第34回 【番外編】香箱ガニ、回転寿司、しょうゆ、麹、昆布ガリ…帰国中の富山で出会ったおいしいご褒美たち

栗山さんのベルギーおいしいもの通信
2022.12.09

こんにちは、料理家の栗山真由美です。
10月から、2年9か月ぶりに日本に一時帰国することができました。したいことてんこ盛り、会いたい人も多数と、欲張りすぎたかもしれません。しかし、次の帰国もいつになるかわかりませんし、必死で楽しみました。中でも最も重きを置いていたのは「食」。

旅好きで、世界の様々な国に出かけてきましたが、“郷にいれば郷に従え“でいつも現地の食事を楽しめ、興味もムクムクと湧いたものですが、旅と住むのは大違いなのですね。
ベルギーに暮らし始めて約3年半。ベルギー料理への興味はあるものの、恋しくなるのは和食です。これが十分楽しめる日本滞在中、“取りこぼしなく”を念頭に動きました。そして、国内旅行先として選んだのは富山でした。


みなさんは、富山にどんなイメージをお持ちですか?私の北陸デビューは金沢が最初で、数回、数か所に出かけたことがあります。新幹線で行くと通過するのが富山で、いつか寄ってみたいと思っていました。

有名なホタルイカや白エビをはじめとする海産物、魚醤系の加工品も豊富、しょうゆ、みそ、その素となる麹を含めた発酵文化も、特有のものがあります。今回の「ベルギーおいしいもの通信」は許可をいただき、特別編で実際に体験した富山の食まわりについてご紹介します。

富山の食の魅力は、ありすぎてどこからはじめたらいいのか難しいです。富山ビギナーの目線で、まずイメージする海産物にフォーカスしました。

ホタルイカや白エビをはじめ、のどぐろ、桜鱒などなど、海の幸にあふれた富山。カニもその代表格です。射水(いみず)市には「新湊(しんみなと)かに小屋」があり、全国でも珍しいカニの昼セリの見学ができます。「高志の紅ガニ(こしのあかがに)」と呼ばれる紅ズワイガニが食べられるツアーもあります。秋から春にかけて、カニの旬の時期だけの限定です。

11月の中旬に訪れましたが、香箱ガニの解禁とも重なりラッキーでした。
香箱ガニは雌のズワイガニで、雄と比べると半分ぐらいの大きさです。小さいだけに、身が詰まって濃厚な味わいです。外子(そとこ)と呼ばれる粒々の卵と、内子(うちこ)と呼ばれるミソ部分を併せ持っています。香箱ガニは保護のため禁猟期が長く、11月中旬から年末ごろまでが旬になります。

写真はお寿司屋さんでいただいたものですが、様々な飲食店で提供されていて、私も何度か体験することができました。

「富山は回転寿司のレベルも高い」とはよく聞く話で、最初の一軒にしました。富山在住の友人オススメの人気店で、とてもおいしかった。お寿司のおいしさだけでなく、使われていたしょうゆも気になりました。すっきりした味わいのあとにほのかに甘みを感じる、好みのタイプのおしょうゆでした。

図らずもこの後、しょうゆ蔵の見学をさせていただく約束をしていました。限定手作りしょうゆ・寒仕込み「北陸」の製造元、畑醸造さんとでしたが、この「北陸」しょうゆこそ回転寿司で供されたしょうゆだと社長からお聞きした時は、ご縁を感じましたね。


畑醸造さんには、手間ひまかけたしょうゆ作りの工程をご説明いただきましたが、下の写真は重要な役割を果たす“麹室”になります。そのたたずまいに、思わず歓声が上がりました。

極寒仕込みしょうゆ「北陸」の仕込みは最も寒く、水と空気がきれいな1〜3月にだけ行われ、3年間の天然熟成を経て完成します。

富山ではしょうゆのほか、みそや発酵食品も盛んに作られています。それらに欠かせないものというと、麹ですよね。
私も発酵食品には興味を持ってきましたが、種麹屋さんを訪ねたのは初めてでした。お店の佇まいそのままに、伝統と歴史を感じる、北陸唯一の種麹屋・石黒種麹店さんを訪ねました。

石黒種麹店で作られる米こうじは、米の一粒一粒に麹菌がしっかりと入り、自然の甘みと白さが特徴です。富山県産のコシヒカリを使用した麹は、一般的なものに比べて酵素量が多く、発酵の力が強いとのこと。買ってきた麹で私もみそを仕込む予定ですが、本当に楽しみです。

昆布などの海藻をよく使うことも、富山の特色だと思います。特に“とろろ昆布”が特徴的。白と黒があるのもおもしろいですし、写真右は“黒とろろおにぎり”ですが、中にはたっぷりの佃煮昆布が入っていて、海藻好きにはたまらなかったです。

お寿司屋さんのガリには、昆布が入っていました。市販もされている“昆布ガリ”は、うまみがポイントの止まらないおいしさでした。

初めての富山は、想像以上に魅力に溢れていて、再訪を心に誓いました。おいしいもの好き、特に魚介好きの方にはオススメです。これから寒くなりますが、富山のおいしさもまた、寒さと共に上昇していくと思います。

続きはインスタグラムのほうでフォローしていますので、よかったらご覧くださいね。
最後に、今回のおいしんぼツアーは、富山在住の友人なくしてはあり得ませんでした。
Thank you sooooooo much!

*写真の無断転載はご遠慮ください*


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Profile

栗山真由美

MAYUMI KURIYAMA

料理家、栄養士。枝元なほみさんのアシスタントを経て独立。ポルトガル料理を中心とした料理教室「Amigos Deliciosos」を12年前から東京で主宰、日本ポルトガル協会の公認講師も7年間務める。2019年より、イギリス人のご主人とベルギー・アントワープに在住。著書に『ポルトガル流 驚きの素材組み合わせ術! 魔法のごはん』(エイ出版)、『「酒粕」で病気知らずになる ゆる粕レシピ』(池田書店)など。
https://ameblo.jp/castanha/ 
Instagram: mamicastanha

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