートバッグも手作り。「ダイロン」の染料で染めて、自分好みの夕焼け色に。


遠山さんは今日もニコニコ、鶴岡の地で庄内フラガールズとともに、風のように海のように、山のように踊っています。

「フラって最初は勘違いしちゃって、誰よりも上手に踊りたいとか思うのね。私ももちろん、そこを通り過ぎてきているけれど、そのうちにね、踊りだけじゃないっていうことに気がつくの。人生の楽しさとか豊かさ、人とのつながり……、大事なのはそういうことだってことをフラから教わりました。日常のなかに、どれだけキラキラした時間があるかが大事なのよね。レッスンには80代のおばあちゃんたちも多くいるけれど、彼女たちが一番、レッスンを通じて成長するの。歳をとるとどうしても頑固になったりするでしょう? でもフラを踊っているうちに、その頑固さをお互いがありのまま受け入れられるようになっちゃうのよね~」

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↑ 踊る遠山さんは本当にきれい。しなやかで女性らしいフラの動きは、とてもゆったりに見えて、実は、全身をきっちり使っている。

ちょっと臭くなっちゃうんだけどさ、と照れながら教えてくれた、遠山さんの人生のモットーがあります。それは、「愛と笑い」。

「ラブ&ユーモアっていったらかっこいいけどね、愛と笑い。大変なときこそ笑う。大変なときこそ自分を笑う。『あんた何やってるのよ。ははは!』って。もう余裕がなくなって、どうしようもないとき、笑うしかないってことあるじゃない? それで、笑ってみるとそれが本当に楽しくなっちゃたりするのよね。これも、オリーブ時代に学んだことなんだけど、ピンチのときこそチャンス。どんなときでも、そんな風に前向きに考えられたらもう、無敵だよね」

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↑ 「またいつでも遊びに来てね」とニカッ。鶴岡にアロハなムードを振りまいている。


「オリーブ少女の先輩」を訪ねるインタビュー連載、今回で最後となります。自由であれ、熱くあれ、楽しむことに貪欲であれ。大人になって失くしかけていたことを、先輩方に教えて頂きました。そして、本当に大切なのは「愛と笑い」なのよって(涙)。

 

第1回 大橋利枝子さんはこちらから
第2回 堀井和子さんはこちらから
第3回 山下りかさんはこちらから
第4回 湯沢薫さんはこちらから
第5回 大森仔佑子さんはこちらから
第6回 山村光春さんはこちらから
第7回 石川博子さんはこちらから
第8回 天日恵美子さんはこちらから
第9回 山崎まどかさんはこちらから

Profile

遠山こずえ

Tooyama Kozue

1981年マガジンハウス入社。「アンアン」編集部を経て「オリーブ」編集部へ。1991~1997年の間、編集長を務める。2000年、夫の転勤に伴い、マガジンハウスを退社し、山形・鶴岡へ移住。1997年よりフラをはじめ、2009年「ナー キエレ オ カ ラニ」(西喜久枝氏・主宰)の山形教室「スタジオ ハレ キエレ」をスタートさせる。ニックネームは「金さん」(苗字が遠山だから)。

肩の力を抜いた自然体な暮らしや着こなし、ちょっぴり気分が上がるお店や場所、ナチュラルでオーガニックな食やボディケアなど、日々、心地よく暮らすための話をお届けします。このサイトは『ナチュリラ』『大人になったら着たい服』『暮らしのおへそ』の雑誌、ムックを制作する編集部が運営しています。

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