薬膳相談で自分に合う食事を知る vol.2

からだ修行
2020.01.02

今月の先生:瀬戸佳子さん(源保堂鍼灸院)

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夫は午後から出勤で、夜が遅い仕事をしているので、わが家では昼食がメインの食事。昼に栄養バランスが取れた、しっかりとしたごはんを食べたいと思っているので、逆算してお腹をへらしたいため朝食はとらないことも多く、食べたとしても果物やクリスプブレッド、ナッツなど、手のかからないものばかり。

朝から取材などで外出しなくてはいけないときは、ずぼらをしてコーヒーショップなどで済ませてしまうことも。そして夜は、昼食の準備や仕事でほぼ力尽きてしまっているので(笑)、料理にエネルギーを注ぐことができず、短時間で完成する麵類オンリー。「貧血気味なので、鉄分をとらなきゃな……」と気にしているものの、果たしてこれでいいのか、足りているのかが疑問だったのでした。そして、桂子先生の診断はこんな感じでした。

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「まず田中さんの体質は、典型的な『気血両虚(きけつりょうきょ)』です。胃の働きが落ち、血液も不足している状態です。消化機能が低下しているから、栄養の吸収が滞り、胃腸に入った食べ物も停滞して、熱を帯びている状態です。相談票に記入していただいた『疲れやすい』『眠気がある』というのも貧血の症状で、体にしっかりと栄養がめぐっていない状態です」

今までいろんなところで言われてきた「貧血体質」ですが、こちらでもやはりしっかりと指摘されてしまいました(苦笑)。貧血を引き起こしている原因は、①血液の材料となる食べ物の摂取量が少ない ②消化吸収能力が低い ③造血作用が弱い ④血液の消耗量が多い などが考えられるそうです。

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「そして『腎陰虚(じんいんきょ)』。中医学における『腎』が弱い。『』とは、西洋医学における腎臓とその働きだけでなく、体の成長や生殖、ホルモンの分泌、脳、骨、耳などに関係しています。ご両親からもらった『先天の本(もと)』(先天的に持っている、生命の源となるエネルギー)をたくわえる場所でもあるんです。ところが、疲労やストレスが強くなると、この『先天の本』も、どんどん消耗していってしまいます」

がーーーん。つまり私は、もともと親からもらった生命エネルギーが弱いだけでなく、それをきちんと蓄える能力も弱っていて、しかも日々の疲労やストレスでそれをさらにすり減らしているという状況なのです。

「本来『先天の本』は消耗しないように『後天の本』によって守られています。『後天の本』は日常の食事や呼吸によって得られるエネルギー。ところが田中さんは、現在胃腸も弱っているので、この『後天の本』の補充も十分行われていない可能性もあるんですね」

とほほほ……となりましたが、先生曰く「気血不足」は、現代女性の大きなテーマ。特に田中に限った症状ではなく、多くの女性が気にしてほしいポイントなのだとか。そういった田中の体質を踏まえて、食事の改善方針を、以下のように提案してくださりました。

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① 朝食は温かいものをとる
② 食事は3回に限らず、消化しきれる分量を食べる
③ 胃腸を養うものをとる
④ 動物性たんぱく質をしっかりとり、血液をふやす
⑤ からだを潤わせ、腎を補うものをとる
⑥ 体力の温存を心掛ける

「まず①について。田中さんは、朝は果物やクリスプブレッドなど、冷たいものが中心ですよね。東洋医学では臓器ごとに修復される時間帯が決まっていて、胃は朝の7~9時。この時間帯に温かいものを食べておくと、消化器官が元気になるんです」

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「朝の果物は金」と信じ、朝食ぬきのときにも果物だけは食べたりしていましたが、実は果物は、胃腸の働きを弱める「生もの・冷たいもの・甘いもの」の3つの条件が集まってしまったもの。胃弱の人は常温にしたり、火を入れたり、食べ方や食べる時間帯を工夫すべきものだったのです。逆に、佳子先生のおすすめは、お味噌汁。発酵食品である味噌が胃腸の働きを高めてくれて、温かさも胃腸を活発化してくれるのだとか。

