料理家・渡辺康啓さんインタビュー(前編) 「おいしいものは意志の力が作る」

おいしいの、段取り
2016.01.17

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文旦をスパイスと共に煮て。グラスにアマレットと共に注いだジュース。豚肉のグリルにこっくりとした金柑のソースをかけて。美しさと共に“食材の出会い”という物語が聞こえてきそうなひと皿。それが、渡辺康啓さんが作る料理です。そんなドラマティックで美しい料理は、どのようにして生まれてくるのでしょう? 

「僕が料理をするときは、最初にイメージありきなんです。こういう料理があったらきれいだなというビジュアルを頭の中に思い浮かべる。どういうお皿で、どういうふうに盛られていて……というところまで、すべてイメージして、それに向かって作るんです。料理って、その強いイメージをもつことがまずは重要で、あとは、そのゴールに向かって、ただ逆算すればいいだけのこと」

 料理はゴールからの逆算――。言われてみれば当たり前のことですが、それをきちんと意識して料理をしている人は意外に少ないかもしれません。

「よく『料理を失敗した』という人がいますよね。でも、それは失敗ではなく、最初にちゃんとしたイメージがないために、行き当たりばったりで料理をしているうち、訳のわからない方向に行ってしまっただけのこと」

きちんとゴールを定めれば、何を用意し、食材をどう切り、どう火を通していくのか、その道筋はおのずと定まり、あとはそれをイメージして、料理にかかればいいだけのことだと言います。

「まずは調理前の食材を、料理ごとにひとつのバットにまとめておく。そうすれば、頭の中の整理がついて、ゴールまでの行程が具体性を持って明確なものになりますよね。そして、次は素材の切り方。どういう料理にしたいのかが決まれば、どう切ればいいかもおのずと決まってきます。同じ素材を乱切りにするのか、せん切りにするのかでイメージも食感も変わりますよね。切り方って、実は美しい料理を作るためのいちばん重要なポイントなんです」

暮らしのおへそ実用シリーズ『おいしいの、段取り』より  photo:亀和田良弘   text:和田紀子

Profile

渡辺康啓

Watanabe Yasuhiro

大学卒業後、コム デ ギャルソンに勤務。2007年に料理家として独立。2015年より福岡に移住し、料理教室のほか、食にまつわる事柄をさまざまなアプローチで提供している。www.igrekdoublev.com

肩の力を抜いた自然体な暮らしや着こなし、ちょっぴり気分が上がるお店や場所、ナチュラルでオーガニックな食やボディケアなど、日々、心地よく暮らすための話をお届けします。このサイトは『ナチュリラ』『大人になったら着たい服』『暮らしのおへそ』の雑誌、ムックを制作する編集部が運営しています。

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