「②に関しては、今は消化・吸収能力が落ちているので、一度にたくさん食べると、田中さんの場合消化不良になってしまいます。食事の回数は3回と決め込まず、小分けに食べるのもいいと思いますよ。『間食も食事の一部』と考えて、お菓子よりも、必要な栄養をとるようにするといいと思います」

そして③に関しては、こんな食材をおすすめしていただきました。

胃腸を補うもの
ねばねばしたり糸をひくもの(とろろ、めかぶ、れんこん、里いもなど)
発酵食品(味噌、納豆、酢、漬け物、酒粕、甘酒、かつお節、塩麴、しょうゆ麴、ヨーグルトなど)
うるち米、黒米、きび、もち米、山いも、さつまいも、じゃがいも
にんじん、かぼちゃ、キャベツ、ブロッコリー、とうもろこし、小松菜、ねぎ、白菜
青魚、鮭、ぶり、鯛、砂肝、牛肉(赤身)、鶏肉、卵黄
なつめ、かんきつ類(皮)、りんご、干し柿、栗

胃腸に負担をかけないためには、調理法も炒め物やあえ物よりも、煮物をふやしたり、細かく切ったりすりおろしたものを加えるといいのだそうです。

④は、それなりに気を遣っていましたが、量的に足りていないそう。おすすめ食材としては、以下のようなものが考えられます。

血液を補うもの
赤身の肉・魚(かつおやまぐろ)、レバー、いか、たこ、あさり、しじみ、牡蠣、鮭、ぶり、卵

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⑤は、近頃私が気にしていた「ほてり」にも効く食材。

「のぼせは中医学では『虚熱』と呼びますが、それをやわらげるために、体を潤わせる食材は定期的にとっておくといいと思います。甘酢あえなど、甘酸っぱい味付けも、体に潤いを与えてくれるので、喉の渇きなどの症状が強いときにはとるように心掛けるといいですよ。果物も、胃が温まったあとに食べるのはいいと思います」

虚熱をとり、体を潤わせるもの
すっぽん、豚肉、牡蠣、干し貝柱、山いも、黒ごま、黒豆、いか、ぶり、卵、エリンギ、にんじん、ほうれん草、チーズ、ヨーグルト

なお、唐辛子やカレー粉などのスパイス、しょうがやみょうがなどの薬味は、逆に体の潤いを取ってしまう役割があるので、極力控えたほうがいいのだそうです。

photo:砂原 文 text:田中のり子

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源保堂鍼灸院 薬膳部

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Profile

瀬戸佳子

Yoshiko Seto

国際中医薬薬膳師。登録販売者。早稲田大学理工学部卒、同大学院理工学部研究科修了。会社員を経て、北京中医薬大学・日本校・薬膳科卒業。源保堂鍼灸院・薬膳部にて、「簡単、おいしい、体によい」をモットーに、東洋医学に基づいた食養生のアドバイス、レシピ提案を行う。鍼灸院併設の薬戸金堂で漢方相談も行なっている。
ブログ「薬膳ごはん」

 

田中のり子

Noriko Tanaka

衣食住、暮らしまわりをテーマに、雑誌のライターや書籍の編集を行う。『ナチュリラ』(主婦と生活社)は創刊当初からのスタッフ。構成・執筆をした『これからの暮らし方2』(エクスナレッジ)が好評発売中。

肩の力を抜いた自然体な暮らしや着こなし、ちょっぴり気分が上がるお店や場所、ナチュラルでオーガニックな食やボディケアなど、日々、心地よく暮らすための話をお届けします。このサイトは『ナチュリラ』『大人になったら着たい服』『暮らしのおへそ』の雑誌、ムックを制作する編集部が運営しています。

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